青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

峠の我が家 ~鹿沢温泉ツアー中編~

2005年02月08日 21時20分54秒 | 日常
続き。

長野と群馬の県境、東信と嬬恋地区を隔てる湯の丸山の北麓に位置する鹿沢温泉は標高1,500m、万座・鹿沢口の駅が500m程度なので約1,000mは登ってきた勘定になる。粉雪が融けずに地面に散らかっている。バスから降りて踏みしめる地面は、片栗粉の上を歩いているような感触だ。さすがに寒い。

この地域で宿泊するとなればまずは「草津良いトコチョイナチョイナ・草津温泉」か「高原のスキーリゾート・万座温泉」かと言うのが相場な感じもする。生来のマイナーびいきな素性もあって、今宵一泊の宿をここ、鹿沢温泉に求めてやって来た訳だが…人がワサワサ来るような場所があまり好きではない私にも、傾いた弱い冬の西日は付近の風景をやたら寂しく見せる。
「鹿沢温泉・紅葉館」は、峠道の途中にひっそりと佇む古い木造の二階建て。名前とは裏腹に、全く高揚感の伝わってこない佇まいである(笑)。
まあ、こんな外観で「おいおい湯煙上がっちゃってるYo!」とか「一体何℃なんだここHa!」とか、アップ系の感情をひねり出すのは難しいとは思うのだがw。屋根におっかぶさった雪から垂れ下がったツララ。でっかい木槌を持ってれば、まんまアイスクライマー(アザラシ虐待ゲーム@任天堂)って感じだ。

「こんな寂しい雪の峠道、もう陽も暮れかかっております故、泊めておくれでないかい」
編み笠をかぶって、ムシロでも背負って来れば良かったか。そんな気分で宿へ。
昔話では、だいたい老婆が包丁をシャーコシャーコと研ぎながらタヌキ汁の用意でもしてるもんなんだが、意外や意外、私より歳下そうなほっぺたの赤い女の子が出迎えてくれた。うーむ、コントロールのいいスライダーを投げそうだ。ほっぺたの赤い人はみんな北別府に見える病気も直さないとなあ、とかどーでもいい事を考えたり。

玄関では炭の火鉢がパチパチ、案内されて歩く廊下はギシギシ、通された部屋の障子はガタガタ。フタをひねる懐かしい形の魔法ビンからコポコポとお茶を淹れ、ヤレヤレなんて服を脱ぐ。全ての動きをワンワンニャンニャンコーナー(笑)で片付けて、コタツに足を突っ込んでホゲーとしてみる。こんな部屋でも、今晩だけは「峠の我が家」。そう思えばなかなか悪くない。

夕食までの時間を入浴に充てる。薄暗い廊下を降りた地下にある浴室はなお一層薄暗く、壁に何だか分からない絵柄のレリーフが掛けられた空間は宗教的な雰囲気すらある。やや白みがかった寒天色のお湯は鉄サビの匂いが強かった。キノコ鍋の夕食を黙々と食べ、部屋でテレビも付けず静寂のままに読書をしながら持って来たウイスキーなんぞ舐めていると、やがて眠くなり、時間も分からずに寝てしまった。

続く。
コメント
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