原題:『ParaNorman』
監督:サム・フェル/クリス・バトラー
脚本:クリス・バトラー
撮影:トリスタン・オリヴァー
出演:コディ・スミット=マクフィー/タッカー・アルブリジー/ジョデル・マイカ・フェルランド
2012年/アメリカ
怒れる魂の鎮め方
ブライス・ホローという町に住むノーマン・バブコックという少年はテレビでホラー映画を観ることが好きなのであるが、ただフィクションとしての悪霊の話が好きなのではなく、自分の部屋に住みついている亡くなった自分の祖母のみならず、学校に行くまでに様々な死霊と会話をしているために学校では「Freak(異常者)」と呼ばれている。タイトルの「パラノーマン」の‘パラ’は「異常」や「分裂」を示すのであるが、その特異な才能にいち早く気づいていたのが叔父のプレンダーガストだった。ノーマン同様に、一族の変人として扱われていた叔父は300年前に封印された魔女のアガサ・プレンダーガストの魂の怒りを鎮める役目を担っており、街が滅びることを防ぐために叔父はノーマンに自分の役割を継がせようとしていたが、その矢先に発作を起こして帰らぬ人となる。それでも叔父は亡霊となってノーマンの前に現れ、鎮魂のやり方を教えるのであるが、目覚めかけの魔女には既製のおとぎ話でごまかせても、完全に目覚めてしまった魔女には全く本読みの効果がなかった。そこでノーマンが取った行動は既製のおとぎ話を語るのではなく、アガサ(=アギー)の物語を語ることで、彼女の気持ちを理解していることを示すことだった。ノーマンが語るアギーと彼女の母親の物語は、誤解が解けて自分が理解されたというアギーの心の安らぎを生み出すのみならず、さんざん魔女を売りに稼いでおきながら、ただ魔女であるという先入観だけで、魔女にならざるを得なかった過程も知らずにアギーを嫌う街の住民たちに対しても説得力を持つものになるのである。