「朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論」橘玲
リベラルVS保守。
そもそもリベラルって何?
リベラルと保守に関して、様々な考察が語られる。
P39
男女のジェンダーギャップだけでなく、正規/非正規、親会社/子会社、本社採用/現地採用など、日本的雇用制度ではあらゆるところに「身分」が顔を出す。日本は先進国のふりをしているが、その実体は江戸時代の身分制社会に近い。日本人同士が出会うと、まず相手の所属=身分を確認し、尊敬語や謙譲語で上下関係を示そうとするが、こんな「風習」は欧米ではもはや存在しない。
P225
利己的な個人が濃密な共同体のなかで生きていくためには「道徳」が必要で、そのためには社会(他者)からの圧力よりも、共同体メンバー自身が自己統制する方が効率がいい。このようにしてすべてのヒトに「良心」が埋め込まれたというのが進化倫理学の標準的な説明だが、これが正しいとすれば、「道徳」や「正義」は無条件によいものではなく、進化の課程でつくられた社会機能のひとつにすぎない。
【ネット上の紹介】
リベラルの定義が問われる今、なぜ戦後リベラリズムはかくも嫌われるのか。実は日本のリベラルは、世界の基準から大きく脱落していた。トランプ現象から安倍政権まで、世界の大潮流から読み解くリベラル再生のための愛の劇薬処方箋。
1 「リベラル」と「保守」が逆転する不思議の国(安倍政権はリベラル
リベラル化する世界)
2 アイデンティティという病(「ネトウヨ」とは誰のことか
正義依存症と愛国原理主義)
3 リバタニアとドメスティックス(グローバルスタンダードの「リベラル」
「保守」はなぜ「リベラル」に勝つのか?)
4 「リベラル」と「保守」の進化論(きれいごとはなぜうさん臭いのか?
リベラルはなぜ金持ちなのか?)
エピローグ サイバー空間のイデオロギー戦争
先日の豪雨で町の中央を流れる肱川の水があふれ、5人が犠牲になった。直前には、上流の野村ダムが雨量に耐えきれず緊急放流をしていた。(朝日新聞2018.7.25)
元・通商産業省(現・経済産業省)官僚による官僚の生態を暴いた作品。
P54-55
これだけ我慢強く、まじめで、勤勉な国民がそろっているにもかかわらず、将来に希望をもてない国になってしまったのは――政治の責任もあるが――やはり官僚の責任が大きい。政治家と違って身分が保証されている官僚は、長期的視野に立って物事を考えられたはずだからだ。それなのに官僚は、将来訪れるであろう問題に対して、なんら効果的な対策を施さなかった。
P208
それにしても、経産省や保安院の幹部は、津波の基準を甘くした責任者である。そんな人間たちの言うことは信じられないし、その責任を問わない大臣も信用できるわけがない。
さらに、電力会社に多くの天下りを送り込んでいる現状を見るかぎり、経産省は電力会社と癒着していると思うのが自然な感覚だ。
【ネット上の紹介】
「霞が関は人材の墓場」―著者はそう切り捨てる。最高学府の卒業生、志を抱いて入省したはずの優秀な人間たちが集う日本最高の頭脳集団。しかし彼らの行動規範は、「国のため」ではなく「省のため」。利権拡大と身分保障にうつつを抜かし、天下りもサボタージュも恥と思わない…。いったいなぜ官僚たちは堕落の道をたどるのか?逼迫する日本の財政状況。政策提言能力を失った彼らを放置すると、この国は終わる。政官界から恐れられ、ついに辞職を迫られた経産省の改革派官僚が、閉ざされた伏魔殿の生態を暴く。
【目次】
第1章 「政治主導」が招いた未曾有の危機(早まった日本崩壊のカウントダウン
テレビドラマ程度の対応策すら実行できなかった政府 ほか)
第2章 官僚たちよ、いいかげんにしろ(発送電の分離は十五年前からの課題だった
原発事故の一因は経産省の不作為にあり ほか)
第3章 官僚はなぜ堕落するのか(改革派から守旧派へ転じた経産省
規制を守ることが使命という「気分」 ほか)
第4章 待ったなしの公務員制度改革(増税しなければ国は破綻するという脅し
官僚一人のリストラで失業者五人が救われる ほか)
第5章 バラマキはやめ、増税ではなく成長に命を賭けよ(ちょっとかわいそうな人は救わない
年金支給は八十歳から? ほか)
「プライベートバンカー」清武英利
私には縁のない「お金持ち」の世界。
富豪のみを対象としたバンカーたちの世界。
シンガポールを舞台にした税金逃れの実態。
非常に興味深く、面白い。(私には関係ないけど)
P261
2千万シンガポールドル以上の資産を持つ外国人が、その資産の半分以上を5年以上、シンガポールで維持することを条件に永住権を取得できるようになった。相続税もキャピタルゲイン課税もないオフショアに住む権利を、カネで買える時代が到来し、日本人富裕層もなだれ込んだ。
P109
「50億円の生命保険があります。税金で半分持っていかれても、25億は残りますよ」
「そんなうまい話があるの?うちはもう外資系の保険に入っているけど、聞いたことないわ」
「あるんですよ。日本のアリコではできなくても、シンガポールではセットできます。日本の生命保険には金融庁の規制があって、死亡保障の最高額は7億円ですよね。しかも、その保証金を得るためには6億5千万ほどのキャッシュを入れないといけません」
「……」
P173-174
コクソウキン(国送金)について
1回に100万を超す国内金融機関への入金や国外金融機関への送金があった場合、日本の税務署はその金額や入送金者名、目的を金融機関に報告させているのだ。
(知らなかった!…)
【おまけ】
証券マンの非情な世界も描かれている。
ここまでして働きたいと思わない。
読んでいて、収入は「そこそこ」で十分、と思ってしまう。
【ネット上の紹介】
ノルマ100億円。顧客は「本物の金持ち」のみ。私たちは知らない。富裕層をタックスヘイブンの国に誘う「カネの傭兵たち」の正体を。彼らが野村證券やメガバンクで鍛えられた辣腕バンカーであることを。彼らに守られた富裕層の逃税術とその不安を。バンカーが実名で明かす本格ノンフィクション!
[目次]
第1章 ニューマネーの国
第2章 ジャパンデスク
第3章 攻防
第4章 海を渡った日本人富裕層
第5章 国税は見ている
第6章 シンガポール・コネクション
第7章 『太陽がいっぱい』
「教誨師」堀川惠子
2014年 第1回 城山三郎賞受賞
教誨師とは、受刑者の精神的救済をする者のこと。
教誨師・渡邉普相の人生を辿りながら、教誨の問題を考える。
彼らは、いったい「改心」するのか?
多くの死刑囚も登場する。
読み進めるに従い、死刑問題を考えることになる。
非常に深い内容の作品だ。
P75
人間にとって、自分が満たされ幸せと感じることが出来るかどうかを測る方法に、分母は「欲望の大きさ」で、分子は「今、自分が持っている量」という話がある。
P84
死刑囚を見ていると、事件が悲惨であればあるほど、その犯人には気が小さい者が多いのは間違いないように渡邉には思えた。彼らは「殺す」ためよりもむしろ、「逃げる」ために人を殺める。
P91
病人には医者がいる。医者が病状を診断し治療してくれる。犯罪者にあるのは法律だ。しかし法律は裁くだけで後々の面倒は見てくれない。
P145
渡邉は、死刑囚の多くが殺人を犯す前に自殺を試みているのは本当に共通しているなと思った。
P266
教誨の「誨」に、「戒」という字は使わない。それは、彼らを「戒める」仕事ではないからだ。「誨」という字には、ねんごろに教えるという意味が込められている。
【ネット上の紹介】
一四歳の夏、渡邉普相は広島の爆心地のすぐそばにいた。そこで見たものは、戦争という人間の愚かさが作りだした無用の「死」だった。後年、教誨師となってから見たものは、人間が法律という道具で作りだした罰としての「死」であった。ふたつの死とともに歩んだ僧侶の人生が語りかけること。
[目次]
序章 坂道
第1章 教誨師への道
第2章 ある日の教誨室
第3章 生と死の狭間
第4章 予兆
第5章 娑婆の縁つきて
第6章 倶会一処
終章 四十九日の雪
「もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない」島田裕巳
P39
現実には、親捨てに近いことは行われている。
それが「世帯分離」という方法である。
世帯分離とは、親と子どもが同居していても、それぞれの世帯に分けることである。
これは主に、介護費用や保険料を節約するために行われている、一種の「裏ワザ」である。
P41
果たして子どもは親を自らの力で介護しなければならないものなのだろうか。仕事や生活を犠牲にしてまで、介護を優先させるべきなのだろうか。
P53
ペットや実験用に使われる動物を安楽死させることは、「殺処分」と呼ばれている。要は、人間の安楽死も殺処分と混同されることがあるので、極力安楽死ということばを使わないというのが、今の風潮なのである。
だからこそ、安楽死の代わりに、「尊厳死」という表現が使われることが多い。
(1976設立「日本安楽死協会」→1983「日本尊厳死協会」と改称された)
「親に先立つ不孝」について
P61
「親に先立つ不幸」と間違って書かれることもあるが、それが親にとって不幸であることも事実である。
P88
実は、墓参りという習俗はそれほど昔から行われていたわけではない。案外、その点は認識されていない。
土葬の時代には、遺体は村の共同墓地に葬られ、そこは、時間がたつと棺桶も遺体も腐ってしまうので陥没する。したがって、そこに墓石など建てることはできなかった。こうした墓を、民俗学の世界では「埋め墓」と言う。
(一部の名家には、「参り墓」が設けられたらしい)
【感想】
知識としては得るものがあるが、親捨てを実践できるかというと、実際は困難。
世間、親戚、人情、モラル…複合的な要素が絡まり合い、縛り付ける。
極端な例が、「介護殺人」「親殺し」なんでしょうね。
【ネット上の紹介】
年々、平均寿命が延び続ける超長寿国・日本。だが認知症、寝たきり老人が膨大に存在する今、親の介護は地獄だ。過去17年間で少なくとも672件の介護殺人事件が起き、もはや珍しくもなくなった。事件の背後には、時間、金、手間だけではない、重くのしかかる精神的負担に苦しみ、疲れ果てた無数の人々が存在する。現代において、そもそも子は、この地獄を受け入れるほどの恩を親から受けたと言えるのか?家も家族も完全に弱体化・崩壊し、親がなかなか死なない時代の、本音でラクになる生き方「親捨て」とは?
[目次]
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
昨日、「離婚」についての記事を紹介した。
本日、「不倫」についての記事を紹介する。(順序が逆?)
「結婚しなければ不倫もない」と指摘したのは上野千鶴子さん。
上野さんいわく、結婚とは「自分の身体の性的使用権を、生涯にわたってただ一人の異性に譲渡する契約」
なぜ不倫をするのか。「結婚は家庭をつくることで、恋愛を続けることではないから」。亀山さんは不倫に賛成も反対もしない。現実にそこにあるのだ。
(朝日新聞、2016.8.30夕刊記事…亀山早苗さんは1000人以上の不倫体験の取材をしたそうだ)
最も多かったのは、40~50代の主婦の不倫だ。更年期を迎え、女としての焦りや孤独をつのらせる。
(私はてっきり、20~30代の女性の不倫が多い、と思っていた)
離婚専門カウンセラー・岡野あつこさん、受けた相談3万件超。
さすがに的確なアドバイスをされている。
話し合う途中で意見が違うのは当たり前だけど、一度決めたことを、後からひっくり返しちゃうのは、決裂につながります。
円満に過ごすポイントは、ほどよい距離感でしょうね。100点を求めない。できないことを責めるのではなく、できたことを褒めてあげる。(ほとんど小さな子に対するような態度だ…byたきやん)
朝日新聞、2016.9.3夕刊記事
「新「ニッポン社会」入門 英国人、日本で再び発見する」コリン・ジョイス
先日読んだ、「ニッポン社会」入門の続編。→「ニッポン社会」入門/ コリン・ジョイス
P14
「くまのプーさん」「ひつじのショーン」と呼ぶのに、どうして「ねずみのミッキー」とは言わないのですか?
P41
ぼくは日本で、自分の仕事を好きだという人に出会ったことがほとんどないが、人々は長時間働くことに対してある種の屈折した誇りをいだいているようだ。不満を口にするその裏側に、ぼくは人々が我慢比べのテストを受けているような感覚を持っているのを、あるいは「自分は必要とされている人間だ」という思いをいだいているのを感じてしまう。イギリスであれば、仕事を好きだという人ははるかに多いが、たいていの人は労働時間は短いほうがいいと思っている。
著者がオックスフォード大学で学んだ時、歴史の先生の言葉
P46
「もっと働こうと呼びかける人たちを頼るような経済モデルは、必ずどこかに誤りがある」
【ネット上の紹介】
日本論なら、この人におまかせ! 10年ぶり、あの快作がパワーアップして帰ってきた。初の著書『「ニッポン社会」入門』で、日本社会の本質を鮮やかに描き出したコリン・ジョイスが、再びその真相に鋭く迫る抱腹必至のエッセイ集。今回も、思いもよらないような発見と磨き上げられたユーモアが満載。東京オリンピックを4年後に控え、ますます増え続ける訪日外国人。異国の生活に戸惑う彼らの心情を知り、自らを省みるためにも最適の1冊。
[目次]
永遠に解けないニッポンの謎
テレホンカードの密やかな愉しみ
はったり利かせて、目指せ「日本通」
ナマハゲに捧げる、ささやかな忠告
外国人をからかうなら、今だ!
「半熟ニホンゴ」の話し方
やっぱり、日本語はおもしろい
ぼくのニッポン赤面体験
ゆるキャラ、侮るなかれ
川べりの優雅な少年たち
二つの国のサッカー、その理想と現実
「モンキー」は、ぼくのヒーロー
お願いだから、ぼくにその話を振らないで
「あまり知られていない」ニッポン
「日本人、変わってる?」
日本は今日も安倍だった
あのとき思ったこと、いま思っていること
知らなかったことだけで、一冊の本になる
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート」 コリン・ジョイス
英国記者による「日本事情」。
日本人なら、当たり前すぎて気づかない点を指摘してくれる。
英国人らしいユーモアあふれる文章を楽しめる。
P15
ぼくは一度、一週間にふたつの記事を提出したことがある。ひとつは日本のセックスレスの夫婦について、もうひとつは「できちゃった結婚」についてだ。デスクはすっかり戸惑ってしまったようだ。「日本人はサカリがついたようにヤリまくっているのか、セックスをしなくなっているのか。いったい、どっちなんだ?」
P37
まず、日本語には気の利いた諺がいくつもある。なかでも、「猿も木から落ちる」は日本語学習者なら誰でも早い段階で学ぶ諺だし、おそらく最も優れた言い回しだろう。初学者でもわかる簡単な単語を用いながら、それをつなげた文全体は、人間には誤りがつきものであることを力強く、かつユーモラスに伝えている。
P49
小便をしようとして便器に近づくと自動的に水が流れ、用を足して便器から離れるとまた水が流れる。もう本能的に笑ってしまった。便器にセンサーがついてるなんて!その後、ばくは日本には「超」がつくほど発達した便器と、信じられないくらい原始的な便器の二種類があると知ることになる。
P140
そもそもイギリスはひとつの国ではない。イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという四つの別々の国から成り立つ連合王国である。イギリス以外の人にはわかりにく仕組みであることは認めよう。しかし、スコットランド人を決して”English”(イングランド人)と呼んではいけない。
【ネット上の紹介】
日本社会について手っ取り早く学びたければ、近くのプールに行ってみることだ。規則と清潔さを愛し、我慢強く、大きな集団の悪事に寛容な国民性が理解できるはずだから。過剰なまでに礼儀正しく親切な人々、思ったより簡単で奥深い日本語、ガイドブックには載っていない名所の数々…。14年間日本に暮らす英紙記者が無類のユーモアを交えて綴る、意外な発見に満ちた日本案内。
[目次]
基礎編―プールに日本社会を見た
日本語の難易度―日本語、恐るるに足らず
おもしろい日本語―イライラ、しくしく、ずんぐりむっくり
日本の第一印象―サムライ・サラリーマンなんていなかった
日本の日常―日本以外では「決して」見られない光景
行儀作法―英国紳士とジャパニーズ・ジェントルマン
独創性―日本人はすぐれた発明家だ
ビールとサッカー―日本の「失われなかった」十年
行動様式―日本人になりそうだ
ジョーク―イギリス人をからかおう
東京の魅力―わが町、東京を弁護する
東京案内―トーキョー「裏」観光ガイド
ふたつの「島国」―イギリスと日本は似ている!?
メイド・イン・ジャパン―イギリスに持ち帰るべきお土産
特派員の仕事―イギリス人が読みたがる日本のニュース
ガイジンとして―日本社会の「和」を乱せますか?
日英食文化―鰻の漬物、アリマス
おさらい―ぼくの架空の後任者への手紙
ゴミ屋敷奮闘記 」村田らむ
人の心を覗き見ることは出来ない。
しかし、その人の部屋を見ることはできる。
それで、どんな方か、およそ解るのではないだろうか?
ごみ屋敷の状態にする住人とは、どんな人物なのか?
私の想定を覆して、フツーの人であった。
身近にいても分からない、ような。
フツーにOLをしていたりする。
しかも、美人であったりする。(家の中はキレイに出来ないけど、外見を整える能力はある、という事だ)
P28
2年間、ほぼゴミ出しはしていないらしいので、その間の生理用品は全部たまっていることになる。そのままだしっぱなしならすぐに乾燥してしまっただろうが、ビニールに入れていたため、いつまでも乾かずに腐ってしまい、臭いを放ち続ける結果となってしまったのだ。
それでも、自分の部屋を「ごみ屋敷」にする、って行為は「フツー」じゃない。
精神を病んでいる、と言える。
以前、「狂いの構造」を紹介した。→「「狂い」の構造」春日武彦/平山夢明
次のような箇所がある。
春日:みんなは100万画素なのにさ、例えば殺人を犯したヤツだけは、なんか70万画素になってる感じ。画質が粗くなってる印象がある。
平山:ああ、それはあるかもしれない。結局、やっぱりある種の感度を鈍らせてるわけでしょう。
春日:そうそう。70万画素で、しかもポツポツとドットが抜けてる。
平山:それは、表に出ちゃうんだよね。やっぱり。
社会生活を営めないほどじゃないけど、ドットが欠けてる人がいる、って事だ。(人の事、言えないけど)
それにしても、ゴキブリが這い回って腐臭を発している部屋に住めるだろうか?
読んでいて気分が悪くなった。
それでも、人それぞれに「事情」はあるのだ。
自業自得なのもあれば、絶句するような悲しい事情もある。
ゴミ屋敷お掃除業者「孫の手」社長のお母さんへのインタビュー
P185
最近一番印象に残っているのは、2人姉妹のお宅でしたね。小さなマンスリーマンションに2人で住んでいて。
お姉さんは25歳で、妹さんは19歳。妹さんは知的障がいがあって仕事は難しいかんじでしたね。
ゴミの質は本当に最悪で、すべてが生ごみという感じ。全部が腐って、とんでもない悪臭が部屋中に漂っていました。
壁にはチャバネゴキブリの群が何百匹も歩いていて……私たちも普段の現場でしょっちゅうゴキブリは見ますからね。1~2匹見たってなんとも思わないですけど、数百匹のゴキブリにはさすがに引いてしまいましたね。(中略)
その姉妹はね、お父さんが娘たちにDVをしてたらしいの。それでお母さんはDVを止めることもなく、他の男と駆け落ちして、その挙句に死んじゃって。お父さんはお母さんが死んだら、姉妹に5千円渡していなくなっちゃったんだって。
【参考リンク】
村田らむ『ゴミ屋敷奮闘記』 (04/03)
代行サービス「孫の手」-ハウスクリーニング
『もんじゅ漂流20年』2015年11月21日朝日新聞記事
高村薫さんのコメント。
走り出したら止まらない。
なぜか。
日本の官僚機構には事業を評価し責任を取るシステムがないからです。
事故から4年以上たつのに汚染水の処理すらできていない。そんな現実が私たちに突きつけているのは、原子力という技術は人間の手に余るということです。
技術と人間の身体感覚の関係でここまでならなんとかなる、という限界を超えてしまった怖さがあります。
「牛と土 福島、3.11その後。」眞並恭介
2015年、第37回 講談社ノンフィクション賞受賞作品。
3.11、原発近くの牛たちはどうなったのか?
放射能まみれの土地で牛を生かし続ける意味は?
P24-25
限界まで給餌を続けた人も、自分の家畜が近所に迷惑をかけないように畜舎に閉じこめて避難所に向かった人も、すぐに帰れると思って着の身着のままで避難した人も、どこかで家畜を助ける手が差し伸べられるのを期待し、国を信じていた。だが、次に国が指示したのは、安楽死という名の殺処分だった。
P73
そもそも避難すべき場所が間違っていた。飯舘村も津島も、放射性物質が飛散した危険な方向に当たっていた。113億もの巨費を投じて開発されたSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)は、全く機能しなかった。
P83
この土地の土が育てた稲は、人と牛で分け合う。牛にとって稲ワラは、食料であり、寝床にもなる。土が育てた草を牛が食べ、牛が排出した糞は堆肥となって土に還る。その土が汚染されてしまった。
牛飼いの村に、人と牛はいなくなり、放射性物質だけが残った。
P132牛飼い・吉沢氏の言葉
「牛飼いなら見捨てないぞ、と餌を運んで世話を続けてきたおれたちは正しいことをしたと思う。けれども、緊急避難時に牛を置いて逃げた農家も、そうするしかなかったし、正しい判断、正しい行動だったんだ。本意じゃなくても、安楽死に同意せざるをえなかったことは間違いない。殺す、殺さないで、うちじゅうが言い争い、だんだん力尽きて、もはやこれまで、とハンコをつくほかなかった。原発事故というのは、そういうことだったんだ。そうやって、牛を埋めた場所があっちこっちにある。いずれは、おれ、慰霊の記念碑をつくりてぇと思うんだけど」
P172東北大学・佐藤教授
「日本人にとって牛は感情的には家族の一員であり、西洋人の考える肉や乳を生産する単なる産業動物ではない」
P187牛飼い・吉沢氏の言葉
「オフサイトセンターの責任は大きい。大熊町のオフサイトセンターは、本来なら原発の事故対応の最前線で対策を講じるべきなのに、果たすべき役割を果たさず、さっさと自分たちが逃げてしまった。最後まで頑張ってみんなを避難誘導しようとしなかったし、浪江町の避難している人のところには、連絡もよこさなかった。僕は一生問うよ。あんたたちは逃げた、腰抜け役所ですよ。それが今さら何を制限するというのか!」
P187同上
「牛たちは生きた証人ですよ。再稼働に抗議する生きたシンボルですよ」
【テクニカルターム】P93
ベクレルは土壌のほか、水道水や食品などの検査に用いられる単位であり、シーベルトは空間線量など、被爆の影響を見るときに用いられる単位である。
【参考リンク】
希望の牧場・ふくしま 公式ブログ - Gooブログ
福島の牛に希望の在りかを訊く(眞並恭介)|ポリタス 3.11から ...
【ネット上の紹介】
東日本大震災から2ヵ月を経過した5月12日、警戒区域内の家畜に対して殺処分の指示が言い渡された。処分を受け入れられない一部の牛飼いは、牛たちを生かすべく力をそそぐ。困難を極める餌の調達、警戒区域への立ち入りをめぐる行政との攻防。やがて、荒れ果てた農地での放牧が、農地の保全、ひいては土地の除染の可能性をもつことが判明し、牛飼いたちは生かされざるべき牛たちが生きる意味を見出していく。
[目次]
安楽死という名の殺処分
警戒区域の牛たち―餓死でも安楽死でもなく
飯舘村の牛たち―人も牛も姿を消した
飛散した放射性物質―土と動物の被曝
放れ牛と牛飼いの挑戦―牧柵の内と外…牛の生と死
ふるさとを遠く離れて―牛の時間と人間の時間
牛が生きつづける意味―牛飼いを支援する研究者
被曝の大地に生きる―家畜と野生の狭間で
帰還困難区域の牛たち―牛が守るふるさと
検問を越えて牛の国へ―牛が教えてくれたこと
牛と大地の時間
「男性漂流 男たちは何におびえているか」奥田祥子
生きにくい世の中である。
それも、男にとって・・・。
男はつらい、のである。
次の5章に分けられている。
(これは他人事ではない)
第1章 結婚がこわい
第2章 育児がこわい
第3章 介護がこわい
第4章 老いがこわい
第5章 仕事がこわい
介護について
P137
同居する親を1人で介護する中年の独身男性たちは、苦悩を共有できる家族がいないばかりか、仕事に大半の時間を費やしてきたため近所付き合いもなく、孤独な無縁介護を強いられている。孤独なだけであれば、まだ自らの力で周囲の人間を頼るなど、明日への道を切り開く方法は残されている。だが、孤立化したケースでは、本人の力だけではどうすることもできない限界点を示しているように思う。
仕事でそりの合わない女性部下をもった中間管理職男性の話
人事考査で低い点をつけて、さらに怨まれてしまう
P187
「それから・・・職場で事あるごとにその部下の女性が私に歯向かうようになり・・・お、思わず、『だから、つべこべ言わずに、指示通りにやれって言ってるだろ!』。そう大声で怒鳴ってしまったんです。昔の営業部時代の癖が出てしまったんですね。総務部に移ってからは控えていたんですが、私が若手の頃は先輩や上司から常に取られていた言動でしたから・・・。そんなやりとりがその後も続いて・・・と、とうとう、彼女からパワハラを受けていると、人事部に訴えられてしまいまして・・・。(後略)」
(結局、この男性は上司から「指導力に問題あり」と査定で最低ランクをつけられ、部署替えもされ、鬱病をになり、退職に追い込まれる・・・成果主義の人事考査も考えものだ。鬱病が増えたのはこのせいか?終身雇用で年功序列・・・その頃が懐かしい)
【ネット上の紹介】
哀しくも愛しい男性ミドルエイジクライシスの真実。結婚できない男、仮面イクメン、介護シングル男子、男だって更年期、リストラ・非正規のバカヤロー…黙して語らず、孤独に葛藤する男性たちに10年密着、その「ホンネ」と「実態」に迫る!!
[目次]
第1章 結婚がこわい(婚活圧力と生涯未婚ラベリング
二〇〇四年の「白雪姫求め男」 ほか)
第2章 育児がこわい(「イクメン」登場
パパサークルの現場 ほか)
第3章 介護がこわい(「ケアメン」―男性介護の時代
悠々自適な「中年パラサイト」 ほか)
第4章 老いがこわい(男性もアンチエイジングの時代
自信が湧く男性更年期治療 ほか)
第5章 仕事がこわい(会社が守ってくれる時代の終焉
考課する中間管理職の悩み ほか)
「職業は武装解除」瀬谷ルミ子
これほど『つぶし』の効かない職業はない。
生活に困らないよう職業を選び、そのために勉強をするのだが、
まったく異なるコンセプトで人生を歩んでいる。
迷いのない、潔い印象を受ける。
――こんな生き方があるのか、と。
方向が決まっていて、一直線に進んでいる。
(本人は手探りだろうけど、結果として一直線)
「世界が尊敬する日本人25人」(『Newsweek日本版』)にも選ばれている。
当然、プロ意識も高い。
P25
同僚からは、紛争地で悲惨な現実に直面しても、感情的にならず淡々としていることが多いとよくいわれる。それは自分の仕事が同情することではなく、人々の抱える問題を解決するために行動することだとつねに思っているからだと思う。
P35
DDRとは何か?
Disarmament 武装解除
Demobilization 動員解除
Reintegration 社会復帰
P35
和平合意が結ばれて紛争が終わっても、それだけで人々が安全に暮らせるわけではない。紛争が終わるということは、兵士にとっては、明日からの仕事がなくなるということだ。
P157
「和解」とは、必ずしも、手と手を取り合い仲良しである形でなくてもよいと思う。たとえ緊張状態にあっても、お互いに争いや暴力を使わずに問題を解決できる状態で共存できているのであれば、それもひとつの平和の形なのだ。日本と中国や韓国についても、和解したかと聞かれて、全員が同じ答えを返さないだろうし、答えは分かれるはずだからだ。
仕事をするうえで、大事にしていることが3つある、と。
P190-192
①想像力、イマジネーションを最大限活用する
②限界まで精神的にへとへとになったときでも、「あと一歩」だけ進んでみる
③人生の岐路や、難しい決断を下すとき、俯瞰して考えるようにする「30年後の自分が今の自分を見ていたら、どちらを選ぶだろう」と。
思った以上に、おもしろく、得るものもあった。
PS
【著者紹介】によると、次のように書かれている。
1977年群馬県生まれ。
中央大学総合政策学部卒業。
英ブラッドフォード大学紛争解決学修士課程修了。
ルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネ、コートジボワールなどで、
国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。
2007年よりJCCP事務局長として、ソマリア、南スーダン、アジア地域などの事業を統活。
現在、認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)理事長、JCCP M株式会社取締役。
専門は紛争後の復興、平和構築、治安改善、兵士の武装解除・動員解除・社会再統合(DDR)など
【おまけ】
読んでいて、栗山 さやかさんを思い出した。
方法論は全く異なるが、芯の部分が同じ、と感じた。
【参考リンク】
紛争地のアンテナ - 瀬谷ルミ子のブログ
瀬谷ルミ子(Rumiko Seya)(seyarumi) - Twitter
プロフェッショナル仕事の流儀 第116回 瀬谷ルミ子
プロフェッショナル仕事の流儀 スタッフブログ 武装解除 瀬谷ルミ子さん
【ネット上の紹介】
紛争地帯で、自分よりも権力のあるものに翻弄される人生を送る人々と、政治家の無責任な発言に不安を覚え、未来が描けなかった自分を重ね合わせた高校時代。でも、私たちは努力さえすれば状況を変えられる社会に生きている―。24歳で国連ボランティアに抜擢され、27歳でアフガニスタンのカルザイ大統領から助言を求められるようになっていた。そのすべては、小さな決意の積み重ねからはじまった。「世界が尊敬する日本人25人」(「Newsweek日本版」)に選出された著者による初めての本。
[目次]
1 群馬の田舎から世界を目指す(生意気だった子ども時代
人生が変わった瞬間 ほか)
2 武装解除の現場に立って(内戦中のシエラレオネへ
子ども兵士は加害者か、被害者か ほか)
3 生きる選択肢を、紛争地の人々へ(壊れた組織を立て直す
紛争とは、平和とは ほか)
4 紛争地での事件簿(自分の身の守り方
ルワンダで銃を持った兵士に脅される ほか)
5 50年後の世界と日本、そして私たち(ボーダーレスな世界に必要なもの
私たちに残された選択肢)