青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

太陽の、一番長い一日に。

2024年07月03日 17時00分00秒 | 弘南鉄道

(初夏のサンセットステージ@弘南鉄道・柏農高校前駅)

津軽鉄道にお邪魔した後は、温泉休憩を経つつ大きく場面を転換して弘南線の柏農高校前の駅にやって来ました。岩木山を見晴るかす田園地帯に、簡素なホームが長く続く柏高前の駅。春から夏にかけてのこの時期、岩木山越しに夕陽が沈んでいく風景を撮る事が出来ます。奇しくもこの日は夏至で、一年で一番昼間が長い日。太陽は西に傾き始めてはいますが、まだまだお岩木山の上の高い場所にあって、夕暮れまでは少し遠そう。手元のスマホで日没時間を調べると、津軽平野でも19時ごろ。弘南線、コロナ前は日中でも30分に1本の運行頻度を維持していたのですが、現在弘南線は日中1時間ごとに間引かれ、朝夕のみが30~35分ごとというダイヤ。そこで、本数が多くなる夕方の時間帯を見計らって、沿線に繰り出したのでありました。

夕方5時を過ぎても、まだまだ岩木山の上に太陽は燦然と輝いて、紫外線の強そうな初夏の日差しを柏農高校前の駅に降り注いでいました。黒石行きから、家路を急ぐ高校生が降りて来る。前回この駅を訪れた時は、2月の上旬のこと。一面の雪景色の中を、紅い太陽が秋田県境方面・・・おそらく矢立峠の方向に沈んで行ったのを覚えている。あれからもう5年が過ぎた。時の流れは速いものなのだが、あの時の冬の津軽の鮮烈な思い出がなんとも忘れられず、またここに来てしまった。季節は真逆だが、四つの季節を過ごしてこその地方私鉄かなと思うところもあり。遠くてなかなか来れないけれども。

太陽さん、流石に一番昼間の長い日に、空の上でまだまだ元気。それでも、時計が進んで行けば徐々に光線は赤味を帯びて、初夏の津軽を黄金色に染めて行く。この時間帯は、柏農高校前から津軽尾上を挟んで尾上高校前までの区間をロケハンしながら移動していた。若苗がすくすく伸びる尾上高架橋。浅瀬石川から引き込まれた灌漑用水と田園地帯を渡って行くコンクリートモルタルの高架橋は全長344m、車窓に大きく広がる津軽富士の姿、高度を下げて行くにつれて、そのシルエットが濃くなっていく。遠く尾上高校前の駅の踏切が鳴って、黒石行きの電車が右へ、そして弘前行きの電車が左へ、軽やかなジョイント音を奏でながら走り去って行く。津軽の初夏、地元の人にとってみたら何のことはない景色なのだろうけど、日本の美しい農村風景の中に列車を置く喜びと、そしてそこを切り取る喜びというものが確実にある。

再びに舞台を移して柏農高前。午後7時を前に、ようやっと観念したように夏至の陽が落ちて行く。 初夏の津軽平野、太陽の一番長い日。 岩木山の山裾に、とうとう太陽が沈むか沈まぬかのタイミングで、ホームに滑り込んできた黒石行き。 太陽は、窓越しの高校生と一緒に、電車に乗って行ってしまいました。


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