原題:『Abschied von gestern』
監督:アレクサンダー・クルーゲ
脚本:アレクサンダー・クルーゲ
撮影:エトガル・ライツ/トーマス・マウフ
出演:アレクサンドラ・クルーゲ/ハンス・コルテ
1966年/西ドイツ
(ヴェネツィア国際映画祭 審査員特別賞)
昨日から決別するために
旧東ドイツのライプツィヒ出身の主人公であるアニタ・グリューン、通称「G(ギー)」は単身で旧西ドイツに渡って、看護婦として生計を立てていたのであるが、同僚のカーディガンを盗んだ罪に問われて、裁判にかけられ執行猶予の判決を下される。象と2人の男の子の物語のアニメーションを挟んで、アニタはホテルの清掃係として働くことになるが、そこでも盗みを働いたとしてクビになり、宿泊先のホテルからも宿泊費未納のために追い出される。やがて知り合った大学生に感化されて、アニタも大学で経済を学ぼうと授業を聴講した後に学生登録しようとするが、担当の教授に具体的に何を勉強したいのか、例えばマックス・ヴェーバーを学んだことがあるのかなど問われ、学歴のないアニタは難しい問いに窮し、プラトンの著書など読んでみるものの進学を断念する。そんな時、役人のマンフレッド・ピショタ部長と出会い、彼の愛人のようにして犬の調教訓練場を一緒に視察するなどするが、結局は、警察に自首し、留置所で暮らすことになる。
正義が上手く機能しない中で、アニタの虚言癖の重要性が問われているようにも思えるが、例えば、主人公のアニタは最初の裁判で、自分の生年月日を1937年4月22日と答えていたが、後半で再び審判を受ける際に、アニタは4月2日と答えている。これがアニタの嘘なのか、字幕を担当した岩渕達治の翻訳のミスなのか、あるいは私の見間違いなのか、とにかく字幕が速すぎて付いていけなかった。
映像は書物からの引用やコマ落としなどの様々なコラージュで構成されており、特に道路を走る車からのコマ落としの映像は『惑星ソラリス』(アンドレイ・タルコフスキー監督 1972年)の東京の首都高速道路の映像よりも早い。ちなみに主人公を演じたアレクサンドラ・クルーゲは監督の妹である。