【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「よるのふくらみ」窪美澄

2014年04月30日 21時20分57秒 | 読書(小説/日本)

よるのふくらみ 
「よるのふくらみ」窪美澄

新刊が出たら、必ず読む作家がいる。
窪美澄さんも、そんな1人。

今回は、恋愛小説。
とは言え、商店街や家族といった問題も取り込んで、
小学生の時から、30歳くらいまでのスパンで、成長と供に描かれる。
主な登人物は3人。
兄・圭祐、弟の裕太、近くに住むみひろ。
同じ商店街で育った幼馴染み。

「ふがいない僕は空を見た」のような形式の連作長編。
6編からなり、語り手を変えていく。
同じ出来事でも、角度を変えて見せてくれる。
こんなセリフを言っていたけど、心ではこう思っていたのか、と。

P36
小一時間、圭ちゃんの親戚にビールをついで回っただけなのに、私はひどく疲れていた。
生理のせいだけじゃない。肩にのしかかってきたのだ。結婚をすれば、もれなくついてくる圭ちゃんの家族や親戚、まるでドラマのような嫁と姑の関係や、セックスの先にある妊娠や出産や子育てなんていうものが持つ重さと鋭い輪郭が。


心理描写が秀逸なので退屈しないで読み進めることが出来る。
様々な問題と要素が盛り込まれているので、年齢に応じて楽しめる、と思う。
窪美澄作品の中でも親しみやすい内容、と思う。
(少なくとも、前作「雨のなまえ」より、一般受けする)


【追加感想】
今回、私が注目したのが最終章「瞬きせよ銀星」。
舞台が大坂に移動。

P211
チョコレートでコーティングされたようなつやつやの電車に乗り換え、川を渡る。

これって、阪急電車のことで、川は淀川、渡った先は、当然「十三」。

「南北に走る道を『筋』、東西に走る道を『通り』て言うんや。けどな、商店街は筋も通りも、どっちも使うことあるけどな」

P234
京子が話すこの町の言葉は心地いいメロディーのように耳をくすぐった。京子の話す言葉をいつまでも聞いていたかった。時々、京子のイントネーションがうつって同じような言葉を話すと、
「いんちきくさ。きもっ」と京子は笑った。
(中略)
「なぁ、うち、圭ちゃんといっしょに明日行きたいとこがあるねん。うちが日曜日によう行くとこ」

こんな感じで、大阪弁が駆使される。
(私のような、大阪の人間が読んでも、違和感がない)
著者は東京の方のはず。
どこで勉強されたのだろう?
どなたかに、監修を頼んだのだろうか?

【さらに追加】
兄弟で1人の女性を好きになる、と言うと思い出すのが「エデンの東」。
マンガでは「カリフォルニア物語」。
けっこう普遍的なテーマか?
ハヤカワepi文庫<br> エデンの東〈1〉 小学館叢書<br> カリフォルニア物語 〈1〉

【ネット上の紹介】
その体温が、凍った心を溶かしていく。29歳のみひろは、同じ商店街で育った幼なじみの圭祐と一緒に暮らして2年になる。もうずっと、セックスをしていない。焦燥感で開いた心の穴に、圭祐の弟の裕太が突然飛び込んできて……。『ふがいない僕は空を見た』の感動再び! オトナ思春期な三人の複雑な気持ちが行き違う、エンタメ界最注目の作家が贈る切ない恋愛長篇。


ポンポン山▲679m

2014年04月27日 19時42分34秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりにポンポン山に登ってきた。

閑散としているように見えるが、登山道では複数の大パーティの団体さんに出会った

山では、まだ桜が咲いている

新緑が美しいのがこの季節

ポンポン山は、やたら杉の木が多い・・・晩はくしゃみと鼻水、涙が止まらず
来年(覚えていたら)4月は避けようと思う・・・まいりました


「山桜記」葉室麟

2014年04月25日 21時58分25秒 | 読書(歴史/時代)

「山桜記」葉室麟

葉室麟さんの短編集。
9編収録されている。

汐の恋文
氷雨降る
花の陰
ぎんぎんじょ
くのないように
牡丹咲くころ
天草の賦

いくつか文章を紹介する。

P122
「親子は血のつながりがありますゆえ、放っておいても恐らく裏切りはいたしますまい。主従は主人に力があればこそ家来が従うでありましょうが、夫婦となると、もともと他人ゆえ心が通わねば供に暮らすのは無理でございましょう。いずれかが力を失うたからと見捨てるのは夫婦とは申せませぬ。ひたすら心の結びつきに頼って世の荒波を渡らねばならぬのですから、夫婦ほど強いつながりはないのです」

〈うわなり〉とは後妻のこと。
離縁された前妻が親しい女人を語らって箒やすりこぎなどを手に後妻を襲撃して嫌がらせをするのを〈うわなり打ち〉と呼ぶ。
P129
「よいか、〈うわなり打ち〉をいたす女子は婚家を去らねばならなかったことで、すでに負けておるのだ。そうであるのに、迎え討たれもせず、かつておのれが使った台所を打ち壊すのは虚しきばかりじゃ。負けじとひとを集め、迎え討ってやるのが、女子の情じゃ。そなたは情を知らぬと見える」

どの作品もすばらしい。
が、1編を選ぶとしたら、「花の陰」か。

細川屋敷を石田三成の命を受けて、大坂方が取り囲んで人質に取ろうとする。
ご存じのように、この時、ガラシャは壮絶な最期を遂げる。
辞世の和歌は次のとおり。

ちりぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ

ガラシャの実子の忠隆。
その忠隆の嫁が千世。
前田利家の七女で正室の芳春院(まつ)を母として生まれる。
千世は、ガラシャと一緒にいたが、所在がわからない。
ガラシャを見捨てて逃げた、とされたのだ。

「花の陰」は、千世と忠隆夫婦の物語。
この後、この夫婦はどうなるのか?
千世はどう生きるのか?
よかったら読んでみて。
歴史小説だから、史実を曲げるわけにはいかない。
けれど、著者が「こうあってほしい」って思いを演出することはできる。
同じ史実でも幾通りにも解釈できる。
私は、この葉室麟さんの解釈は秀逸、と思う。

P105
「わたくしは、ガラシャ様がどのような思いを抱いておられたかを知ろうとなされなかった義父上様に、お話しいたしたくなかったのでございます」
千世が言い切るとと、麝香が楽しそうにふふっと笑った。
「まこと、忠興殿に知らせるに及ばぬことじゃ。それこそガラシャ殿に仕えた嫁の意地であろうな」
麝香の言葉に、千世はゆるやかに笑みを浮かべた。
それはガラシャが亡くなって以来、自らに禁じていた微笑みであった。

【ネット上の紹介】
徳川頼宣に嫁いだ加藤清正の娘・八十姫の秘話。鍋島直茂の妻に伝えられた姑の言葉の意味は?著者初の珠玉の短編集。

「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」山口真由

2014年04月23日 22時26分55秒 | 読書(エッセイ&コラム)

天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。
「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」山口真由

この方の経歴がすごい。
2002年、東京大学法学部に現役入学。
在学中、司法試験合格。
4年生時、国家公務員第1種試験合格。
2006年、東京大学法学部を首席で卒業、財務省に入省。
2009年9月、弁護士登録。
現在、弁護士として働きながら、テレビ出演などでも活躍。
・・・絵に描いたような成功人生。
何か秘訣があるのか、と読んでみた。
内容は、努力の仕方について、書かれている。

P81
そもそも一度読んだだけで理解しようとすることが誤りです。反復・継続しなければ、人は学ぶことができません。一を聞いて十を知る人は、私に言わせれば、その能力の高さゆえ異常な人に分類されます。十を聞いて一を知ることができれば、大したものじゃないか、そう思います。

2時間かけて1度精読するのではなく、30分で4回ページをめくり続けたほうが、頭に入ります。


P83
目標はとりあえず、素通しで7回読んでしまうこと。これくらい読めば、見慣れた記述に、どんどん親近感が湧いてきて、読書が楽なものになっていきます。

P91
そう、反復という観点からは、この8割が正解できて、2割が努力が必要なくらいのレベルというのが重要なのです。

インタビュー記事をリンクしておく。
次の記事を読んだら、この本を読んだのと同じ。
東大首席→官僚→弁護士!最強のエリート美女 | エリート美女のすべて ...

教科書を7回読むだけで、断然トップになれた!(前編 ...

教科書を7回読むだけで、断然トップになれた!(後編 ...

【感想】
参考になるようで、ならない。
実際、自分がマネをして、実行できるか?
たとえ、実行できたとして、同じ成果が得られるか?

クライミングでも同じこと。
有名クライマーと同じ練習ができるか?
できたとして、同じように上達するか?
(身体を壊すのがせきのやま)

【ネット上の紹介】
読書に時間をかけない、予定は立てないetc.東大法学部を首席で卒業、財務省勤務を経て、現在は弁護士として活躍する著者が明かす、無理なく努力を続けられる37の秘訣。
第1章 正しい努力のための方法論(なぜ人は努力することができないのか?
不得意分野の努力はやめるべき ほか)
第2章 努力を始めるための方法論(謙虚になるということは
教本は1冊にこだわる ほか)
第3章 努力を続けるための方法論(谷選手とお蝶夫人の名言
なぜ人は一生懸命選んだ手帳を1ヵ月で使わなくなるのか ほか)
第4章 努力を完遂するための方法論(とりあえず早起きしてみる
「勝負スポット」を複数作る ほか)


「ゆうじょこう」村田喜代子

2014年04月21日 20時58分51秒 | 読書(小説/日本)

「ゆうじょこう」村田喜代子

幼くして熊本の廓に売られてきたイチ。
廓の様子、廓の学校『女紅場』の師匠・鐵子さんとの交流が描かれる。
とても良い作品だ。

P251
鐵子さんが算数の問題を出す。
「おっ師匠さん、そりゃ無理たい。手の指が足りまっせん」
「それなら隣の手を借りるがいい。お金の勘定ができない者は、ぶじ年季明けしてこの街を出て行くことは難しい。いいかい。お金の勘定は、お前たちの命の勘定と同じこと。手でも足でもみんな使って必死で数えなさい」

P29
「ちょいと、寄って行かないかい」
日暮れと供に現れる最下層の売女で、夜鷹とか陸饅頭と呼ばれるクラスだ。懐の寂しい男が道端で買って用を足す、代価は十銭ほどである。
大門の中に入って、曲がりなりにも屋根の付いた寝所に一晩泊まり込むと、安い売女で一円三十銭になる。それより格が上がって酒肴が出る所で、二円から三円を払う。

P 62
娼妓の定年は普通二十七歳だ。十七で初見世に出て、十年間働いてようやく楼を出る。

P111
「遊女の嘘は美徳・・・・・・。花魁の嘘はこの世の最高の美徳でありんす」

明治5年に「娼妓解放令」というものを国は発布する。
P205
人身を売買し終身あるいは年期を限って虐使することは、人倫に背く有るまじき事で、娼妓、芸妓、年季奉公人の一切を解放すると定められた。
そしてその同じ月に、通称「牛馬切りほどき令」と呼ばれる通達が出された。なぜ牛馬かといえば、その文章がすこぶる変わっているからだ。
〈娼妓芸妓は人身の権利を失ふ者にて、牛馬に異ならず。人より牛馬に物の返弁を求むるの理なし。故に従来同上の娼妓芸妓へ借す所の金銀並に売掛滞金等は、一切債(はた)るべかざる事〉
娼妓は人に非ずして牛馬であるという前置きは、以前これを眼にした鐵子さんは驚き呆れ憤慨したものだった。そしてこの「牛馬切りほどき令」もいちおう人身売買は禁じていたが、売春を取り締まるものではなかったのだ。

福沢諭吉に関して書かれた箇所がある。P207~209
福沢諭吉のイメージが激変する。
これが、『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず』、と語った方だろうか!、と。
〈例えば芸妓など言う賤しき女輩が衣装を着飾り、酔客の座辺に狎れて歌舞周旋する其中に、漫語放言、憚る所なきは、(中略)之を目して座中の淫婦と言わざるを得ず〉

文章が巧い。
そうとうなテクニック、と思う。
それもそのはず、文章の書き方の本も著されている。
朝日文庫<br> 縦横無尽の文章レッスン朝日文庫<br> 名文を書かない文章講座 

本作品、村田喜代子さんの「ゆうじょこう」は、艶めいた雰囲気はない。
どちらかというと、民話のような味わいを感じた。
全編・方言があふれているからだろうか。

遊郭を舞台にした作品と言うと、上の2作品を思い出す。

【参考】
『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず』、について
(実際は、微妙にずれている)
学問のすゝめ - Wikipedia


【ネット上の紹介】
幼くして熊本の廓に売られてきたイチ。廓の学校『女紅場』に通いながら、一人前の娼妓となっていくイチが眼の当たりにする女たちの悲哀。赤ん坊を産んだ紫太夫。廓から逃亡したナズナ。しかし明治の改革は廓にも及び、ついに娼妓たちがストライキを引き起こす…硫黄島から熊本の廓に売られてきた海女の娘イチが見た女たちのさまざまな生を描く連作短編集。

スポーツ+ダイエット=疲労骨折

2014年04月20日 13時43分30秒 | TV/ドラマ

ダイエットが、これほど骨に悪影響があるとは思わなかった。
特に、スポーツ+ダイエットの組み合わせが最悪。
簡単に、疲労骨折してしまう。

以下、NHKクローズアップ現代のサイトをリンクしておく。

2014年4月15日(火)放送
無月経、疲労骨折・・・10代女子選手の危機

動画を見る


阿武山

2014年04月19日 21時07分55秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりに阿武山に登ってきた。
今回は、アプローチの菜の花に期待していた。

期待どおりの菜の花の群生

こちら山頂

山頂に忽然と出現した『お花畑』・・・う~ん、違和感を感じる

勝手に咲いているタンポポ
タンポポというと川崎苑子さんの「タンポポとりでにあつまれ」を思い出す
残念ながら、現在所持している川崎苑子作品は「あのねミミちゃん」のみ。

菜の花と言えば、(当然)樹村みのりさんの「菜の花畑」シリーズ。
樹村みのり作品集 (菜の花畑編)菜の花畑のむこうとこちら

《ベスト版》文学のおくりもの<br> たんぽぽのお酒 (ベスト版) 
タンポポと聞いて、こちらを思い出す方は、かなりの文学愛好家


旅の手帖 2014年5月号

2014年04月16日 21時41分09秒 | 読書(山関係)

旅の手帖 2014年5月号

今月号の特集は「聖地を旅する」。
気になるテーマなので、購入した。596円
内容は次のとおり。

[特集]
●自然の力をチャージ!
  聖地を旅する
 ◇Introduction●宗教学者・島田裕巳に聞く「聖地」のはなし
 ◇熊野●巨石に神を感じる自然信仰の源流がここに(三重県・和歌山県)
 ◇富士山●神が鎮座する聖域と崇拝された気高き霊峰(山梨県・静岡県)
 ◇宇佐・国東半島●神と仏はいかにしてこの地で習合したのか(大分県)
 ◇沖ノ島●女人禁制を貫く玄界灘に浮かぶ神の島(福岡県)
 ◇出羽三山●現在・過去・未来をめぐって生まれ変わる(山形県)
 ◇久高島・斎場御嶽●本来は男子禁制、琉球最高の祈りの地へ(沖縄県)
 ◇イラストルポ●風まかせ神まかせ 天理“出会い”の旅(奈良県)
 ◇新しくなった伊勢・出雲へ●伊勢神宮(三重県)・出雲大社(島根県)
 ◇「遷宮1周年記念プラン」で聖地・出雲を堪能○星野リゾート 界 出雲
 ◇聖地Column_○○禁制の聖地
 ◇聖地Column_海外の聖地
 ◇聖地Column_四国霊場開創1200年

◆町に漂う、江戸情緒・明治の薫り
  東京 老舗めぐり
 ・浅草・向島●うなぎ、寿司、天ぷらと江戸前の名店勢揃い
 ・日本橋・人形町●旧街道の起点で元祖メニューを味わう
 ・銀座●文明開化以来、時代に先駆けてきた町で守られる味
 ・両国●大相撲・鬼平・忠臣蔵……。歴史の町の江戸料理
 ・神田●戦火を免れた下町で文人が愛した名店を訪ねる
 ・上野●粋人好みの上野の山。池のほとりで和洋ランチを
 ・まだあります!●東京の老舗が集う町

「尾根を渡る風 駐在刑事」笹本稜平

2014年04月14日 21時57分47秒 | 読書(小説/日本)

「尾根を渡る風 駐在刑事」笹本稜平

先日読んだ「駐在刑事」の続編。→「駐在刑事」笹本稜平
奥多摩の山で起こる様々な事件。
山岳小説と警察小説が同時に楽しめる。

P25
「あれ、カタクリの花でしょ?」
純香が声を上げる。立ち止まって指す先に、まだ蕾に近いカタクリの花がうなだれるように咲いている。(中略)開花期を迎えれば、花心を下にピンクがかった紫の花弁が篝火のようにそり返る。樹林帯の下草を埋めるように咲き誇るその群落は、地味な色彩にもかかわらず豪奢な印象を与える。
(以前、二子山の岩を登りに行った際、アプローチで峠の辺り、カタクリの花が咲いていたのを思い出すbyたきやん)
Erythronium japonicum flower.JPGbyウィキペディア

P246
「山にはエスカレーターもエレベーターもありません。しかし、苦しみながらの一歩一歩が、登り終えたとき自分の宝になっています。お金になるわけじゃない。名声が得られるわけでもない。しかしそれは自分の魂にとって、とれも贅沢な贈り物だという気がします」

全部で5章=5編の短編が収録されている。

①花曇りの朝
②仙人の消息
③冬の序章
④尾根を渡る風
⑤十年後のメール

④の「尾根を渡る風」はタイトルにもなっている作品で、ストーカー事件とトレイルランニングを取り上げている。異色の組み合わせのテーマをどう料理するか、腕の見せどころ。
P169
山は自然の美しさや静けさを味わうために登るもので、苦しい思いをして駆け回るのは邪道』としながらも、著者は、トレイルランニングに好意的である。

ちなみに、私は(さほど)好意的になれない。
日本の登山道は狭い。
すれ違うのがやっとの道が多い。
そこを普通の登山者とトレイルランニングする者が利用するとどうなるか?
喩えるなら、混雑する狭い道で、歩行者と自転車が通行するようなもの。
お互いストレスだし、事故が起きてもおかしくない。
それに、以前にも書いたが、動物は走っている人間を見ると、「攻撃された」、と勘違いする。
特に、秋の熊は襲ってくるので要注意。→「山と渓谷」2010年12月号
だから、「山の中で走る」という行為は感心しない。
特に、夜に走るのは良くない。危険すぎる。
(いつか、練習中、公式競技中に、熊に襲われる事故が発生するかもしれない、と危惧する)
熊の生息地なのに無関心すぎる

【ネット上の紹介】
警視庁捜査一課の敏腕刑事だった江波淳史は、取り調べ中に容疑者が自殺したことで青梅警察署水根駐在所所長へと左遷された。亡くなった女性への自責の念から、江波が望んだ異動でもあった。駐在所の仕事と暮らしにも馴れ、山歩きを趣味とする江波は徐々に自らを取り戻していく。ある日、御前山でペットの犬がいなくなったという連絡があり、山に入った江波の見つけたトラバサミが山梨で起きた殺人事件とつながっていく―。異色の「山岳+警察」小説!

「スコーレNo.4」宮下奈都

2014年04月11日 21時22分18秒 | 読書(小説/日本)


「スコーレNo.4」宮下奈都

妹・七葉と比べられることの多い、姉の麻子。
(妹はすごく可愛いて、自己主張が強い)
それに引き替え、姉は性格も外見も平凡、と感じている。
そんな麻子の成長が、中学、高校、大学、職場と描かれる。

P158
私は家を出ることにした。七葉から離れたかった。七葉にあって私にないものを「それだけのこと」だと認めてしまえば、他に方法がなかった。人生は勝ち負けじゃない。だけど、私は負けているのだ。七葉のそばにいたら、きっとずっと負け続ける気がした。

全部で4章あるが、どんどん面白くなってくる。
様々な側面を持つ作品で、それぞれの章で趣向も異なる。
私は働きだしてからの章が、特に良い、と感じた。

先日読んだ「よろこびの歌」「終わらない歌」が良かったので、本作品を読んだ。
「よろこびの歌」宮下奈都
「終わらない歌」宮下奈都


【おまけ】
子どもから成人までを描いた作品と言えば、
「永遠の出口」「グラデーション」を思い出す。

特に「永遠の出口」は騙されたと思って読んで欲しい。
とても面白いから。

↑山本幸久作品・・・こちらは、16歳から21歳までの成長を描いている。

↑佐藤多佳子さんなら「黄色い目の魚」

↑豊島ミホさんなら、この2冊。私は「夜の朝顔」が、豊島作品の中で、一番好き。
角川文庫<br> サウスバウンド〈上〉 角川文庫<br> サウスバウンド〈下〉 
奥田英朗さんが少年を描くとこうなる(評判の高いお薦め作品)

【ネット上の紹介】
自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

第45回大宅壮一賞

2014年04月10日 22時23分33秒 | 読書(ノンフィクション)

市場と権力―「改革」に憑かれた経済学者の肖像 
第45回大宅壮一賞が発表された。
遅ればせながら、紹介してリンクしておく。


「駐在刑事」笹本稜平

2014年04月09日 21時15分15秒 | 読書(小説/日本)

「駐在刑事」笹本稜平

主人公は、事情があって、警視庁捜査一課から奥多摩にある駐在所へ左遷される。
そこに起こる、様々な事件。
いくつか文章を紹介する

北鎌尾根についてふれた箇所。
P208
(前略)湯俣温泉から水俣川を遡行して北鎌尾根に取り付くこのクラッシックルートだった。
大天井岳から水俣川支流の天井沢に降り、そこから北鎌沢を登り返して長いアプローチを省略するショートカットが最近好まれているらしいが、体力的に有利なそのコースを孝夫は邪道だという。(中略)
「せっかくフルコースのディナーが用意されているのに、オードブルもスープも抜きで、のっけからメインディッシュに齧りつくようなもんだよ。それじゃ優雅さを欠くね。山に対して失礼だよ」

P208
本当のクラシックルートというなら末端の北鎌尾根第二峰から始めるのが筋だが、藪が手ごわく展望も悪いその部分は割愛し、北鎌沢右俣から第七峰と第八峰のあいだの北鎌のコルに出て、そこから縦走するほうが賢明だと孝夫は言う。そしてそのぶん時間に余裕ができるから、湯俣温泉の小屋で一泊して、深山幽谷の一夜をのんびり楽しもうと提案した。

全部で6編収録されている。
それぞれ独立した話だが、関連があって、連作長編となっている。

①終わりのない悲鳴
②血痕とタブロー
③風光る
④秋のトリコロール
⑤茶色い放物線
⑥春嵐が去って

後半になるほど、内容が充実して面白くなってくる。
⑤⑥は、芸のできる犬が登場して、楽しませてくれる。

先日読んだ「春を背負って」が良かったので、本作品を読んだ。→「春を背負って」笹本稜平
本作品も警察小説でありながら、山が舞台の連作長編。
これが警察小説なのか、ってくらい、山に関する記述が多い。
そこが、この作品の楽しくて良いところ。

【ネット上の紹介】
警視庁捜査一課から青梅警察署水根駐在所所長へ。取り調べ中に容疑者が服毒自殺したことで左遷された警部補、江波淳史。自責の念を背負う元刑事は、奥多摩の捜査において生身の人間としての自分を取り戻せるか。冒険小説の第一人者が挑む警察小説。組織とぶつかりながらも、自ら信じる捜査を貫く様を描く。


2014年本屋大賞

2014年04月08日 20時33分06秒 | 読書(ベスト)

村上海賊の娘〈上巻〉村上海賊の娘〈下巻〉 
2014年本屋大賞が発表された。
次にリンクしておく。

本屋大賞

2014年本屋大賞」 ノミネート作品が発表されました! | 本の「今


freefan69号

2014年04月07日 21時27分37秒 | 読書(山関係)

69号表紙 
freefan69号が送られてきた。
気になった記事をピックアップする。

P2
日本フリークライミング協会NPO法人化
1989年から「任意団体」として活動してきた日本フリークライミング協会が、
2013年11月末に「非特定営利活動法人」として認可をうけ、
2013年12月20日、法人としての登録を完了。
「NPO日本フリークライミング協会」となった。
現在、「一般NPO」であるが、2年程度実績を作って、「認定NPO」を目指す。
認定NPOになると、寄付金等が免税扱いとなるそうだ。

P16-27
8の字結びの基本について書かれている。
基本なので、しっかり確認したい。
出来れば、きれいな8の字を作りたい。

チェックポイントは3つ。
1.結び目(8の字が正しくできているか)
2.ハーネスのベルトバックルが折り返されているか
3.ビレイヤーのデバイスのセットが正しくされているか

これらを互いに指さし確認します。

P38-39
シーサイドのグランドフォール事故について報告されている。

保持していたホールドが手前に剥がれ始めました。クライマーはビレイヤーを気にして、岩を落とさないように押さえたような体勢のまま墜落。2本目のボルトにテンションが掛かると同時に押さえていたホールドがロープに落ち、ロープを一瞬に切断しました。

私が気になったのは、『ロープを一瞬に切断』という箇所。
21世紀になってロープも進化したが、ナイロンザイルの「氷壁」の時代(1955年の事故がモデル)と変わらない、ってこと。ロープは、鋭利な岩角に弱いのだ。

【覚書】
2014年度、JFA年会費3000円振込んだ。
遅ればせながら、記しておく。

【ネット上の紹介】

  • [連載]新・日本の岩場を斬る
    Spiderman is back! 湯河原幕岩・正面壁
     [文:新田龍海 写真・構成:森山憲一]
  • [クライミングの技術]今さら聞けない 8の字結びの基本
     [文と写真:freefan編集部  監修:菅野富寿]
  • [話題]新しいクライミング動画メディア 
     [文:榎戸雄一]
  • [ローカルレポート] 2013年9月~2014年3月

    [構成:北岡和義、宮脇岳雄、井上大助、小川郁代 他]

    • from東北
       岩手・ひょうたんケイブリボルト作業報告
       宮城・みちのくボルダリングフェスティバル
          霊山ボルダー公開から現在と今後
    • from関東・甲信越
       湯河原幕岩「最高カンテ」崩落
       伊豆・城山南壁、鷲頭山、奥多摩・川合ボルダー
    • from城ヶ崎
       シーサイド・パトロール報告、駐車場情報
       グラウンドフォール事故報告
    • from中部
       愛知・鳳来清掃報告と入山者数調査協力のお願い
    • from関西
       三重・宮川、奈良・御手洗渓谷、兵庫・MCフェイス、こうもり谷
    • from中国・四国
       広島・下帝釈峡、島根・島根半島、四国クライミングカップ報告
    • from九州
       長崎・竜頭泉
  • [連載]ローカル強強クライマー列伝2 -徳島編-  阿部 六輔
     [文と写真:北岡和義 写真:後藤英之]
  • [The Competition]

    2013年度下半期 コンペレポート [文と写真:伊東秀和]
      ワールドカップ・リードで安間佐千が2年連続総合優勝
      2014クライミング日本選手権マムートカップ
      キョーリン ボルダリングジャパンカップ2014
      近年のコンペ事情と子どもたちの成長について思うこと


「中野京子が語る橋をめぐる物語」

2014年04月05日 09時25分02秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「中野京子が語る橋をめぐる物語」

橋にまつわる様々な逸話を紹介している。

P104
ヴェッキオ橋――ポンテ・ヴェッキオについて
ポンテは「橋」、ヴェッキオは「古い」の意
その形態のユニークさは、一度見たら忘れがたい。特に日本人は橋の上に建物を載せるとう発想がないので、でこぼこ不揃いな数階屋をずらりと並べたポンテ・ヴェッキオは、まるでお伽の国のお菓子の橋のよう(東京ディズニーシーに、これをモデルにしたヴェッキオ橋がある)
(中略)
橋は戦乱や氾濫で何度か立て直され、現在のものは十四世紀半ばに再建されたから、すでにもう650年以上たつ。正真正銘「ヴェッキオ」である。
ただし当初は肉屋や魚屋が営業しており、腐肉や内蔵が川へそのまま捨てられて悪臭紛々だったらしく、お伽のイメージからは遠かった。それを宝飾店に限定させたのが、15~16世紀のフィレンツェに繁栄をもたらした、有名なメディチ家だ
(中略)
フィレンツェ1都市だけで、エリザベス朝イギリスのGNPを上まわっていたとの説もある。

P110
「ドイツ橋」について
徳島県鳴門市。大麻比古神社の緑濃い敷地内に、まるでそこだけ異空間のように、中世ヨーロッパ風アーチ型石橋がかかっている。
(中略)
1919年、鳴門のドイツ人たちが、壊れた木橋の代わりに三千個の石を集め、三ヶ月かけて建造した。彼らは橋梁の専門家ではなく、神社から2キロ離れた板東俘虜収容所のドイツ人捕虜たちだった。しかも強制されてではなく、自主的に作ってくれたという。
(中略)
もっと驚くのは、戦後処理終了後のこと。何と150人以上のドイツ人が帰国せず、培った技術を生かして日本に留まる道を選んでいる。バームクーヘンで有名な「ユーハイム」も、ハム・ソーセージのメーカー「ローマイヤ」も、板東俘虜収容所のドイツ人捕虜が創業者だ。

P202
橋は、困難を乗りこえる表象であり、人生が交差する場であり、この世ならぬものと出会う所、異界そのもの。諺や言い回しに橋がひんぱんに出てくるのは必然でしょう。「架け橋となる」「危ない橋を渡る」「橋渡し役をする」「石橋を叩いて渡る」「夢の浮き橋(=はかないものの喩え)」etc。

橋とは関係ないが、「樵のろうそく」が興味深い。
P92
日本語訳がは「ろうそく」でも、フィンランド語キャンテラは、ろうそくとも松明とも違い、正確には「焚き火用の薪」のこと。樵や野戦兵たちが、手軽に暖をとったり飲み物を沸かすために持ち歩いた、直径20センチ、長さ1メートルくらいの針葉樹ないし白樺の丸太を指す。
使い方はこうだ。丸太の芯に十字の深い切れ込みを入れ、中に火付け材(白樺の皮など)を詰めて燃やす。すると向かい合った面が輻射熱で高温を維持し、隙間から新鮮な空気が入るため、うまくゆけば数時間も燃え続ける。
(一度試してみたいbyたきやん)

【蛇足】
この作品で取り上げられている橋で、私が実際見たのは3つだけ。
・・・フランスのアヴィニョン橋、ポン・ヌフ、イタリアのヴェッキオ橋。
特に、ポン・ヌフは、日本を出発する前から、意識していた。
(私は「三銃士」ファンだから)
フランクフルトのマイン川に架かる橋も見たかもしれないが、記憶にない。

【ネット上の紹介】
橋は異なる世界をつなぎ、物語を引き寄せる。奇妙な橋、血みどろの橋、愛の橋…とっておきの30話。[目次]
奇(悪魔の橋
味噌買い橋
犬の飛び込み橋 ほか)
驚(金門橋
水面下の橋
ペルシャ王の舟橋 ほか)
史(ポンテ・ヴェッキオ
鳴門ドイツ橋
古城の跳ね橋 ほか)
怖(流刑囚の渡る橋
若きゲーテの渡った橋
地獄も何のその ほか)