MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『唐人街探偵東京MISSION』

2022-06-20 00:56:15 | goo映画レビュー

原題:『唐人街探案3』 英題:『Detective Chinatown3
監督:チェン・スーチェン
脚本:チェン・スーチェン
撮影:杜杰
出演:ワン・バオチャン/リウ・ハオラン/妻夫木聡/トニー・ジャー/長澤まさみ/三浦友和
2021年/中国

笑えない「チャイニーズ・ジョーク」について

 アメリカン・ジョークならぬ「チャイニーズ・ジョーク」というものがあるのかどうか寡聞にして知らないが、例えば、「東南アジア商会」の会長であるスーチャーウェイの遺体が安置されている東京中央総合病院で気絶させられて間違って納体袋に入れられた当直の看護婦が運ばれたエレベーターの中、袋の中で目覚めて動いたことで乗り合わせていた黒龍会のメンバーたちにボコボコにされるシーンは笑えなかったし、タイの探偵ジャック・ジャーを襲う剣道着を着た刺客もボコボコにされており、小林杏奈を演じた長澤まさみは好演していたが、幼少の頃に首にあったアザは大人になれば薄くなってしまい、それを見て杏奈が自分の実の娘であることが分かったという渡辺勝の証言にリアリティを感じないのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-83370


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『ノイズ』

2022-06-19 00:59:02 | goo映画レビュー

原題:『ノイズ【noise】』
監督:廣木隆一
脚本:片岡翔
撮影:鍋島淳裕
出演:藤原竜也/松山ケンイチ/神木隆之介/黒木華/余貴美子/柄本明/永瀬正敏
2022年/日本

真犯人の動機の弱さについて

 愛知県の猪狩町という離島で黒イチジクで町おこしをしようと企てる主人公の泉圭太に、成功すれば5億円という特別地方交付金もかかっているために町長の庄司華江を初め町挙げて圭太の事業を応援することになるのだが、そんな時に保護司の鈴木賢治が幼女誘拐の前科を持つ小御坂睦雄を連れて圭太に働き口を世話をしてもらおうとやって来る。
 ところが車で島に到着すると小御坂は背後から首を絞めて鈴木を殺してしまい、その後、小御坂はビニールハウスで圭太ともみ合っている最中に頭を打って死んでしまい、親友で猟師の田辺純と地元の警察官で後輩の守屋真一郎と共に小御坂の死体を巡ってストーリーが展開していく。
 鈴木に対する捜索願をきっかけに畠山努と青木千尋が猪狩町に乗り込んできたことで、それまで平和だった島が騒がしくなってくる。
 何故鈴木が小御坂の就職先となる圭太に事前に連絡を入れなかったのかという理由を置いておいても、詳細は避けるが「真犯人」の動機が弱いように思う。例えば、圭太たちが若い頃に大きな海難事故で彼らは父親を亡くし、その頃に圭太の妻となる加奈が「別の人」と交際していたならば、もっと説得力があったように思うのである。
 因みにこの物語は2022年10月の出来事である。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-123885


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『truth~姦しき弔いの果て~』

2022-06-18 00:58:12 | goo映画レビュー

原題:『truth~姦しき弔いの果て~』
監督:堤幸彦
脚本:三浦有為子
撮影:唐沢悟
出演:広山詞葉/福宮あやの/河野知美/佐藤二朗
2021年/日本

「キャット」よりも「真実」にこだわる作品のつまらなさについて

 中卒の元ヤンのシングルマザーの栗林マロン(真論)、タワマンセレブの産婦人科医師の小林さな(真)、美貌の受付嬢の九条真弓の三人が亡くなった男性を巡ってバトルを繰り広げるワンシチュエーション・コメディー作品である。
 「キャットファイト」を興奮しながら観る趣味はないものの、前半はそれなりに楽しめたのだが、後半になって「精子バンク」の話になったあたりから急にマジメな雰囲気になって面白くなくなる。小林さなは自分が使うつもりで男性の精子が入った注射器を持ってきていたはずなのに、カバンには3本の注射器が用意されている時点でオチが見えてしまった。例えば、『007』シリーズならばもう一波瀾あったはずで、一本の注射器を3人で奪い合っている最中に、注射器が飛んで、男性が飼っていた猫の陰部に刺さったくらいのギャグがあっても良かったように思うのだが、ラストは男性の観客に対するサービスでないのならば監督の趣味なのかもしれない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-107208


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『わたし達はおとな』

2022-06-17 00:55:41 | goo映画レビュー

原題:『わたし達はおとな』
監督:加藤拓也
脚本:加藤拓也
撮影:中島唱太
出演:木竜麻生/藤原季節/菅野莉央/清水くるみ/森田想/桜田通/山崎紘菜/片岡礼子
2022年/日本

時系列を歪めることによる「後悔の念」について

 本作はそのナチュラルで迫真にせまる描写が高く評価されているようだが、むしろ主人公の優実と直哉の交際時期の、時系列に則らない編集こそ本作を見応えのあるものにしているように思う。
 例えば、優実が直哉に妊娠したことと、子供の父親が直哉ではないかもしれないと言ったことに対して、当初は理解を示すものの、その後やはり生む前に子供のDNA鑑定を勧めるという直哉の発言のブレは、その後に描かれるように直哉は元カノの伊藤に堕胎させている経験があるからだということが分かる。
 あるいは唐突に優実は母親を病気で亡くし、駅前で待っていた父親と車で実家に戻ると母親の亡骸を目にすることになる。葬儀を済ませると父親に急かされて優実は大学に戻るまでのシーンが描かれた後、しばらくして再び実家のシーンが映り、母親が入院するために荷物をまとめているところを優実は目撃するのだが、母親の様子を見てそれほど重症だと思っていなかった優実は二度と会えなくなるとは夢にも思わずにそのまま出かけてしまうのである。
 つまりこの特異な演出は私たち観客に登場人物と同じように後悔の念を抱かせるように仕組まれているのである。
 この「逆再生」には『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督 2022年)には見られない細かな意図が感じられる。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_67594


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『ちょっと思い出しただけ』

2022-06-16 00:52:15 | goo映画レビュー

原題:『ちょっと思い出しただけ』
監督:松居大悟
脚本:松居大悟
撮影:塩谷大樹
出演:池松壮亮/伊藤沙莉/河合優実/尾崎世界観/國村隼/永瀬正敏
2022年/日本

「ちょっと混乱しただけ」の演出について

 主人公はダンサーとして活動していたが怪我のために今は劇場の照明を担当している佐伯照生とタクシードライバーとして働いている野原葉で、二人が過ごす照生の誕生日である7月26日だけを6年間描いているのだが、演出はトリッキーで2021年7月26日から「逆流」していくのである。
 例えば、『余命10年』(藤井道人監督 2022年)において主人公の高林茉莉が病室で真部和人と一緒に撮っていたハンディカメラの映像を新しいものから順番に消去していくシーンがあるのだが、それならば違和感もなく秀逸な演出と見なせるだろうが、本作の「逆再生」はただ単に奇をてらったようにしか見えない。
 しかしいまどき珍しいフライヤーの数の多さは評価したいと思う。

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-126533


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『余命10年』

2022-06-15 00:57:18 | goo映画レビュー

原題:『余命10年』
監督:藤井道人
脚本:岡田惠和/渡邉真子
撮影:今村圭佑
出演:小松菜奈/坂口健太郎/山田裕貴/奈緒/井口理/黒木華/田中哲司/原日出子/松重豊
2022年/日本

恋人に本音を明かさないヒロインについて

 なかなか批判しづらい題材を扱った作品ではあるが、敢えて指摘しておきたい。
 冒頭から中頃までは問題はないものの、主人公の高林茉莉と真部和人が交際(?)するようになり、2人で泊りがけでスキー場を訪れるのだが、どうも2人の言動があやふやで、例えば、二人でそりに乗っていて転んだ拍子に和人が白い箱を落としてしまい、それを茉莉に見られてしまう。中身は指環だったのだが、和人のプロポーズに茉莉は「カッコ悪かったからダメ」と言って拒絶するものの、その夜、二人はベッドを共にするのである。しかし「ベッドを共にする」という表現も正確ではなく、二人は最後までしたのか描写はされておらず、ただ茉莉が風呂場で泣いているシーンが挟まれ、翌日早朝に茉莉が和人に黙って帰ろうとし、その時初めて和人は茉莉の余命が10年であることを知る(医師に宣告されて既に6年経っている!)のだが、和人は納得して(?)二人は別れてしまうのである。
 ここまでの2人の感情の在り方がぎくしゃくしていると思う。一番の問題は何故茉莉が和人に対してそこまで頑なに病気のことを伏せていたのかということである。病気のことを言って和人にフラれるならば仕方がないが、それでも付き合ってくれると和人が言うならばその愛を素直に受け入れるべきだったのではないだろうか?
 最後に二人とも結婚して子供を持つ夢が描かれており、もしかして茉莉の選択は間違っていたというニュアンスが込められているならば、それはそれでなかなかの作品ではある。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-129041


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『きさらぎ駅』

2022-06-14 00:48:11 | goo映画レビュー

原題:『きさらぎ駅』
監督:永江二朗
脚本:宮本武史
撮影:早坂伸
出演:恒松祐里/佐藤江梨子/本田望結/莉子/寺坂頼我/木原瑠生/芹澤興人/堰沢結衣/野口雅弘
2022年/日本

ロールプレイングな映画について

 基本的にはホラー作品なのだろうが、永江監督の前作『真・鮫島事件』(2020年)よりもエンタメ感が増したように感じる。
 一人称視点で描写される前半で不思議な体験をした葉山純子から内容を聞いた主人公の堤春奈が実際に試みてみる後半で次々と伏線を回収していく感じが心地いいのだが、この「復讐譚」の終わらないのかもしれないループをはっきりさせるためには、ラストで列車内で眠り込んでいる春奈が目覚めて、そこに現れた相手を見て微笑むシーンがあった方がいいような気もする。
 ところで七年後に発見されるという設定はストーリー上に何らかの効果があるのだろうか?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1072216


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『真夜中乙女戦争』

2022-06-13 00:56:44 | goo映画レビュー

原題:『真夜中乙女戦争』
監督:二宮健
脚本:二宮健
撮影:堤裕介
出演:永瀬廉/池田エライザ/篠原悠伸/安藤彰則/山口まゆ/佐野晶哉/成河/渡辺真起子/柄本佑
2022年/日本

「セカイ系」の組み立て方について

 いわゆる「セカイ系」と呼ばれる作品である。先輩たちとの関係の良し悪しによる主人公の「私」の心情が、そのまま「世界」に反映されるのであるが、「私」と先輩である女性の関係がフランスのヌーヴェル・ヴァーグを想起させ、『ウルトラセブン』の最終話「史上最大の侵略 後編」の有名な、シューマンのピアノ協奏曲をBGMに、アンヌ隊員と彼女に告白するモロボシ・ダンの二人のシルエットによる演出をオマージュしたような映像も素晴らしく、ビリー・アイリッシュの主題歌も良い味をだしていると思う。以下、和訳。

「Happier Than Ever」 Billie Eilish 日本語訳

私があなたと別れてから
私は今までになく幸せ
もっと上手く説明できれば良いんだけれど
これが現実でなければ良かったのに

気の利いたことを考えて
自分自身に宛てて手紙を書いて
私が何をするべきか伝えるために
二、三日は欲しい
私のインタビューを読んだの?
それともあなたは私の目標への達成手段は読み飛ばすの?
あなたが通りがかったと言った時
あなたの道筋に私はいたの?
私があなたに言うことを冷静に聞いてとあなたに頼んだ時に
あなたは言うこと成すこと逆だったから
私はさらに怖くなって止めてしまった
「ふざけるな!」なんて言わないで
あなたが私に惨めな思いをさせていることが
あなたにはよく分かっていなかった
もっと理解したいと思ってくれればよかったのに

私があなたと別れてから
私は今までになく幸せ
もっと上手く説明できれば良いんだけれど
これが現実でなければ良かったのに

またあなたは
自分のベンツの中で飲んでいると電話をしてくる
酔っ払って家に向かって運転していると
あなたは私を死ぬほど私を脅かしたけれど
私がとやかく言って無駄なのよ
だってあなたは質の悪い友人たちの言うことしか聞かないから
私はあなたと関わらない
私はあなたとの関係を断ちたい
だって私は決して自分自身を粗末に扱わないから
あなたのせいで
私はこの街が嫌いになってしまった

私はネット上であなたの悪口は書かないし
誰に対しても酷いことは決して言わなかった
だって悪口が恥ずかしいことだし
あなたは私の全てだったのだから
あなたがしたことは
ただ私を悲しませることだけだった
だから私の時間を無駄にしないで
私の気分を落ち込ませようと頑張らないで
あなたが時間通りに現れたならば
私はいつでも話し合うことができたけれど
あなたはメールもくれなかった
だってあなたは何もしなかったし
私の母親や友人たちを一顧だにしなかったから
私はあなたのために全てを断ち切った
私はただの子供だったのよ

あなたは良いもの全てを台無しにした
あなたは誤解しているといつも言っていた
人生の全てをあなたに費やしたのに
もう私のことは放っておいて!

Billie Eilish - Happier Than Ever (Official Music Video)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-106992


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『トップガン マーヴェリック』

2022-06-12 00:46:51 | goo映画レビュー

原題:『Top Gun: Maverick』
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:アーレン・クルーガー/エリック・ウォーレン・シンガー/クリストファー・マッカリー
撮影:クラウディオ・ミランダ
出演:トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル
2022年/アメリカ

「クリシェ」をぶち壊す力技について

 例えば、主人公のピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐と、今は亡き友人のニック・“グース”・ブラッドショウ海軍中尉の息子のブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ海軍大尉との葛藤というメインストーリーは大ヒット作にはよくあるストーリー展開で、ロッキー・バルボアがかつてライバルだった亡きアポロ・クリードの息子のアドニスのトレーナーになる『クリード チャンプを継ぐ男』(ライアン・クーグラー監督 2015年)でも見られたお決まりの物語ではあるとしても、それでも見応えがあるのはやはり観客と戦闘機のパイロットの「体勢」がリンクしてしまうからだと思う。
 レディー・ガガが担った主題歌「ホールド・マイ・ハンド」を和訳しておきたい。

「Hold My Hand」 Lady Gaga 日本語訳

あなたが私のことを必要だと私に示すために

私の手を握って欲しい
全てが上手く行くはず
ずっと灰色の雲が覆っているという
天国からの知らせを聞いたの
私を引き寄せて
私をワクワクさせるあなたの腕で包んで欲しい
あなたが心を痛めていることは分かるのよ
何故こんなに時間をかけることになったの

あなたが私のことを必要だと私に言うために?
あなたが血を流していることは分かるから
それ以上私に見せる必要なんかないけれど
もしもあなたが決心するならば
私はあなたと一緒にこの人生を歩んでいくつもりなのよ
最期まで手放さないわ

だから今夜は泣いてもいいけれど
私の手は離さないで欲しいの
あなたは涙が枯れるまで泣くことができる
私は全てを把握するまでどこにも行かない
私に約束して欲しい
私に手だけは離さないで欲しいの

顔を上げて
私の希望の溢れた目をみつめて欲しい
あなたが心の中に抱える恐怖は消え去るから
時間をかけるのよ
今のあなたは全てに対して盲目であることが私には分かる
あなたの祈りはどれも報われるわ
神様に囁かせるのよ

あなたが私のことを必要だと私に言う方法を
あなたが血を流していることは分かるから
それ以上私に見せる必要なんかないけれど
もしもあなたが決心するならば
私はあなたと一緒にこの人生を歩んでいくつもりなのよ
最期まで手放さないわ

だから今夜は泣いてもいいけれど
私の手は離さないで欲しいの
あなたは涙が枯れるまで泣くことができる
私は全てを把握するまでどこにも行かない
私に約束して欲しい
私に手だけは離さないで欲しいの

私の手を取って
私の手を握って欲しいの
私はすぐそばにいるから
私の手を握って欲しいのよ
私の手を取って
私の手を握って欲しいの
私はすぐそばにいるから
私の手を握って欲しいのよ

あなたが怯えていることは分かっている
あなたの心痛は続いているけれど
あなたは自らもうダメだと見切りをつけてはいけない
ある少女から話を聞いたことがある
彼女は一度私に言ったのよ
私はまた幸せになれるって

私の手を取って
私の手を握って欲しい
私の手を取って
私の手を握って欲しいの

私は天国からの知らせを聞いたの

Lady Gaga - Hold My Hand (From “Top Gun: Maverick”) [Official Music Video]
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/bikenews/entertainment/bikenews-257727


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『オフィサー・アンド・スパイ』

2022-06-11 00:40:30 | goo映画レビュー

原題:『J'accuse』 英題:『An Officer and a Spy』
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロマン・ポランスキー/ロバート・ハリス
撮影:パヴェル・エデルマン
出演:ジャン・デュジャルダン/ルイ・ガレル/エマニュエル・セニエ/グレゴリー・ガドゥボワ
2019年/フランス・イタリア

「真実と正義」で作られる映画について

 舞台は1894年のフランス。作品の冒頭はユダヤ人の陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を宣告されるのだが、このシーンが当時描かれた挿絵を忠実に再現しており、それのみならず本作は当時フランスで主流になっていたマネやロートレックなどの印象派の作品をモチーフに取り入れており、監督の本気度が伺えるのだが、冒頭で「本作は史実に基づく」と断ってはいるものの、かなり脚色していることは知っておいた方が良いと思う。実際に作品前半は諜報部に配属されたばかりのジョルジュ・ピカール大佐が上層部とドレフュスが書いたとされる密書の筆跡鑑定を巡る攻防なのだが、DNA鑑定とは違い、どうもグダグダで、それはもちろん作品の問題ではなく、当時の捜査がグダグダなのである。
 ところで個人的には本作の肝はラストシーンにあると思う。1907年に陸軍大臣を務めているピカールの下にドレフュスが訪ねてくる。軍に対する奉公に対して自身の中佐という階級は低いのではないかという問いに対して、大臣という立場にいるピカールは以前敵対していた相手とも協力しながら国を治めなければならないので無理に規則は変えられないと断るのである。それを聞いたドレフュスは、「ドレフュス事件」で一番得をしたのはピカールだと言うのだが、ピカールはただ真実と正義のために仕事をしただけだと応じるのである。このピカールの言葉は少女への淫行容疑で1977年に有罪判決を受けて、釈放後にアメリカからパリへ移住したポランスキー自身の言葉のように聞こえる。ポランスキーもまた「真実と正義(ところで何の?)」のためにクオリティーの高い作品を生み出しているはずだからである。
 
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/bikenews/entertainment/bikenews-259052


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