青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

三セクが 分かつ国境 雨と晴れ

2016年01月15日 23時39分27秒 | ローカル私鉄

(大屋根の下のホーム@直江津駅)

鉄道の街・直江津が誇るB級グルメ、つかそばこと塚田そば店を辞し、再び子供と雨の直江津駅に戻ります。ここからは旧信越山線の旅、昨年は三セク転換前のギリギリに訪れてその去り行く光景を切り取りましたねえ。行き交う列車は変わっても、どっこいホームの大屋根だけは雪国の駅らしくどっしりと。古レールを曲げ、角度を付けた屋根を乗せたシンメトリカルなスタイルで私たちを迎えてくれました。

  

ちょっと前までは115系天国だった上信越地区ですが、「妙高はねうまライン」に変わってからはE127系が来るようになったんですね。以前は生息地域が新潟近郊のローカル短区間運用みたいなイメージでしたけど…13:14発の妙高高原行きは、糸魚川方面からの列車の接続を受けての発車。こちらに至ってはJR西の521系っぽいデザインのディーゼルカー。電車のデザインをそのまま気動車に持ち込むなんて、東海のキハ25のマネをしなくてもよかろーもん(笑)。旧北陸本線の「日本海ひすいライン」を走る車両が架線があってもディーゼルカーなのは、途中にある糸魚川付近の交直切り替えに対応する電車を作るのは乗客の流動数から考えて高コストに過ぎる、と言う割り切った結論に寄ります。


直江津から高田、上越妙高から新井にかけては上越平野の都市部を走るため、結構な乗車率で走っていくE127系の2連。特に地元の高校生の利用が目立ちます。ジャージとバッグを見ると県立新井高校みたいですね…引田天功の後輩か。新井で乗客の8割方を降ろした電車は身軽になって信越国境への坂道を登り始めますが、車内は暖かいし、お腹も一杯だし、朝も早いしで子供がウトウトし始める(笑)。しかしながら、そんな子供を容赦なく叩き起こして二本木のスイッチバックをしっかり見学させる鬼のような父親なのであったw

 

妙高高原で反対ホームに停車していたしなの鉄道の長野行きにお乗り換え。しなの鉄道色を身に纏ってはおりますが、こちらは勝手知ったる115系。そしてほどほどにガラガラでいい感じです。正直な話ですが、別に妙高高原で乗客の流れが変わる訳でもないので長野~直江津間は列車を直通させるべきだと思うよ…。三セクの縦割りと言ってしまえばそれまでだけどさあ。


妙高高原を出た列車は、関川の谷を詰め雪の黒姫へ。それでもまだこの時期の黒姫で線路の下のバラストが見えているんだから今年の冬将軍と言うやつはてんでやる気がない。そして古間、牟礼、豊野と鳥居川に沿って斑尾の南麓を降りて行くうちに、長野盆地ではすっかり晴れ上がっていたのでした。あら、いい天気。


長野駅到着。善光寺御開帳と北陸新幹線開通に合わせて改築され、とってもキレイになりましたねえ。凄く個人的な話なんですが、長野に来るとサマランチ会長の「ナガ~ノ?」というオリンピック開催地発表の際の独特なイントネーションをいつも思い出してしまいます。もうあれから18年ですか…。ちょっときれいになった長野駅の中でもブラッとしてみたいけれど、先に用事もありますのでとっとと地下に降りてしまいますよ。長野の駅で地下ってーともうアレしかないのですけど、とりあえず次回へ続く。
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心象風景

2015年08月11日 15時11分07秒 | ローカル私鉄

(夏へ飛び込む@わたらせ渓谷鉄道)

夏休み前半戦、後半戦は自分でエンジョイ(笑)してしまうので、子供を連れてわ鐡(わたらせ渓谷鉄道)に行って参りました。関東近郊での乗り物もだいぶこなして来てしまっているのですが、この三セクは初参戦だなあ。国鉄旧足尾線の転換路線であり、群馬県の桐生から渡良瀬川の渓谷沿いに栃木県の間藤まで約45km弱の路線ですが、開通は官営鉄道の時代の明治44年(1911年)だから歴史は相当古い。それもこれも古河財閥によって開発された足尾鉱山から産出される銅を運搬すると言う重要な使命を持って敷設された路線で、国策に沿った鉄道だったと言えますかね。

 

本来であればフリーきっぷでも購入して始発駅の桐生からその歴史をじっくり辿るべきなのでしょうが、今日は子供優先なのでトロッコ列車の始発駅である大間々駅までクルマで。桐生駅に入れないのはたぶん牽引するDE10の機回しの関係かと思われる。トロッコ列車は大間々駅の旧貨物ホーム?と思しき0番線に最後尾の客車を1両ホームに引っかけて停車しており、改札を済ませたお客はそっから乗り降りをする仕様なので編成全体の写真が撮れないのが難だな。

  

わ鐡のトロッコ列車はDE10+12系客車+トロッコ+トロッコ+12系客車の4両編成。12系客車は控え車のようになっていて、基本的にトロッコ部分の席数しか乗車整理券は発券しないようだ。まあトロッコ列車に乗りに来て12系でカンヅメになってもつまらんから、これは雨風凌ぎ用のスペース兼物販スタッフの控室と言う側面なんだろうね。上州の夏は暑かれど、さすがに走り出せば渓谷の風が抜ける車内。小さなトンネルには一時の涼があってよござんすな。まあお父さんは家族写真を撮ったり物販のグッズを子供に買い与えたりであまり車窓を楽しめていないのだがw

  

トロッコ列車の終点の足尾まで乗ると1時間半近くかかるので、途中の神戸駅で下車。ちなみにこのトロッコ車両は元京王5000系の中間車を京王重機で改造したトンデモ車であり、全く面影がないと見せかけて妻面だったり車番のレタリングには薫り高い京王イズムが残っていて京王5000系好きとしては高まりますなあ。ただし京王の車両って馬車軌道の軌間だからどっかに出すと基本的に台車が取っ換えられちゃうのは寂しいよね。京王5000ってスマートな台車も魅力の一つだったんで。

  

そして神戸駅と言えば元東武DRC(1720型)の中間車を利用したレストラン「清流」。子供にわ鐡乗りに行く話をしたところ、真っ先に「東武の電車のレストランに行きたい!」と言い出したくらいなんで有名なんでしょう(笑)。子供は某日テレの某鉄道BIGなんちゃらの番組が大好きなので、あそこからこういう地方私鉄や三セクの小ネタをちょいちょい拾って来る。あの番組、取り上げ方はどうあれ全国ネットで地方鉄道に光を当ててくれる企画と言うのは現場の人間にとって格好の宣材じゃないかなあと思ったり。


とりあえずDRCの車内できのこカレー。本当は群馬名物ソースかつ丼が食いたかったのだが売り切れとか言われてしまった…この日は別の車両に団体がガーッと入ってるからメニュー絞られたかな。カレーの味はまあ人並み。きのこの入ったカレーだねと言う以外の感想はない(笑)。あと値段の割に量が少ないな~。4回5回スプーン動かしたら食い終っちゃうよ。あくまで観光地の食事処と言うクオリティと値段とお考えいただかないとひょっとしたらご納得なさらない御仁ももいらっしゃるかもしれません、という感じ。子供は大好物の肉うどんを憧れの「清流」で食べてご満悦。日本の鉄道からほぼ一般的な食堂車が消えてしまった今、このような「列車の中で疑似食堂車体験」的なアトラクションもありっちゃーありなのかもしれん。北斗星のグランシャリオとかトワイライトのダイナープレヤデスをゴチしてやるほどの甲斐性がなかったお父さんを許してほしいw

 

大間々へ戻る列車を待つ間、しばし神戸の駅にて子供と戯れる。木造平屋、渋焦げの板塀、トタンの庇。いい駅舎だね。お父さんこういう駅が好きなんよと言ったら子供に「ぼろぼろじゃん!」と罵られる。そりゃー子供の頃はお父さんだって新しいものが好きだったよ。でもね、歳取って来るとこういうものが良くなってくるのよ。お前さんに分かってもらうにはまだまだ時間が必要だあね、と言いながらボロボロの駅舎を写真に収めるのでありました。


この風景がボロボロに見えるか、郷愁を帯びて見えるか、その境目ってどのくらいの年齢で来るんだろう。まあ一生ボロボロに見える人もいるかもしれないけど、少なくとも子供が大人になった時、その時に子供の子供に見せてあげられる風景として残っているかは何の保証もない。だからボロボロと言われようとお父さんはこの風景を見せておく。夏の陽射しに照らされた田舎の小駅。こんな風景が心象に残っていれば、きっと鉄道を好きでいてくれるのではないかと思うから。
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変わり過ぎたその姿

2014年07月21日 22時14分00秒 | ローカル私鉄

(美味い、美味いよ吉田のうどん@くれちうどん)

この三連休は天気がどうにも、と言う事なれど、家でウジウジしていてもしょうがないので家族を連れて出掛けてみる事に。一定の期間で何だか無性に食べたくなるのが吉田うどん、いつも使っている富士急行線寿駅近くの「くれちうどん」で肉つけうどん大(600円)。揚げ玉たっぷり、すりだね(唐辛子)たっぷり、キャベツのシャキシャキとコシと言うものの向こう側に行ってしまったぶっといガチガチ麺。美味いですよねえ。

 

大量の小麦粉で腹が一杯になったところで富士山駅へ。相変わらずその名称に違和感があるのだが…富士吉田ですよね。リニューアル後は初めて来たんだが、待合室の木で出来た格子窓からやたらと多用される横文字ロゴとかいわゆるミトーカリニューアルの典型。彼の人のデザインってのは木ィ使って横文字ロゴ使ってのれん使えば出来上がりなんでちょっと食傷気味ではありますw


月江寺からの上り勾配をカーブして富士山駅に入線するフジサン特急11号は、先週末から営業運転に投入された元小田急RSE20000系。2012年3月の引退を経て、紆余曲折はあれどこちらで富士急8000系として再デビュー…いや、分かってたことだからいいんだけどこの外観なあ(笑)。フジサン特急はこういうガラじゃないといけないわけでもあるまいに。いいや、乗ろ乗ろ。


列車は富士吉田方1両が指定の他は自由席ですが、三連休の中日って事もあり車内は見た目自由席120パー、指定席50パーの上々の乗車率。そして世界遺産効果なのか外国人観光客がこれも見た目3割くらいいる。当たり前だが海外旅行に国際免許まで取って来るヤツなんていないだろうから、海外勢は電車かバスを使わざるを得ない。そうなると、バスであれ鉄道であれ自動的に富士急行にはカネが落ちて行くと言う訳で。富士山は誠に金城湯池である。


乗車したのは富士吉田~河口湖までの僅か2駅10分足らずですが、半数近くの乗客が降りた富士急ハイランドからはハイデッカーの最前列を親子で占領してガツーリ。小田急時代は展望車でなくとも、このハイデッカー構造によってマスコン回りが良く見渡せる最前列の席はリアル電車でGo!っぽいロケーションでひそかに人気席だったですよね。バイト時代はこの席指名で乗車した事も何回かw

  

終点の河口湖に到着して、折り返しまでの準備時間に改めて新生・フジサン特急のフォルムを…
うーん、いや、分かってたことだからいいんだけどこの外観なあ(2回目)。好きだった子が夏休みが明けたらとんでもねえヤマンバギャル(死語)になって戻って来たかのような気まずさ(笑)。大月方のカオなんかカバみたいだし…初期のサイバラが書いた山崎一夫の絵みたいになっちゃってんじゃねーか。河口湖方の運転席の後ろはテーブルと椅子のサロン席になっておりますが、椅子の配置に絶妙なキャバクラ感がありますw

 

駅を出て、改めて編成を眺めてみれば塗り直された台車だけは住友金属製のアルストムリンクのまま。どーにもなじめないこのアミューズメント感に過ぎるイラストにため息しか出ないが、まあ富士急行も先代のPEAを引退間近になったら当時の塗装に塗り戻してる実績もあるので、そこに期待するしかあるまいw


せめて画像で在りし日のお姿を。当時はなんか淡いパステルカラーがロマっぽくねえなあとか思ってましたが、周囲の風景を壊さない地味ながらも味のあるカラーリングでした。本来であれば残された事を喜ぶべきなんでしょうが、この変わり果てた姿に馴染むのには時間がかかりそうですなw
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皐月遠州緑風記 その4

2014年05月10日 23時28分02秒 | ローカル私鉄

(ミス浜松2014@浜松まつり)

浜松駅周辺で絶賛開催されていた浜松まつり。浜松界隈では年間を通して一番大きいイベントと言う事で、駅周辺は大変な賑わい。歴史としては450年を数える祭りで、昼間は中田島砂丘を使った遠州名物の凧揚げ大会と、夜が駅周辺を浜松市内各町内の山車が練り歩く「御殿屋台引き回し」の二本立てで行われるそうな。そんなこんなで一大イベントですからミスコンなんかも当然絡んで来る訳ですが、駅前の広場ではどうやら前日に選ばれたらしい「ミス浜松2014」のお披露目式が行われていた。静岡県で一番人口の多い浜松市のミスな訳で、ある意味静岡県で一番かわいい(orキレイ)なお姉ちゃんが選ばれていると言う事になるのだろうな(笑)。ちなみにアタクシはこの3人の中なら右ですw

 

駅周辺に並ぶ各町内会の山車。この夜の屋台引き回しで、浜松まつりの盛り上がりはクライマックスを迎えるらしい。何でも参加町内数は170有余を数えるんだって。そりゃあ遠鉄電車の車内に法被姿が多い訳ですなあ。各町内でそれぞれこんな規模で山車を用意しているともなれば、町内会費が結構高いんじゃないかと言う無駄な心配をしてしまうのでありますがw


駅周辺の道路は夜になると屋台引き回しのため通行止めになる模様で、既に見物のための場所取りが道路脇で始まっている。ゴールデンウィークと言う事と、祭りのあいまったワサワサ感に包まれた浜松市街中心部をぶらりと歩いて新浜松から一つ目の駅・第一通り駅に。新浜松から500m、1985年の第一次遠鉄高架化に伴って新設された駅です。


第一通り駅に到着する2000形トップナンバー2001編成。高架化される前、遠鉄電車は西鹿島方面から南進して浜松市街中心部に到達する直前大きく東にカーブを取り、遠州馬込駅でスイッチバックしてから浜松駅に到達すると言う何だか無駄なルートを通っておりました。元々遠鉄は浜松駅を現在の新浜松駅から少し離れた北側(現在の遠州病院駅付近)に置いていて、やっぱ不便だよねってんで旧の浜松駅から先に伸びていた鉄道(濱松鉄道)の駅の途中(遠州馬込駅)から逆向きに線路を作って国鉄の浜松駅に接続させたのだが→遠州馬込から先の鉄道が廃線になってしまい→スイッチバックの形で遠州馬込駅が残った→「(乗客)さっさと浜松駅に行きたいのに何で浜松駅の手前でわざわざスイッチバックしてるん?(怒)」→「(浜松市)せやせや、駅周辺の再開発もあるしカネ出すから高架化してまえ」→「(遠鉄)じゃあ浜松市さんが噛んでくれるならやりましょか」→助信駅手前から一気に高架化、旧浜松駅(遠州病院駅)からは別ルートとし浜松駅前にダイレクトアクセス、第一通り駅と新浜松駅を開設。とこうなった訳です。長いなw


現在はさらに高架区間は伸び、新浜松駅から自動車学校前駅間の約5kmの高架化が完了。路線北部の遠州芝本駅~遠州小林駅間も高架化されており、浜松市とタッグを組んだ立体交差化で実に高規格な線路を手に入れた遠州鉄道であります。もちろん行政の支援もあるんだろうけど、やっぱ地方私鉄としては優秀な経営体力があるからこそなんでしょうなあ。


正直申し上げて地方私鉄らしい風情とは無縁な雰囲気の中、とりあえず途中下車してみたい駅もなく西鹿島駅に戻って来てしまいました(笑)。さっき新浜松の駅で知ったんだが、通常2連で朝のラッシュ時にのみ4連運行になる遠鉄電車が、今日は浜松まつりのメインイベントである夜の屋台引き回しに対応して夕方も4連運行やるってんで見て行こうと言う事に。16時00分西鹿島発の新浜松行きから4連運行がスタートするようで、到着した電車へは増結作業対応の係員の方が乗車しております。

 

増結作業を見学したかったんだけど、西鹿島駅は列車到着後は乗客を出してホームを一旦締め切ってしまうのと、どうやら増結はホーム奥の引き上げ線でやるようなので沿線に出て撮りに徹する事に。全線に亘って高架と住宅密集地と言うおよそ撮り鉄さんには地獄のような遠鉄沿線ですが(笑)、西鹿島から遠州岩水寺駅に向かって線路に並行して走る道路がちょっと開けている場所があったんで座を構える。傾きかけた日差しを浴びて1000形&2000形の4連運行、まあ平日の朝にわざわざ遠鉄電車を撮りには来ないだろうから、おそらくこれが最初で最後の遠鉄4連撮影でしょうw

 

4連運行ともなれば、西鹿島で寝ている車両を増結用に出して行く訳で、当然車両が足りなくなるのでしょうから予備の旧型が動くのではないか?と思うのは当然の流れ。何本か4連をやり過ごして待っていると、予想通りに旧型4連が浜松まつり増結祭りに参戦!(笑)。惜しむらくは順光側のクハ51顔面陥没エセ湘南銀ネズ目玉顔ですが…フツーに土日に来たら旧型車が動いてるトコなんか見れない訳ですし、サイドの2扉&端正な連続二段窓が晩春の夕日に輝く姿は、やはり地方私鉄の自社発注車萌え+日車標準型愛好者にとってはたまらないものです(笑)。

純正湘南フェイスのご尊顔は陰ったお顔となりましたが、いやいや拝めただけで満足です。
遠州鉄道、これにて無事に履修完了。
旧車が動くところを見れたと言う事で、単位判定は「優」でいいっしょ!
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皐月遠州緑風記 その3

2014年05月07日 05時42分05秒 | ローカル私鉄

(今年で創業107年@遠州鉄道社章)

遠州鉄道の前身である濱松鉄道は明治40年に設立され、明治42年には現在の路線とほぼ同じとなる濱松~鹿島間を軽便鉄道の規格で開通させました。現在の私鉄の根拠法となる「私設鉄道法」が公布されたのが明治33年、そして地方の鉄道敷設を促進させるため簡易規格での鉄道建設を認めた「軽便鉄道法」が公布されたのが明治43年ですから、いわゆる「地方私鉄」のくくりに入る路線としては開業が相当に早い。鉄道黎明期からの相当長い歴史を持つ鉄道会社って事なんですねえ。今や交通を中心とした遠州のコングロマリット企業として発展した遠州鉄道グループですが、ある意味「何でもやってやろう」と言う意味の遠州っ子気質である進取気鋭の「やらまいか精神」のスピリットが生み出した鉄道会社なのかもしれません。

  

遠江一宮から約30分、西鹿島駅で下車。構内の地下道を通って天浜線から遠鉄にお乗り換え。西鹿島の駅は遠鉄の管理下にある駅で、天浜線は一番駅舎から離れた遠いホームを間借りするのみの存在ですが、遠鉄側には西鹿島工場と車庫があって、赤い電車が狭い構内に隙間なくぎっちりと留置されております。ほどなくやって来た折り返しの新浜松行きは1000系1005編成。1983年に旧型の従来形式から一新されたデザインでデビューし、現在は遠鉄の主力車両。大きなパノラミックウインドウにデカ目の角型ライト、ライト下のアンチクライマーがなんとゆーか一昔前のロボット風w

  
 
最近はどこの地方私鉄も大手私鉄(東急だの西武だの京王だの)の譲渡車輛を使って体質改善を図るのが常でもありますが、遠州鉄道は現在も一貫して自社発注の車両のみで運行を継続していると言う事は特筆すべきでしょう。車庫に憩う遠鉄中興の祖・30形は、前面の湘南窓と特にサイドビューがいかにもビバ日車標準型って感じでたまらない逸品(笑)。嫌でも長電2000や地鉄10020を思い出します。
現在モハ30形+クハ80形のコンビは3編成残存しており、そのうちの2編成は何と吊り掛け車なんだそーな。ぜひ動くところを見てみたいが、主な出番は平日朝ラッシュの4連運行時のみの様子…加えてモハ27+クハ89に至っては赤が褪色して干からびたサツマイモのよーな色になって車庫の奥に押し込まれておりまして、側面を見ると検切れ。どうやら運用離脱のようです(涙)。それにしてもモハ側とクハ側で何でこんなにカオが違うんでしょうね。端正な湘南窓のクハ側に比べ、モハ側の顔面陥没エセ湘南窓に銀ネズのデカ目玉と言ったら…(笑)。

 

西鹿島の車庫をひとしきり眺めた後、電車に乗って遠州西ヶ崎駅にやって来た。島式ホーム1面2線、ホームの端に改札口を配し、改札口からはスロープで東西に走る踏切通路へ繋がっている。遠鉄の駅ではポピュラーなスタイルで、いかにも郊外電車の駅と言った佇まい。西鹿島は車両基地としての機能を持つ駅ですが、ここ遠州西ヶ崎には乗務員の詰所がありまして、車掌&運転士の交代風景を見る事が出来ます。進入して来た新浜松行き2000形、ほぼ見た目は1000形と変わりませんが、駆動装置がカルダン駆動からVVVFに変わっております。


駅の裏には遠州鉄道が開発したであろう遠鉄西ヶ崎マンション。早朝深夜を除いて西鹿島基準で00・12・24・36・48分発の完全な12分間隔のネットダイヤ、こっから新浜松までは20分弱と浜松までの通勤も楽々。遠鉄不動産で価格を見たら2DKで家賃5万円台だそうで、いかがなもんざんしょ(笑)。なーんてくだらない事を駄弁っておりますが、マンションの下の側線に止まっている青い車両…あれはなんですか?

 

この機関車こそ遠鉄の輝けるオールドスター・ED28型2号機。何と1925年(大正14年)にイギリスのイングリッシュエレクトリック社という所で作られた御年89歳の古典電機。新製当時は現在の飯田線の前身である豊川鉄道の電機として導入されまして、豊川鉄道が国鉄に買収されて飯田線になった後、昭和34年に遠州鉄道に入って来ました。カニの目玉のような尾灯、大きな台枠にちょこんと乗った凸型ボディがかわいらしいこの電機、この手の凸型電機では上信電鉄のデキ1なんかの1年後輩に当たります。今なお現役でお供のホキを引いては夜な夜な保線工事に充当されているそうで、無理だと思うけど動くところを見てみたいもんですなあ。目の覚めるようなライトブルーに塗られたボディは下回りの塗装もきっちり入っていて、大事にされているんだなあと感じます。

 

西ヶ崎から再び電車に乗って新浜松方面へ。車窓は何を言う事もないような、普通の浜松市郊外の住宅地の風景ですが、2両編成の車両は吊り革の8割方が埋まる混雑ぶり。さすがGWなのだが、今日は浜松でお祭りをやるらしく法被姿の乗客も目立つ。上島からは高架線に上がり、いよいよもって地方私鉄とは言えないようなハイスペックな景色になって来た(笑)。これで地方私鉄って言うなら東武野田線(アーバンパークライン)の末端区間とかどうなのよ…曳馬駅を出る新浜松行き、左にそびえる建物は浜松のシンボル・アクトシティ浜松です。

  

西鹿島から真っ直ぐ来れば32分、終点・新浜松に到着。ホームは遠鉄百貨店に隣接したビルの3階、改札口は2階にある。相対式ホームですが普段の乗り降りは手前の1番線のみの利用となっており、2番線は使われていない様子。かように近代化された遠鉄ですが、自動改札は導入されておらずICカードも全国共通のものは未対応。「ナイスパス」という独自の非接触ICを簡易改札で使っている、と言った塩梅。


午前中に見ていた風景が嘘のような、大都会・浜松の光景(笑)。事前には全く知らんかったんだが、GWは「浜松まつり」と言う全国的にも有名な祭りが開催されるようで、駅周辺どころか街中がお祭りムード一色の賑わいを見せている。祭りの賑わいを引き立てるような、鮮烈な赤の車体を午後の日差しに光らせて、遠鉄電車が新浜松の駅に進入して来る。電車が着くたびに吐き出される祭りの見物客が、駅前の賑わいをさらに加速させていくようで…

祭りの日 赤い法被に帯締めて 走る電車は 賑わい運ぶ
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