(四文字熟語?@二本木駅)
スイッチバックの二本木駅にある電光表示板。「推進停目」ってのは、引き上げ線に推進運転(バック)で入る列車の運転士さんはここら辺に停めてくださいね、と簡単に言えばそんな停止位置の目印。ちなみに通常の普通列車は3両編成で来るのでこの停目よりずっと奥に止まるのだが、妙高号の6両編成だと後ろ側の目視が効きにくいのでこれが立てられているものと思われる。それにしてもずーっと「推進停目」って文字を見ていると何かの四文字熟語に見えて来るな。「岡目八目」「推進停目」みたいな(笑)。
そろそろ帰る事を考えると、腰を据えて撮るのはこの二本木が最後になりそうなので、前日に登った駅裏の雪山にて陣を固める。足元はゴム長できっちりガードして、柔らかそうな雪を踏み固める作業。まずは信越大橋で見送った「ありがとう信越山線号」の返しを。ここ二本木駅は通過となるので、右側の直江津方本線からそのまま片渡り線を越え、長野方面へ向かいます。
続いて普通列車の348M長野行きが直江津方本線を登って引き上げ線に入って行きます。普通列車は引き上げ線の奥にある木製のスノーシェッドに頭を突っ込んで停止し、やおら推進運転で二本木駅のホームへ向かいます。前照灯が点いているので分かりにくいのですが、車掌が身を乗り出して前方の安全確認をしているのが分かりますかねえ。この列車は二本木で妙高3号と交換するので、その交換シーンを撮ろうと言う訳です。
「推進停目」の柱の脇を、妙高3号がゆっくりと進入して来ました。ダイヤによっては長野行きの引き上げ線への突込みと、直江津行きの駅への進入が同時になったりすることもあるらしいのだが、今回はそのようなシーンは見られず。交換相手の待つホームへは、そのままポイントを渡らずにまっすぐに進入して行きます。
ホームでの交換を終え、長野行きの普通列車が先発します。長野方への本線へは引き上げ線手前の片渡り線を利用して進入。長野行きが駅を出発し終わると、ポイントが切り替わり今度は直江津行きの妙高3号がまたも片渡り線を使って引き上げ線へ。国鉄色の特急車が車体をくねらせてポイントを渡る姿は絵になりますなあ。
運転台から身を乗り出して、後方を確認しながら推進停目へ車両を導いていく運転士さん。細心のハンドル操作と、進路を確認する眼差しの鋭さに鉄道マンとしてのカッコよさみたいなものが凝縮しているような…推進運転時は車掌と無線のやり取りをしながら運転するようですが、それでも雪の日の夜とか視界が効かなくて大変でしょうね。
推進停目に無事停車。おそらく運転台では逆転機を操作して信号開通待ちと言ったところでしょうか。スイッチバック自体は箱根とかそれこそ藤沢に行けば毎度見れるので馴染みがない訳じゃないんだけど、あれは進行方向自体が変わってしまう(乗務員の交替を伴う)もので、このような推進運転を伴う「通過型スイッチバック」の駅と言うのは今では珍しいんだよなあ。
信号が開通し、改めて直江津へ向けて山を下りて行く妙高3号。かつては奥羽本線板谷峠の四連続通過型スイッチバック(赤岩・板谷・峠・大沢)とかに見られたように、「優等列車の通過を前提とした幹線の勾配区間の駅」と言う限られた条件の中でこそ通過型スイッチバック駅は作られるので、おおかたは幹線の整備の過程で廃止されてしまったものが多く、本州ではそれこそ姨捨とここ二本木にしかないのだからその貴重さも分かろうというものです。
紡がれた歴史もさることながら、鉄道のシステムとしての切り口から見ても二本木の駅と言うのはとても面白い。新会社に移管されても二本木の駅とシステム自体は変わらないと思うので、興味があればぜひ訪れて欲しいなあと思う。上越市のホームページにも掲載されているんだからこれはもう立派な観光名所だと言っても差支えないかとw
古き良き 鉄路の時代 織るように 列車行き交う 二本木の駅