原題:『ボクたちの交換日記』
監督:内村光良
脚本:内村光良
撮影:北山善弘
出演:伊藤淳史/小出恵介/長澤まさみ/木村文乃
2013年/日本
センスが問われる世界
映画好きの内村光良監督らしく、例えば、作品冒頭において帰宅した田中洋平がドアを開けた次のカットが田中が自宅の冷蔵庫のドアを開いているというカットのつなぎ、あるいは甲本孝志が田中が返事を書いてポストに入れてあった交換日記を取り出して読んだところ、ただ「嫌です」という一言しか書いておらず、頭に来てポストを殴る次のカットが田中が働いているツタヤの、返却されて積み上げられているDVDの山が田中の前に崩れてくるというカットの繋ぎ方、または遠くで田中がネタ帳に書き込みをしている場面から突然カメラの手前で宇田川麻衣子を立ち上がらせるところなど、小ネタは効いていると思うが、残念なことにこのような気の利いたカットがその後あまり出てこない。ベッドの上で迫ってくる甲本をビンタで追い払う新谷久美のシーンも悪くない。ストーリーそのものはお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣が指摘しているように予定調和でたいして面白くはないが、原作がつまらなくても脚本が良くて面白くなることは多々ある。本作もラストを変更することにより原作よりも面白くなってはいるが、如何せん上記のようなカットの工夫が不十分で、ロケーションも悪くないだけに残念な結果になっている。俳優としてはベテランであっても主人公を演じた伊藤淳史と小出恵介の漫才は熟れていなくて、やがて解散してしまうお笑いコンビ「房総スイマーズ」を演じているのだから、それは問題無いとしても、それでも少ししか映っていないアルコ&ピースやニッチェの方が面白いと感じるところは努力以上にセンスが問われている世界なのだと思わせる。