MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『刑事コロンボ 別れのワイン』

2019-04-03 00:56:54 | goo映画レビュー

原題:『Columbo : Any Old Port in a Storm』
監督:レオ・ペン
脚本:スタンリー・ラルフ・ロス
撮影:ハリー・L・ウルフ
出演:ピーター・フォーク/ドナルド・プレザンス/ゲイリー・コンウェイ/ジュリー・ハリス
1973年/アメリカ

意外と瑕疵が多い一位について

 NHK-BSプレミアムで放送された「あなたが選ぶ!思い出のコロンボベスト20」は「別れのワイン(Any Old Port in a Storm)」が一位に選ばれたのだが、ストーリーにどうも納得しかねる部分がある。
 ワインを巡る洒落たストーリー展開は原題も洒落ている。そもそも「Any Port in a Storm」とは「窮余の策」という意味で、この慣用句の「Port」とは港を指しているのだが、ここでは「Old Port」として古いワインという意味もかかっているのである。あるいは犯人のエイドリアン・カッシーニを演じたドナルド・プレザンスの名演など素晴らしい点は多々あるのだが、そもそもエイドリアンが腹違いの弟のリックの殺害方法があやふやなのである。
 頭部を殴打して意識が朦朧としているリックをエイドリアンはワインセラーに運んでいき、両手足を縛り、空調を止めてそのまま立ち去ってしまうのだが、あれほどワインの品質に関してうるさい男が空調を止めてしまうというのも理解に苦しむし、空調を止めることで酸素が無くなるわけではないだろう。

 一週間ほど仕事でニューヨークに行って帰ってきてから、ワインセラーを見るとリックは死んでいるのだが、その死に様が奇妙なものである。

 ワイン樽の横にあった大きな駕籠を頭と足にかぶって死んでいるのである。何故このような死に方をしたのか無理して勘案するならば、意識が戻ったリックが暴れたからだろう(エイドリアンが駕籠を被せてリックが死ぬと考えるとは思えない)が、そうなると鍵がかからないドアからリックは脱出できたはずなのである。

 そもそもワインセラーにたくさんあるこの駕籠が何なのか分からない。コロンボがドアに鍵がかかるかどうかを確かめた際に、このワインセラーから45年ものの「フェリエ・ヴィンテージ・ポルト(1945 vintage Ferrier Port)」を「拝借した」と最後に告白するのだが、コロンボがそのワインを持ち出したようには見えない。

 個人的には、現在の医学的観点から見るならば脳の動脈瘤に対する誤解があるものの、第三位だった『忘れられたスター(Forgotten Lady)』が最も良かったと思う。


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