青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

高津戸の桜、春風に舞う。

2024年05月14日 17時00分00秒 | わたらせ渓谷鉄道

(桜屏風を見降ろして@上神梅~大間々間)

すっかりホルモンとビールでいい気分になって、もうこれで帰ってしまってもいいかな・・・という気分を巻きなおして桜の撮影地へ。渡良瀬川が高津戸ダムによって流れを緩める淵に「戸沢」という集落があるのですが、その入口から築堤を走る線路沿いに立派な桜並木があります。ちょうど線路がカーブする辺りに覆いかぶさるように桜が咲いていて、見上げる形になる水沼の桜並木とは違った趣があります。まだお目当てのトロッコが来るにはだいぶ前の時間なのですけど、早くも三脚を立てて構える人も多く、名撮影地なんだなあと。まあ、この桜の咲きぶりを見れば、誰でもそうなりますかね。

満開の桜を横目に走り去るわ鉄の普通列車。おそらくクラツーで使われた増結対応がこの日はそのまま運用に入っていた。トロッコ以外の列車も混雑していたので、これでちょうどいいのかもしれない。普段は桐生~大間々までが一番乗車率が高い区間で、大間々以北は一気に乗客の流動が下がる路線でもあります。大間々は、現在は笠懸町・東村と合併し「みどり市」という味もそっけもない合併地名に取り込まれてしまいましたが、かつては群馬県山田郡の中で唯一の市町村として、長い間その牙城を守りました。

さて、わ鉄上流(?)からの追っかけ組が続々とお立ち台に上がって来て、いよいよ本日の本命のお出ましである。車窓からの桜見物のため、ここでも目いっぱいの徐行を見せてくれるのでシャッター回数は無限大です。満開の桜を愛でながら、エンジンの回転数を落として静々と花道を往くDE10。午前便と比べて返しの午後便は乗客もまばらでしたが、少し冷えた午後の風に吹かれながら、渡良瀬の春を精一杯謳歌しています。桜並木の後ろの足尾山塊に続く山並みは、既に芽吹きの季節を越えて新緑の面持ち。今年は桜の時期が少し遅かったから、新緑と桜は一緒に来てしまいましたね。

返しは短い2エンド側が先頭になるトロッコわたらせ号。DE10は、どっちかってーとこの「2エンド側」を前にした、形的にはバック運転になるスタイルが好きだ。DE10は、構内での貨車の入れ換えや非電化ローカル線の小貨物列車や旅客列車をけん引する役割を主軸とするためか、運転台は線路に対して平行な位置に付けられており、前進と後退の視認性を容易にしています。1エンドでも2エンドでも機動的に運転することが可能なスタイルは、主にD51を中心とした貨客需要をDD51によって無煙化したのと同様、C11が担っていた入換や貨客の短距離小運転のニーズを明確に代替えするために作られた機関車と言えます。

悠然と桜並木を通り抜けるDE10が、軽やかにエンジンの回転を上げて去って行く。わたらせ渓谷鉄道には2機のDE10がいるようで、もう1機は国鉄時代のそのままらしい。時と場合によって牽引機は入れ替わるようですが、既にどちらも製造から50年を超える高齢機関車。そう酷使をされる運用ではないものの、部品の確保や日々の点検など、苦労はあるのでしょう。トロッコ列車はわ鉄の重要な観光資源でもあり、客車と機関車の維持と更新のタイミングは、おそらくこの先の課題のひとつになるのではないかと思いますね。


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