「鬼平犯科帳」(3)池波正太郎
シリーズ3作目を読んだ。
次の6編が収録されている。
「麻布ねずみ坂」
「盗法秘伝」
「艶婦の毒」
「兇剣」
「駿州・宇津谷峠」
「むかしの男」
著者の言葉
P370
「町奉行書は檜舞台。盗賊改方は乞食芝居じゃ」
などと、評判したりしたものだ。
刑事にはたらくといっても、長官は[先手組]の、自分組下の与力や同心をつかって活動する。とても町奉行所のように人数も設備もそろっていないし、予算も少ない。
P371
だから、いわゆる[謎とき]の捕物帖にならない。
およばずながらも、当時の人びとの生態を、私は描いてきたつもりだし、これからも、当分はそのかたちをくずすつもりはない。
【ネット上の紹介】
池波正太郎の鬼平誕生50年を記念して、不朽のベスト&ロングセラー「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、さらに読みやすくなった決定版で順次刊行。何度読んでも新鮮な「鬼平」に親しむ、最良のチャンス到来といえる。第三巻収録作品は、「麻布ねずみ坂」「盗法秘伝」「艶婦の毒」「兇剣」「駿州・宇津谷峠」「むかしの男」。巻末の「あとがきに代えて」は、池波正太郎自身による解説・長谷川平蔵。必読の佳品である。
「鬼平犯科帳」(1)池波正太郎
今年2017年は、「鬼平」誕生50周年にあたるそうで、
決定版・全24巻を、今年1月から刊行開始。
大きな文字で、ふりがなを増やしたそうだ。
順次読んでいこうと思っている。
田沼意次が失脚し、寛政の改革を行った松平定信の時代が背景。
文章が乾いていて、淡々と語られるのが心地よい。
次の8篇が収録されている。
「唖の十蔵」
「本所・桜屋敷」
「血頭の丹兵衛」
「浅草・御厩河岸」
「老盗の夢」
「暗剣白梅香」
「座頭と猿」
「むかしの女」
P323
おろくは当時、牙儈女(すあいおんな)とよばれる一種の娼婦であった。[牙儈女]の語源は売買の取次ぎを意味するものだそうで、ゆえに、これらの女たちは諸方の旅宿や茶店の客などを相手に小間物などを売って歩く……女商人の名目をたてて当局の目をのがれ、裏にまわっては色を売るのが真の目的なのである。こうした売春のかたちは元禄のころに発生し、七十年後の平蔵若き時代まで、流行をきわめていた。
【ネット上の紹介】
斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵。盗賊からは“鬼の平蔵”“鬼平”と恐れられている。しかし、その素顔は義理も人情もユーモアも心得た、懐の深い人間である。新感覚の時代小説の世界を拓き、不動の人気を誇る「鬼平犯科帳」シリーズ第一巻は、同心・小野十蔵の物語から始まる。
村上さんが見つかった江馬小屋谷五ヶ所滝付近について調べてみた。
つぎの2冊を参考にした。
「関西周辺の谷」中庄屋直編著(白山書房)
「関西起点沢登りルート100」吉岡章著(山と渓谷社)
五ヶ所滝について次のように書かれている。
「関西起点沢登りルート100」P94
洞窟のようにえぐられたスラブが浸食の激しさを物語っているが、いまだにこのゴルジュを完全突破した記録を見ない。
村上さんは、沢をしに行ったのではないが、この上部で迷い、あるいは滑落した可能性がある。
本来なら、沢の人も行かない場所だが、先日の台風で流されて出てきたのではないか、と。
今回の情報について、最初、あくびちゃんからメールをもらい、その後、親方や前島さんから電話で詳細を聞いた。
大雨が降らないよう祈っている。
【参考図書】
クラックスFacebookの記事を転載します。
【お知らせ】
昨年12月から行方不明となっていたクライマー仲間の村上肇さんが、先日江馬小屋谷五ヶ所滝付近にて見つかりました。ご心配/ご協力頂きました皆様、ありがとうござきました。
9月9日(土)または10日(日)に、警察による現場検証と遺留品回収を予定しており、そのためにコース上にフィックスロープを設置、また遺留品発見現場にウェビングによるマーキングを残しています。
...同エリアに沢登りに行かれる方は、検証と回収終了までそのままにしておいて下さいますようお願いいたします。またお知り合いの方で、この時期入渓されるご予定の方がいらっしゃいましたら、上記情報をシェアしていただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
村上肇さんのご冥福をお祈りいたします。
「京都の凸凹を歩く」(2)梅林秀行
「京都の凸凹を歩く」の第2弾。
京都の街を地形から読み解く、フィールドワーク作品。
P96
今でこそ、河原町通は京都の南北メインストリートとして知られていますが、もともとは御土居という京都東側の境界部分だったというわけです。
源氏物語の世界…五条大橋を渡った辺り
「京都の凸凹を歩く 」梅林秀行
【ネット上の紹介】
「京都ガイド本大賞2016リピーター賞」受賞作の続編!3D凸凹地形図や古地図を多数収録!待望の第2弾!!
嵐山(前編)―絵画のような絶景と「断層の美」をフル活用した夢窓疎石の最高傑作!
嵐山(後編)―「美のルーツ」はどこにある?風景と詩歌からその変遷をたどる!
金閣寺―義満が愛した絶景スポットから定家も讃えた祈りのシンボルまで「王者の宮殿」の壮麗な姿!
吉田山―斜面と人の営みが立体交差!「聖地」から「住まい」へ繋がる小宇宙!
御所東―京都の「真ん中であり、端っこ」。新陳代謝が止まらない注目エリアの多面性!
源氏物語(前編)―平安時代にタイムスリップ!架空の物語が現実と出会う場所
源氏物語(後編)―女たちの運命が動き出す!今なお根ざす、祈りと鎮魂と
伏見城(前編)―日本城郭史上、最大級の堀遺構。「豊臣建設」の圧倒的ダイナミズム!
伏見城(後編)―大名団地・直線道路・一変する風景…豊臣政権の「伏見首都計画」を体感!
特別鼎談 岸田繁×山内太郎×梅林秀行 「モザイク」なまち、京都で歩きながら考えること
「この世界の片隅に劇場アニメ公式ガイドブック」
公式ガイドブックなので、情報量が多い。
地図も多くて、訪問した際の参考になる、と感じた。
P26
【広島市江波】(えば)
すずの実家・浦野家のある場所。江波はかつては広島湾に浮かぶ江波島だったが、干拓により明治時代には舟入と地続きになった。
こうの史代さんへのインタビュー…左手で描いたこと
P46
最初から決めていました。
左手で背景を描くことも決めていたので、連載を始める前から左手でペンを使う練習をしていたんですよ。(う~ん、ここまで準備していたとは思わなかった)
【ネット上の紹介】
クラウドファンディングで話題沸騰のアニメ『この世界の片隅に』は、どのように作られたのか?その裏側を徹底解説した公式ムック!片渕須直監督、のん(すずさん役)をはじめとしたスタッフ&キャストインタビュー。映画化への道のり/ビジュアルストーリー/設定・原画・背景画ほか。
イントロダクション
『この世界の片隅に』とこうの史代
映画化への道のり
人物紹介
ビジュアルストーリー
インタビュー 北條すず役 のん
インタビュー 北條周作役 細谷佳正
『この世界の片隅に』の片隅を読む
映画に出てきた衣装たち
映画に出てきた食べ物たち〔ほか〕
「将棋の渡辺くん」(2)伊奈めぐみ
2015年12月に「将棋の渡辺くん」(1)を紹介した。
実録エッセイマンガなので、ネタが続くのかな、と心配していたが、杞憂に終わった。
成長している渡辺くん
若いころのエピソードが語られる
【参考リンク】①
将棋の渡辺くん(試し読み)
【参考リンク】②
「将棋の渡辺くん」(1)伊奈めぐみ
昨日「海鳴り」を紹介した。
テーマは、『老いらくの恋と不倫』、と。
思うことが多い話題だが、私は川田順さんを思い出した。
【参考リンク】①
[墓場に近き老いらくの恋」①
ベートーヴェンの恋&川田順の恋(「老いらくの恋(2)」)
【参考リンク】②
「老いらくの恋」に身を投じた歌人・川田順の苦労とプライド | NHKテキスト ...
【おまけ】
クライミング界は狭いので、今まで様々な男女トラブルを見聞した。
私は(幸いなことに)当事者になったことがない…これを天に感謝したい。
また、このテーマに関してのコメントも控えている。
第三者には窺い知れない点が多い、と感じるので。
「海鳴り」藤沢周平
藤沢周平作品は暗く湿っぽい印象があるが、本作品はその極みか?
藤沢周平作品が好きな人はたまらないでしょうね。
それに、「蝉しぐれ」でも感じたが、男に都合が良すぎる恋愛模様。
これも男のロマンと感じるか、鼻につくかは、人による。
色々言ったけど、上下2冊を一気読みさせる筆力はさすが。
そのころ、新兵衛の胸にある不思議な感覚が生まれた。ある時期を境にして、自分が老いの方に身を置いてしまったような感覚である。これまで考えもしなかった、老いとその先にある死が、いやに明瞭に見えた。そして、疲れを知らずに働いたつい二、三年前までのことは、奇妙なほど遠くに思われたのである。
テーマは老いらくの恋と不倫。
高齢者必読?
【ネット上の紹介】
はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を越え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。世話物の名品。
「裁判の非情と人情」原田國男
元裁判官・原田國男さんのエッセイ。
2017年 第65回 日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品。
P46
さて、刑事裁判官と民事裁判官は、お互いをどうみているか。おそらく、刑事裁判官は、刑事事件は事実認定が命であり、それに比べ、民事事件の事実認定はラフすぎるというであろう。これに対して、民事裁判官は、事実認定が大事だといっていても、結局、刑事裁判官は検察官の主張に乗って有罪にしているだけではないか、と厳しい見方をするであろう。
P68
死刑の場合、主文の朗読を最後にまわすのが一種の慣行である。これは、最初にして、たとえば被告人が失神などしてしまうと言渡し手続きが未完となるからだ。
裁判官が書いた本を三冊挙げられている
P135
出版順に挙げると、鬼塚賢太郎『偽囚記』、岡村治信『青春の柩 生と死の航跡』、ゆたかはじめ『汽車ポッポ判事の鉄道と戦争』である。
【ネット上の紹介】
裁かれるのも「人」なら、裁くのも「人」のはず。しかし、私たちにとって裁判と裁判官は、いまだ遠い存在だ。有罪率99%といわれる日本の刑事裁判で、二〇件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事が、思わず笑いを誘う法廷での一コマから、裁判員制度、冤罪、死刑にいたるまで、その知られざる仕事と胸のうちを綴る。
第1章 裁判は小説よりも奇なり―忘れがたい法廷での出会い(「法廷闘争時代」の幕開けに
右手を挙げて宣誓? ほか)
第2章 判事の仕事―その常識・非常識(紅茶を出されたら…
刑事裁判官vs.民事裁判官 ほか)
第3章 無罪判決雑感(「合理的な疑い」とは何か?
裁判官vs.新聞記者 ほか)
第4章 法廷から離れて―裁判所の舞台裏(最高裁調査官の「魔術」と「錬金術」
人生の達人 ほか)
第5章 裁判員と裁判官―公平な判断のために求められるもの(国民の目線と少年事件
裁判官vs.弁護士 ほか)
「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦
精神科医・春日武彦さんによるエッセイ(のようなもの)。
P61
わたしは阿倍なんてインチキ男は大嫌いで、テレビのニュースを見ているとしょっちゅう「死ね、クソ阿倍!」なんて悪態を吐いている。見え透いた態度の、むかつく政治家だと思っている。だが、安倍首相の小心さと傲慢さとがミックスされたような口調、愚かな割には妙な運の強さを発揮するそのしぶとさ(それが本人にとっても日本にとってもマイナスの意味になってしまうことも含めて)、再び突然の辞任をしそうな危うさ、ぎこちない「あざとさ」、おそらく心の中に抱えているであろう低レベルの鬱屈(学歴や人望など)、力づくの振る舞いへの憧憬などは、実は結構わたしと似通っているかもしれない。
p78-79
ついでに、わたしが普段の診療で用いている診断名を示しておく。わずか六つ。治療を行うという立場からすれば、経験的に六つで事足りるのである。
(1)統合失調症。
(2)(躁)うつ病。
(3)神経症。
(4)器質性精神病(認知症を含む)ないしは症状精神病。
(5)パーソナリティ障害。
(6)依存症。
もう少し詳しく述べるなら、(1)と(2)はいわゆる内因性精神病と呼ばれ、脳神経細胞に生化学的な失調が認められるものの、いまだに本当の原因は不明のもの。(3)はストレスや悩みによって直接的に導き出される心因性精神病。(4)は心ではなく物質としての脳がダメージを受けたことによって生ずる外因性の精神病。(5)は先天性ないしは生育史において生じた心の構造の歪み(6)はむしろ(5)の一部と考えるべきかもしれない。
P104
相手の話へ熱心に耳を傾けることがモテるコツ、といった話はかなり知られているのではないだろうか。もはや都市伝説に近いかもしれない。
でもそれを実践している人は案外少ない。だって相手の話はおおむねつまらないうえに「くどい」のである。
P193
念のために申し添えておくが、自傷行為と自殺とは似て非なるものである。(中略)おそらく死を迎える前に、自殺志願者は思考も感情も既に活動を停止している。だからあらゆる自殺は惰性によって遂行される。したがって恐怖や痛みに怯むことなどない。自殺を思いとどまるように説得しても功を奏するケースは少ない。首を括ったり電車に飛び込むのは、(比喩的に申せば)リアルな人間ではなく抜け殻である。
【ネット上の紹介】
人間が“救済”されるとはいったいどういうことなのか。心の医者にとって救済とは?
第1章 占い師に「すがり」たくなる気分のこと
第2章 世界を理解する方法としての占い
第3章 カウンセリングのようなもの、としての占い
第4章 「救い」に似た事象について
第5章 一線を越える、ということ
「旅のグ 新装版」グレゴリ青山
グレゴリ青山による旅行記マンガ。
サイゴンの犬(正しくはホーチミン)
「Oさんの話」…60歳くらいのバックパッカー
説教じみたことはいっさい言わない
人の話もちゃんと聞いてくれる
外国人にも人みしりすることなく話しかける
骨董品屋の猫の話と習慣の美しい話
【ネット上の紹介】
おだんご頭(?)の女の子「グ」が旅したおかしなアジアのおかしな旅行記漫画。一人旅がこんなに楽しいものだったなんて。遭遇する人々がこんなにヘンテコな人ばかりだなんて。―読みだすと止まらない、思わず引き込まれる奇妙キテレツさ、きっとクセになります。ロングセラーのデビュー作、初の文庫化!描き下ろし漫画やイラストを多数追加した新装版で。
第1章 旅の具1(自己紹介
初めての旅の話 ほか)
第2章 ひみつの懺悔室(ザンゲはじめの話
インド人にすまなかった話 ほか)
第3章 ひみつのグ印文化財(重要文化商店街1「上海豫園商場」
重要文化歌手2「渡辺はま子さん」 ほか)
第4章 旅の具2(踏みつけた話
バスの話 ほか)
「はじめからその話をすればよかった」宮下奈都
宮下奈都さんのエッセイ。
P80
いい小説には答えではなく、問いがある。読んで「わかった!」と爽快になってもらうことより、「よけいわからなくなった」と考え込んでもらうことを目指したい。
私の一番好きな宮下奈都作品は「よろこびの歌」とその続編「終わらない歌」。
さらに続編はあるのか?
P301
『終わらない歌』もまた、続きを読みたい、といってもらえている。私も、玲の、千夏の、彼女たちのこれからを読みたいと思う。だけど、ひとつ大きな問題がある。二十代に入り、道が分かれていくだろう彼女たちの、さまざまなこれから。嵐になることも、光が射すこともあるだろう。甘い思いもたくさん経験するに違いない。二十代にだけは戻りたくないと常日ごろ思っているひとりとして、彼女たちの激動の二十代を自分が書かなければならないというのは大問題だ。この問題さえ解決できるなら、今すぐにでも彼女たちの未来を読みたいと私も切に願っている。
宮下奈都さんのエッセイは、「神さまたちの遊ぶ庭」と本書だけ。
「神さまたちの遊ぶ庭」は、山村留学体験記なので、純粋なエッセイとも違う。
故に、本書は宮下奈都ファン必読、ということになる。
自分の作品を自分で解説される章があるので、興味深い。
【ネット上の紹介】
大好きな本や音楽、そして愛おしい三人の子どもたちと共にある暮らしを紡いだ身辺雑記。やさしくも鋭い眼差しで読み解く書評。創作の背景を披瀝した自著解説。瑞々しい掌編小説―。読者の心を熱く震わせる「宮下ワールド」の原風景が詰まった著者初のエッセイ集。文庫化に際し、掌編小説2編とエッセイ2編を新規収録。ファン必携、極上の一冊!
日々、つれづれ
掌編 オムライス
本のこと ときどき音楽、漫画、映画
掌編 あしたの風
掌編 ちゅうちゅう
自分の本を解説
掌編 野生のバス
ひとさまの本を解説
掌編 サンタクロースの息子
掌編 花は環る