【ぼちぼちクライミング&読書】

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「昭和の犬 Perspective kid」姫野カオルコ

2015年06月30日 21時33分07秒 | 読書(小説/日本)


「昭和の犬 Perspective kid」姫野カオルコ

第150回 直木賞受賞作品。
これほど面白いとは思わなかった。
主人公は柏木イク。
5歳から49歳までを、昭和史と重ね、犬を絡めながら描いていく。
次の8章からなる。

ララミー牧場
逃亡者
宇宙家族ロビンソン
インベーダー
鬼警部アイアンサイド
バイオニック・ジェミー
ペチコート作戦
ブラザーズ&シスターズ

P136
ハイティーンというあぶらぎった熱い年齢は、自己の内部に困惑が生じていることを強く感じる。だがそれがいかなる困惑であるのか、他人にはむろん自分にも言語化できない。

P247
女性が社会で大きく成功するには、厳しいにしろ大甘にしろ父親を受け容れて――早世した彼を偲び続けたようなケースも含め――育った過去を持っていなければならない。
 これが女性が社会で好感を抱かれる鍵なのである。好感が高評価を与える。男が優位にいて社会を支配しているのではない、父権を軸にして形作られているものが社会なのである。

【おまけ】
副題のPerspectiveとは、遠近法、遠近画、遠景、のこと。

【まとめ】
例えるなら、「永遠の出口」+「昭和史」。 
但し、ヒロインに恋愛沙汰は一切起こらない。
その淡々とした雰囲気が心地よい。
他の作品も読んでみたくなった。

【参考リンク】
姫野カオルコ(姫野 嘉兵衛)公式サイト
姫野カオルコ(姫野嘉兵衛)のブログ…運営&宣伝=KOGA工房

【介護関連】
以前、姫野カオルコさんの介護テーマの作品を紹介したことがある。
 →「風のささやき―介護する人への13の話」姫野 カオルコ

姫野カオルコさんも、20年以上に渡って両親の遠距離介護をされた。
次に介護についてのインタビューをリンクしておく。
私一人だけじゃない 作家・姫野カオルコさん - apital(アピタル)

【ネット上の紹介】
2013年 第150回 直木賞受賞作品。
柏木イク、昭和33年生まれ。いつも傍らに、犬。犬から透けて見える飼い主の事情。『リアル・シンデレラ』以来となる長編小説


「ないたカラス」中島要

2015年06月29日 22時01分39秒 | 読書(小説/日本)

ないたカラス 
「ないたカラス」中島要

荒寺で、にせ坊主と寺男に扮する幼馴染みの三太と弥吉。
いつしか「和尚は千里眼」、との評判が立つが・・・。
先日読んだ「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」より軽いタッチの読み物。
全部で6編収録されている。

ないたカラス
袷のうら
カラスの足跡
幽霊札
文殊のおしえ
後日噺

一番良かったのが、最後の「後日噺」。
主人公であるはずの三太と弥吉が登場しない。
それにも関わらず、一番面白く、内容も深い。
さすがである。

【ネット上の紹介】
奉公に出されるのを嫌い、家を飛び出て十五年。二十八歳になった弥吉は久しぶりに江戸に戻ってきて、偶然幼馴染みの三太と再会する。お互いの実家は焼失し、帰る場所はどこにもない。ふたりは、無住の荒れ寺だった築安寺に住み着き、老け顔の三太が和尚、弥吉が寺男に扮した。さらに、築安寺の和尚は千里眼の使い手だと噂を撒き、相談に来た者から謝礼をせしめようと考える。弥吉には、それができる、ある「特技」があった―。毎度、厄介な相談事に巻きこまれて、右往左往。たくましくてあたたかい、人情味溢れる傑作時代小説。


阿武山

2015年06月27日 20時25分38秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりに阿武山に登ってきた。
このところ登ってないので、足腰が弱っているのを実感した。
比叡山・・・4/18
音羽山・・・6/13
そして、本日6/27の阿武山。
・・・これでは、弱るはずだ。

途中の景色・・・摂津、吹田方面

山頂・・・・立派すぎる(比叡山三角点より立派)

途中で見つけた花

鉄塔の後ろが阿武山、その後ろに見えるのが竜王山


「王国」中村文則

2015年06月24日 20時36分53秒 | 読書(小説/日本)


「王国」中村文則

先日読んだ「掏摸」の兄妹篇。
ユリカの仕事・・・それは組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること。
その「仕事」の絡みで、出会ってしまうの最悪の男「木崎」。
そう、「掏摸」で登場する、とんでもない人物である。
彼女は木崎から逃げ切れるのか?


ユリカと木崎の会話
P72
「マルキ・ド・サドの作品に出てくる女達が、なぜどれも不幸になるかわかるか?」
(中略)
「・・・・・・美しいからだ。美しい女は、幸福を手に入れる機会に恵まれると同時に、不幸に墜ちる機会にも恵まれる。・・・・・・あらゆる欲望が近づくことによって。・・・・・・覚えておくといい」
「・・・・・・それは、誉めているのでしょうか?」
(中略)
「誉めていない。幸福よりも不幸の方が引力が強い。この世界はそうなっている」
(中略)
「さっき、この男と話をしていたんだ。グノーシス主義、というのを知っているか」
「・・・・・・え?」
「原始キリスト教の時代に発生した、最大の異端宗教だ。彼らは、この世界は低位の神によって創られたと考えていた」
彼は何の話をしているのだろう。先が読めなかった。
「見渡せば、天災や疫病、貧困や飢えに苦しむ人間達が荒野に溢れていた。このような不完全な世界を創った神が、善良で万能なわけがないと彼らは考えた。この世界を創った神は神々の中でレベルが低く、悪意に満ちた存在だと断定したのだ。(後略)」

・・・・興味深い宗教談義が挿入され、物語が展開する。
著者自身の解説によると、「掏摸」は旧約聖書がテーマ。
本作は「新約聖書」がテーマになるはずだったが、「掏摸」において発生した「誤差」により、グノーシス主義の構図に変化した、と。
さらにそこから、キリスト教より古いギリシャ・ローマ神話へ接続していく。
・・・実に奥が深い作品である。
(まぁ、そんなことより、今回も面白くてストーリーに引き込まれた)


「掏摸」中村文則

組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。ある日、彼女は見知らぬ男から忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から語りかける男の声―圧倒的に美しく輝く「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。世界中で翻訳&絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹篇が待望の文庫化! 


「手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩」志川節子

2015年06月23日 21時10分31秒 | 読書(小説/日本)


「手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩」志川節子

面白かった。
しかも、レベルが高い。
時代小説ファンにお薦め。

吉原を舞台にした短編集。
7編収録されている。
それぞれゆるいリンクがある。
3編目あたりから、面白さレベルが上がってくる。
「てのひら、ひらひら」
「穴惑い」
特に良かったのが「白糸の郷」。
「掴みの桜」もいい。
最後の「浮寝鳥」は、最初の作品「しづめる花」の後日譚。

P119
披露目の床でどれほど竦ませていた娘でも、二、三年も経てば馴れが先立ち、日々のめりはりが失われてくる。気持ちの隙に入り込んでくるのが間夫(まぶ)で、いずれの妓楼もいかに追い払うかで手を焼いている。
 遊女に仕立てるのが上ゲ屋、年期半ばで磨き直すのが保チ屋なら、合い間にあって妓の心を見張り、間夫の芽を断つのが目付なのであった。


「糸を手繰れば 結び屋おえん」志川節子

「春はそこまで 風待ち小路の人々」志川節子

【おまけ】
著者は寡作なため、まだ3作しか著していない。
私は、これで全て読んでしまった。
次作を楽しみに待っている。

【ネット上の紹介】
江戸吉原には、娘を花魁へと染めかえる裏稼業があった。その名も「上ゲ屋」「保チ屋」「目付」。うぶな時分に閨房の技を仕込み、年季半ばで活を入れ直し、常に女心を探り、間夫を絶つ。これら男衆と磨きぬかれた妓達が織りなす人生絵図を陰翳豊かに描く、連作七編。秘められし真心が静かに胸をうつ、傑作時代小説。


「ふしぎの国のバード」佐々大河

2015年06月22日 21時24分17秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「ふしぎの国のバード」佐々大河

日本のマンガは奥が深い、と思っていたが、ここまで深いとは。
なんとイザベラ・バードが主人公。
物語もイザベラ・バードの目を通して、当時の日本が描写される。
なんと斬新な。
だから、日本人の言葉が解読できない記号で表現されている。
これが商業主義の雑誌で連載されているのか、と感慨深い。




【朝日新聞の紹介記事】


【蛇足】
描画タッチは、残念ながら、私の好みではない。
そこが残念なところ。

【参考】
イザベラ・バードを扱った作品、として思い浮かべるのは、
「イトウの恋」、である。
イトウとは、イザベラ・バードが日本各地を「探検」した際の通訳である。
「小さいおうち」とかで、中島京子さんが有名になる前の初期作品。
イトウの恋 

【ネット上の紹介】
イギリス人の目から見る、懐かしくも驚きに満ちた日本文化  ディスカバー・ジャパンーーこれは、古き良き日本文化を取り戻すための物語。時は明治初頭。東京から蝦夷まで、地図なき道を旅したイギリス人がいた。その名はイザベラ・バード、冒険家。彼女の目的はただひとつ、滅びゆく日本古来の生活を記録に残すこと。通訳の伊藤鶴吉をひとり連れ、日本人すらも踏み入ったことのない奥地への旅が、今はじまる!漫画誌ハルタの実力派新人・佐々大河。初のコミックスは、日本の魅力を熱筆した旅物語!! 


「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」中島要

2015年06月19日 22時11分34秒 | 読書(小説/日本)


「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」中島要

面白いだろう、と思って読んで、やはり面白かった。
中島要作品はどれも質が高い。
それぞれに趣向が凝らされ、特色がある。

本作品は、落語テイストである。
貧乏長屋に住む人たちを描いている。
住人を個性豊かに描き、エピソードもユニーク。
しかも、『落ち』もしっかりある。
一番感心したのは、駕籠かきの話『嫁入り問答』。
大晦日、駕籠かきの2人が若い娘を乗せる。
上野山下の尼寺へ行ってくれ、と。
どうやら出家したいようだ。
大和屋さんとの縁談が気にくわないから出家する、と。
仲裁で登場するのが、貧乏長屋の飲んだくれの浪人。

「嫁入りを賭けて、弥太郎さんとお花に問答をさせるだって」
「へぇ、お嬢さんが大和屋への嫁入りを嫌がるのは、亭主になるお人より自分のほうがずっと賢いと思っていなさるからだ。だったら、春明寺の庵主様立会の下、問答をしてみりゃいいと思いやして。その結果、弥太郎さんが勝てばお花さんは嫁に行く。逆に、お花さんが勝てば髪を下ろして尼になる。これでどうです」

・・・さて、いったいどうなるか?
この『落ち』がすばらしい。感心した。

【ネット上の紹介】
 貧乏長屋のお初と兄の太吉。両親は、騙されて浅草の小間物屋を失い、失意のうちに亡くなった。「必ず店を買い戻そう」と固く誓う太吉が、二十両の有り金をはたいて名品“井戸の茶碗”を入手。だがそれは、真っ赤な贋物だった。弱り果てた兄妹に声をかけたのは、隣に住む赤目勘兵衛。高値で売ってやるという、酒びたりの浪人にどんな策が!?新世代の人情時代小説!


「蓮花の契り 出世花」高田郁

2015年06月15日 21時49分41秒 | 読書(小説/日本)


「蓮花の契り 出世花」高田郁

デビュー作「出世花」の続編にして完結編。
まさか、続編が出るとは思わなかった。
続きが気になっていたので、とても嬉しい。
内容も良かった。
「みをつくし」シリーズ以外で、もっとも面白くて質の高い作品、と思う。

前作では、次のように紹介した。
(わたし自身の文章を再録する)

身寄りのない天涯孤独の少女・お艶が寺に引き取られるところから始まる。
ここで名前を、お艶からお縁と変える。
さらに、お縁から三昧聖・正縁へ。
出世魚、って魚がいる・・・ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ。
お艶も名前を変えながら成長していく。


その後、どうなったのだろう?
ここでは、成長したお縁の姿を見ることができる。
全部で4編収録されている。

ふたり静
青葉
夢の浮橋
蓮花の契り

特に、良かったのは『ふたり静』。

22歳になったお縁は、数珠の修理のため、仏具屋に教えられた数珠師を尋ねる。
P28
「差し支えなければ、どの寺か教えて頂けませぬか」
「下落合の青泉寺です」
青泉寺、と復唱して、与一郎ははっと顔を上げてお縁を見た。
「下落合の青泉寺といえば・・・・・・もしや、あなたは三昧聖か」
 問われて、お縁は黙したまま頷いた。
 そうでしたか、と数珠師は唸った。
「三昧聖の湯灌を受けた者は必ずや極楽浄土へ行く、と巷では大層な評判ですよ。そうですか、あなたがその三昧聖でしたか」

お縁は、その数珠師の妻が、知り合いの『遊女・てまり』そっくりなのに驚く。
妻・香弥はてまりなのか?
記憶を失っているのか?
これだけでも読んで欲しい。
絶品、である。

『青葉』では、ミステリタッチとなる。
同心の新藤松乃輔に請われて、死因を究明する手伝いをする。
お縁は検死の手引き書「無冤録述」を読んでいる。
仕事柄、死体を扱うから・・・とは言え、「無冤録述」を読む三昧聖は稀有、と言える。
しかも、その観察眼は鋭い。
同心が協力を請うのも諾なるかな。

『夢の浮橋』はエンディングへの前振り。
ある事件が切っ掛けとなり、青泉寺が閉鎖される。
『蓮花の契り』で、お縁は大きな選択を迫られる。
これは迷う。

・・・納得のエンディング、と思うが、
何割かの読者は、不服を感じるかもしれない。
しかし、お縁のこれまでの生き方を考えると、これしかない・・・かな。

【蛇足】
『ふたり静』を読んでいて、ウィリアム・アイリッシュの「死者との結婚」を思いだした。
もちろん、シチュエーションは全然異なるけど、なんとなく思いだした。
都会で全てを失った女性・ヘレン。
失意の心を抱き、都会を去ろうと列車に乗る。
たまたま前の座席に乗り合わせたのが幸せそうな新婚夫婦。
なんの接点もないはずの両者。
それが列車事故により、運命が激変していく。
別人として生きることになる女性を描く。
こうして、『ふたり静』を読んでいて、ウィリアム・アイリッシュを連想した。

【参考リンク】
「出世花」高田郁


音羽山▲593m

2015年06月14日 19時40分13秒 | 登山&アウトドア(関西)

音羽山(▲593m)に登ってきた。
どこにあるの?・・・と聞かれそう。
京都と滋賀の県境。
山科から大津に向かう途中、
京阪電車だと「大谷駅」で下車する。

1号線の上に、「逢坂山歩道橋」が架かっている。
ここを渡って行くのだが、土砂崩れの為ブルーシートで囲われ、歩道橋に行けない。
(回り込んで歩道橋に上がった)
あとは、しっかりしたトレースがついている。

階段がやたら多くて、しんだかった

このNTT送電線鉄塔の横にピークがある

ここが頂上、三角点

山科が一望できる・・・さらに、右に目を向けると琵琶湖も見える

下山の時に、逢坂の関跡をみつけた

【感想】
山科で京阪に乗り換えるのが面倒で、大津で降りた。
JR大津から京阪大谷まで歩いて戻ったが、けっこう時間がかかった。
1号線沿い、車が激しく通る横を歩くので、気分もでない。
さらに、逢坂山歩道橋に上がるのに一苦労。
土砂崩れで回り込んだから。
歩道橋の後は、しっかりした山道が続くはず・・・・しかし、T字路で間違って右に行ってしまった。
私有地に迷い込み、余分な時間を費やした。
元に戻ってやり直し。
T字路を左に行くとガイドブックに書かれたとおり「急登」が出てきた。
その後は迷わず、頂上へ一直線。トレースも広くしっかりしていて安心。
3パーティくらい、登山者にも出会った。

【総括】
最初はトラブルばかりで、「このコース失敗だった」と思ったが、
登ってみると、けっこう良い山で、いいコースだった。
そのうち、また訪問したい。
次回は、逢坂山にも登りたい。
蝉丸神社・境内の奥に登山口があるかも?(未確認)

このあたりは、「逢坂の六人」(周防柳)の舞台となっているので、
昨年の秋からずっと気になっていた山である。


「職業は武装解除」瀬谷ルミ子栗山 さやか

2015年06月13日 00時32分31秒 | 読書(現代事情)


「職業は武装解除」瀬谷ルミ子

これほど『つぶし』の効かない職業はない。
生活に困らないよう職業を選び、そのために勉強をするのだが、
まったく異なるコンセプトで人生を歩んでいる。
迷いのない、潔い印象を受ける。
――こんな生き方があるのか、と。
方向が決まっていて、一直線に進んでいる。
(本人は手探りだろうけど、結果として一直線)
「世界が尊敬する日本人25人」(『Newsweek日本版』)にも選ばれている。
当然、プロ意識も高い。

P25
同僚からは、紛争地で悲惨な現実に直面しても、感情的にならず淡々としていることが多いとよくいわれる。それは自分の仕事が同情することではなく、人々の抱える問題を解決するために行動することだとつねに思っているからだと思う。

P35
DDRとは何か?
Disarmament 武装解除
Demobilization 動員解除
Reintegration 社会復帰

P35
和平合意が結ばれて紛争が終わっても、それだけで人々が安全に暮らせるわけではない。紛争が終わるということは、兵士にとっては、明日からの仕事がなくなるということだ。

P157
「和解」とは、必ずしも、手と手を取り合い仲良しである形でなくてもよいと思う。たとえ緊張状態にあっても、お互いに争いや暴力を使わずに問題を解決できる状態で共存できているのであれば、それもひとつの平和の形なのだ。日本と中国や韓国についても、和解したかと聞かれて、全員が同じ答えを返さないだろうし、答えは分かれるはずだからだ。

仕事をするうえで、大事にしていることが3つある、と。
P190-192
①想像力、イマジネーションを最大限活用する
②限界まで精神的にへとへとになったときでも、「あと一歩」だけ進んでみる
③人生の岐路や、難しい決断を下すとき、俯瞰して考えるようにする「30年後の自分が今の自分を見ていたら、どちらを選ぶだろう」と。

思った以上に、おもしろく、得るものもあった。

PS
【著者紹介】によると、次のように書かれている。
1977年群馬県生まれ。
中央大学総合政策学部卒業。
英ブラッドフォード大学紛争解決学修士課程修了。
ルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネ、コートジボワールなどで、
国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。
2007年よりJCCP事務局長として、ソマリア、南スーダン、アジア地域などの事業を統活。
現在、認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)理事長、JCCP M株式会社取締役。
専門は紛争後の復興、平和構築、治安改善、兵士の武装解除・動員解除・社会再統合(DDR)など

【おまけ】
読んでいて、栗山 さやかさんを思い出した。
方法論は全く異なるが、芯の部分が同じ、と感じた。

【参考リンク】
紛争地のアンテナ - 瀬谷ルミ子のブログ
瀬谷ルミ子(Rumiko Seya)(seyarumi) - Twitter
プロフェッショナル仕事の流儀 第116回 瀬谷ルミ子
プロフェッショナル仕事の流儀 スタッフブログ 武装解除 瀬谷ルミ子さん

【ネット上の紹介】
紛争地帯で、自分よりも権力のあるものに翻弄される人生を送る人々と、政治家の無責任な発言に不安を覚え、未来が描けなかった自分を重ね合わせた高校時代。でも、私たちは努力さえすれば状況を変えられる社会に生きている―。24歳で国連ボランティアに抜擢され、27歳でアフガニスタンのカルザイ大統領から助言を求められるようになっていた。そのすべては、小さな決意の積み重ねからはじまった。「世界が尊敬する日本人25人」(「Newsweek日本版」)に選出された著者による初めての本。

[目次]
1 群馬の田舎から世界を目指す(生意気だった子ども時代
人生が変わった瞬間 ほか)
2 武装解除の現場に立って(内戦中のシエラレオネへ
子ども兵士は加害者か、被害者か ほか)
3 生きる選択肢を、紛争地の人々へ(壊れた組織を立て直す
紛争とは、平和とは ほか)
4 紛争地での事件簿(自分の身の守り方
ルワンダで銃を持った兵士に脅される ほか)
5 50年後の世界と日本、そして私たち(ボーダーレスな世界に必要なもの
私たちに残された選択肢)


「母の遺産 新聞小説」水村美苗

2015年06月09日 21時25分14秒 | 読書(小説/日本)


「母の遺産 新聞小説」水村美苗

人生最後の通過儀礼、それが『介護/看取り』、である。
いまや、ほとんどの方に訪れる避けて通れない試練。
自分の老化と戦いながら、体力と精神力の衰えた状態での通過儀礼。
故に、疲労困憊してしまう。

以下、ネタバレありなので、ご注意。

P204-205
呆けた老人特有の食べ物への執着がすでに母にも現れ始めていた。
(中略)
お刺身、ケーキ、クッキーと両手に下げて母の部屋に入ると、車椅子に埋もれた小さく縮んだ猫背が目にとびこんでくる。もう自分の頭ではよく理解できない悲しみと焦燥感の塊に成り果てた母の姿であった。

P252-253
死なない。
母は死なない。
家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。
ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?

P264
「閉経してからの老けかたは、また格別のもんがあるね。人のことは言えないけれど」

P283
こういう朝が何年も続くうちに、血色の悪い不幸な顔をした女になっていくにちがいない。

P289
実際、三十代の後半とは微妙な年齢である。
(中略)
だが、女もあと数年すれば、哀れ、「若い女」から「若づくりの女」になってしまう。

女性作家だけあって、リアルで的確、情け容赦ない描写が続く。
それも、524頁の長丁場の大作。
主人公の母は、途中で亡くなる。
しかし、作品はそこで終わららない・・・まだ半分ある。
いったいどうなるのか?
舞台は箱根のホテルに移動。
そこには、いわくありげな長期滞在者たちがいた。
ヒロインも、その中にまじり、自分自身を見つめ直していく。
母への感情にも折り合いをつけていく。
同時に、夫との関係も整理していく。
離婚を決意するかどうかは、自分で読んで確かめてみて。

P524
母は母なりに娘の許しを請うていたのかもしれない。美津紀自身、そんな母をいつのまにか許していた。
(中略)
母が二度と見ることはない桜の花は、いづれ実津紀も二度と見ることがなくなる桜の花であった。

【ネット上の紹介】
家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。『本格小説』『日本語が亡びるとき』の著者が、自身の体験を交えて描く待望の最新長篇。


雑草

2015年06月08日 20時44分12秒 | 身辺雑記

雑草の種が勝手に飛んできて、花を咲かせてくれる。
これほどありがたいことはない。

小さな花だがしっかり咲いている

亀の下にも黄色い花

庭の隅にも咲いている

石の隙間にも咲いている


「マンガに息づく宗教性」

2015年06月05日 20時22分31秒 | 読書(宗教)

「マンガに息づく宗教性」と言うタイトルで「リアル」「銀の匙」が紹介されている。
どちらも、当ブログで取り上げている作品。2015/06/05、朝日新聞より


「りゆうがあります」ヨシタケシンスケ/作・絵

2015年06月03日 20時25分43秒 | 読書(絵本)


「りゆうがあります」ヨシタケシンスケ/作・絵

話題の人気作品。
ハナをほじったり、びんぼうゆすりをしたり・・・クセや習慣。
これには「りゆうがあります」、と説明される。
すべて、屁理屈だけど、それが愉快。

なぜハナをほじくるか?

ぼくのハナのおくには
スイッチがついていて、
このスイッチを
たくさんおすと、あたまから
「ウキウキビーム」が
でるんだ。
このビームは、みんなをたのしいきもちに
することができるんだよ。





【ネット上の紹介】
ハナをほじったり、びんぼうゆすりをしたり、ごはんをボロボロこぼしたり、ストローをかじったり…。こどもたちが、ついやってしまうクセ。それには、ちゃんとした「りゆう」があるんです。


「流」東山彰良

2015年06月01日 22時16分55秒 | 読書(小説/日本)


「流」東山彰良

面白かった。
怒濤のようにストーリーと感情が押し寄せてくる。
タイトルどおり、読者は押し流される。
すごい作品である。

物語は台湾から始まる。
1975年、蒋介石総統が亡くなる。
その同じ年、祖父が殺される。
誰が殺したのか?
・・・とくると、ミステリ小説と思われるかもしれない。
そうではない。
家族、青春、恋愛、政治、歴史、風俗、戦争・・・様々な要素を絡ませながら、
台湾、日本、中国にまたがって展開していく。

P156
「霧社事件のことは?」
「はい、知っています」
 1930年台湾先住民が日本の統治に対して武装蜂起した事件だ。手はじめに派出所が襲われ、約140人の日本人が殺害された。総督府はただちに軍隊と警察を投入して、徹底的に武力弾圧した。暴動を鎮圧したあとも日本人は報復をつづけ、約千人の台湾人が殺された。

【蛇足】
もし、これに似た作品を挙げるなら、梁石日さんの「血と骨」、奥田英朗さんの「サウスバウンド」か?
もっとも、そんな仕分け作業は意味ない。
「流」は「龍」であり、中国人の支流、共産党とは異なる道を選んだ国民党の流れを描いている。

【さらに蛇足】
P223
わたしは拳銃をジーンズのまえに差して、Tシャツで隠した。
・・・このシーンだけど、発砲したばかりの銃口は高熱を発している。
ジーンズのまえに差して火傷しないのだろうか?
ちょっと、気になった。
一発くらいなら大して熱くならないのだろうか?
実際のところどうなんだろう?(重箱の隅をつついて申し訳ない)

【ネット上の紹介】
春は、謎と輝きに満ちている―― 台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能を持つ「このミス!」出身、大藪賞受賞の異才が、はじめて己の血を解き放つ! 何者でもなかった。ゆえに自由だった――。1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。謎と輝きに満ちた青春が迸る。友情と恋、流浪と決断、歴史、人生、そして命の物語。エンタメのすべてが詰まった、最強の書き下ろし長編小説!