(歴戦の証、旅路の果てに@小諸駅)
今回の信越本線行にてファーストインプレッションであった小諸駅でのN103編成。現在稼働している長野の国鉄型特急車の中では一番状態が厳しい車両で、側面の塗装が割れて錆が顔をのぞかせていたり、車輪を見ると踏面が極めて薄くなっていたり、いずれにしろ早晩「落ちて」しまうのかなと思わずにおれない風貌になっておりました。
明日から、さらに長野~妙高高原間が「しなの鉄道・北線」へ、妙高高原~直江津は「えちごトキめき鉄道」に移管され、長野県内からは信越本線はほぼ(篠ノ井~長野間を残し)姿を消してしまう事になります。高崎~横川・篠ノ井~長野・直江津~新潟と三つに分かれ信越本線の名前は残りますけれども、やはり信越の「信」の字のない信越本線と言うのは寂しいものです。並行在来線を切り離せるように決めてしまった整備新幹線法と言うのは実に罪深い。逆に言えば、新幹線の開通が分かっていたからこそ設備投資が抑えられ、今まで古き良きままの国鉄幹線としての姿が色濃く残っていたのも、信越山線だったのかもしれません。
上越市出身の童話作家・小川未明の書いた童話に「野ばら」と言う作品がある。人里離れた辺境の地で、ひたすら番人として国境を守る初老の兵士と、若い兵士の物語。隣国の兵士同士とは言え、何事もない辺境の山の中。次第に心を通わせ平和に過ごして来た二人の兵士を、やがて互いの国の戦争と言う事態が引き裂いて行く。若い兵士は戦線に向かい、国境に初老の兵士が一人取り残される。若者の身を案じながら、国境の番を続ける老兵士。新幹線建設と言う国策に引き裂かれた信越本線の北端の地、信越国境を守り続けた特急車189系の姿は、物語の中で最後まで国境を守り続けた初老の兵士の姿にダブる。
もう最終の妙高号は直江津に到着したでしょうか。
いつの世も老兵は若手に道を譲って去るものであるけれど、長年の活躍に餞の野ばらを。
さようなら、妙高号。