原題:『十二生肖』 英題:『Chinese Zodiac(CZ12)』
監督:ジャッキー・チェン
脚本:ジャッキー・チェン/スタンリー・トン/エドワード・タン/フランキー・チャン
撮影:ン・マンチン
出演:ジャッキー・チェン/クォン・サンウ/ジャン・ランシン
2012年/香港・中国
国宝の「返還」の難しさ
世界を股にかけるトレジャー・ハンターの主人公JCを演じるジャッキー・チェンの、還暦間近とは思えない相変わらずの身体能力の高さは驚愕に値するのだが、19世紀に中国で起こったイギリスやフランス軍の中国の国宝の持ち出しという事実を基にしたこのフィクションは、ラストのテレビのニュースで、ロシアやエジプトやインカやペルシアの国宝が返還されたというフィクションに加えて、2010年の菅直人首相による閣議決定から、翌年に野田佳彦首相によって韓国に「返還」された朝鮮王室儀軌だけが‘良い話’の事実として記録されることにより、日本人にはあまり楽しめず、寧ろ耳の痛い話になってしまっている。ジャッキー・チェンには悪気は無いとは思うし、実際に、清朝時代の離宮「円明園」西洋楼から1860年の第二次アヘン戦争で英仏軍に略奪された、十二支にあてられた動物のブロンズ像頭部のうち、ネズミとうさぎの像が今年秋頃にフランスの企業「PPR」のフランソワ・アンリ・ピノー会長から中国政府に無償で返還されることになったきっかけ作りとして本作が担った役割は計り知れないと思うが、過去に持ち出された国宝の「返還」はただ返せば良いという簡単な話で済むとは限らない。
おそらく国際的な問題を扱うという意図で、使用されている言語は英語や広東語やフランス語のみならず、多国籍で構成されている海賊の中には日本人もいると思うが、吹き替え版は全員に日本語を喋らせており、だから中国人のココとフランス人のキャサリンの会話がちぐはぐで、フランス語で詩を書いて読んでいるはずのキャサリンの‘日本語’を、広東語に悪意を込めて改訳してメンバーたちに教えているはずのココが‘日本語’で説明しているという不思議な光景を目撃することになる。