MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『傀儡』

2023-10-11 12:57:29 | goo映画レビュー

原題:『傀儡』
監督:松本千晶
脚本:松本千晶
撮影:杉本康貴
出演:木口健太/二階堂智/石崎なつみ/戸田昌宏/保田あゆみ/石井啓太/泉水美和子/牛丸亮/伊藤慶徳/谷川昭一朗/渋川清彦/烏丸せつこ
2018年/日本

「傀儡」を巡る物語について

 高校時代に父親と一緒に謎の転落死で恋人を失っていた主人公の藤真翔平は12年後、新聞記者として活躍していたのだが、同僚が昔のその事件を調べることを知り、編集長に文句をいったら藤真本人がその任を託されてしまう。
 久しぶりに故郷に帰ると恋人の早弥子の母親の柳井波絵と妹の柊子は、藤真が早弥子を殺した犯人だと思っていた志田要一が柊子の家庭教師という名目で何故か2人と一緒に暮らしていた。柳井親子の計らいで藤真も一緒の家にしばらく滞在することになるのだが、藤真は志田が暮していた家にガラスを割って侵入し、そこで早弥子が志田に貸していた本『車輪の下』を見つけるのだが、それでは証拠にはならない。実際に藤真も早弥子から『異邦人』を借りていたからだ。
 志田要一は村の人間ではなかった。要一は子供の頃、画家だった父親の一義からモデルにさせられ我慢する表情をさせるという口実で裸で氷水に入れられるという虐待を受けていたことから、精神を病んでいたのだが、早弥子の父親の柳井辰巳の世話で村人として認められていた。
 実は早弥子はまだ墓に入れられておらず、一部屋を早弥子の仏壇のようにして使っていたのだが、誰にも気づかれないように藤真がその箱を開けると中には何もなかったあたりから、時空がおかしくなってくる。
 この物語のオチを書いておくならば、実は早弥子は藤真の子供を宿しており、それを知った要一が堕胎の費用を作ろうと家にあった絵画を売ったのだが、小さな村であるが故に買い手が父親の辰巳に告げ口したことから、辰巳が帰宅途中の早弥子と口論になった際に、弾みで早弥子はガードレールから川に落ちてしまうのである。その直後に車で二人のもとに着いた要一が怒りで辰巳を川に落とした後に、早弥子を川から引き上げて、その後は消防隊たちが現場で救助している、何度も流れるシーンに至るのである。
 つまり恋人の転落死の発端を作ったのは藤真であり、だから同僚が調査することに難色を示していたのであるが、最後は同じ現場で要一に殺されたのである。
 ところでタイトルの「傀儡」の意味は「自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用される者」なのであるが、ここでは藤真のみならず、柳井波絵と柊子の親子も、あるいは子供の頃の要一も傀儡だったはずだが、「車輪の下」を脱した者が「異邦人」を成敗したといったところだろうが、説明不足とセリフの不鮮明さで損をしていると思う。


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