原題:『相棒SERIES X DAY』
監督:橋本一
脚本:櫻井武晴
撮影:笹村彰
出演:川原和久/田中圭/国仲涼子/関めぐみ
2013年/日本
相棒シリーズで長年のメインキャストだった杉下右京と亀山薫のそれぞれのキャラクターを逆にしたような伊丹憲一と岩月彬がメインを務める本作は、燃えながら落ちていく一万円札のイメージから始まる。その一万円札と共にビルから落下した東京明和銀行に勤務している中山雄吾の死体を巡る捜査は、とりあえず警視庁刑事部長の内村完爾がすするラーメンの麺の上昇のイメージに引っ張られるように、警視庁組織犯罪対策課がヤクザ組織のガサ入れのためにビルの非常階段を上っていく別の捜査に取って代わられる。‘上昇’というイメージが正義の行使として信じられているからであろうが、捜査は行き詰まってしまい、それに異を唱えるのがロンドンに滞在している杉下右京で、片山雛子に電話をしながら杉下は階段から降りてくるのである。朽木貞義を追いかけながら伊丹と岩月はビルの非常階段から降りていくことになり、善悪の区別がつかない中で、伊丹が朽木を逮捕した時には、一万円札が上昇と下降を繰り返しながら舞い上がっているのであるが、それは殺された中山が自宅に所持していた水槽の中で揺蕩っているクラゲが既に体現していたのである。