原題:『だいじょうぶ3組』
監督:廣木隆一
脚本:加藤正人
撮影:清久素延
出演:乙武洋匡/国分太一/榮倉奈々/上白石萌音
2013年/日本
身体と演出の不自由な関係について
2012年4月の松浦西小学校の新学期で5年3組の担任として教育委員会で働く白石優作のサポートを伴ってやってきたのは、手と足のない教師、赤尾慎之介だった。物語は赤尾と受け持ちの児童の一人で、ダウン症の姉を持つ中西文乃を中心として展開する。文乃はダウン症の姉の存在を知られることが嫌で、親友の千葉聡子と一緒に帰宅した時に母親に家でおやつでも一緒に食べるように勧められたものの、テストが近いことを理由に断ってしまう。その後、夏休みに家族で動物園を訪れた際に、姉が象の檻の前で長時間にわたって象の真似をしていたところを他の入園者に笑われたものと思い、2学期から学校を欠席するようになる。それはもちろん文乃の思い込みであり、実際には姉はクッキー作りが得意でとても性格も良く、姉と一緒に父親も象の真似をしたりするなど、文乃の家族は楽しそうで、この場面の文乃の心情が上手く汲み取れなかった。赤尾の不自由な身体が姉のダウン症を連想させたために文乃がストレスを貯めて上履きを隠すという行動を取ったというストーリーの流れは一見もっともらしく聞こえるが、よくよく考えるならばこじつけと非難されても仕方がない。文乃は姉と仲が悪いわけでもなく、一緒に暮らしながら5年生になっているのだから、既に克服していてもよさそうな年齢ではないだろうか。
赤尾慎之介は初日から28人の児童の全員の名前を暗記しており、給食の時間でも自分がどのように食事を取るのか、スプーン捌きを披露するぐらいであり、決して児童たちとの間に溝があるようには感じられない。しかしサッカーをしている男子児童に加わろうとする時に、何故か煙たがられて全員が帰宅してしまうという行動がよく分からないのであるが、食事の仕方を見せた赤尾が自分がどのようにサッカーボールを蹴るのかを示そうともしないことも疑問に思う。赤尾が部屋に貼っている児童たちの「協力するクラス」という集合写真が5年3組ではなくて4年3組のものであることも不思議で、運動会の徒競走でフライングを奨励してしまうような教師の発言にも違和感が残り、結局は、主人公の赤尾慎之介を演じた乙武洋匡の普段の生活が見られる以外に、本作に価値を見出すことが出来なかった。