青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

岩峅寺秋夜

2019年09月28日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(夜な夜な上滝線@モハ14722車内)

常願寺川で日没を迎え、今日のお宿である稲荷町の宿へ。チェックインを済ませ、軽くひとっ風呂浴びさせてもらい汗を流す。一日中外出てたからまた日焼けしてしまった。今日は素泊まりなので、メシを食いがてら富山の駅前に出ようと思って稲荷町の駅から電車に乗ろうとしたその時、改札口の手前で目の前を14722の岩峅寺行き(上滝線経由)が通り過ぎて行くのが見えたような気がして、何だか脊髄反射的にモハ14722の車内の人になってしまったのであった。あれ、メシは?(笑)。

夜の上滝線を下る14722。南富山にて交換待ちの姿。昼間は目立ちませんが、14720形も14760形と同じように、前面には若干の角度が付けられています。駅の照明でそのかすかな鼻筋が浮き上がって、表情をより立体的に見せてくれます。10020形と比べると裾の丸みがなくて、床下に向けてストンと落ちたような形になっていますけど、以前は10020と同じように下膨れ気味の丸みのあるディテールだったようです。富山地鉄の車両は昔からその時の都合や需要によって細かな改造から台車の交換、クーラー搭載のような大掛かりな改造までを自社の工場(稲荷町工場)で行っていて、デビューからの原型を留める車両というものは少数派と言えます。

稲荷町を出るころはそれなりの混雑だった上滝線の帰宅ラッシュ、南富山を出るとぼちぼちと乗客は少なくなっていきます。ちなみに富山駅前から南富山まで、地鉄電車(310円)を使うより市内電車(一律200円)のほうが圧倒的に安かったりする。南富山を出ると、朝菜町、上堀、布市、開発、月岡と富山市の郊外を走りながら、乗客は次々に家路についていきます。車窓の景色は暗いから良く分からなかったが、まあ朝の10020形でも乗っているからいいのだ。レトロな揺れに身を任せながら、暫し14722とのお名残り乗車を愉しむ事にする。

大川寺を過ぎて、常願寺川の長いトラスを渡ると終点の岩峅寺。ここまで乗っている客は車両全体を見渡しても2、3人でありました。私以外の乗客はそそくさと出口に消え、ホームには折り返し作業の運転士氏と私だけが残っている。作業のお邪魔にならないように、ひっそりとしめやかに14722+172のコンビを愛でる。夜の岩峅寺の駅は、改めてこの時間から富山方面に向かう客もおらず、秋の虫の音だけがカナカナと聞こえる心地の良い静寂であった。昼でも何となく薄暗い上滝線のホームは頼りない蛍光灯で照らされて、ホームに停車している14722から零れる灯りがぼうっと浮かびあがる風景はなんとも暖かみがありました。

時は中秋。雲の隙間から名月が照らす富山平野の片隅で、退職を年末に控えた老兵が静かに出発の時を待つ。昼の暑さに比べて夜風はずいぶんと爽やか。僅か5分の折り返し時間を使っての束の間のバルブ撮影。誰もいない車内に戻ると、特に案内もなくドアがプシューと音を立てて閉まり、再び電鉄富山行きの電車の中の人となったのでありました。

ちなみに今宵のお宿は稲荷町駅徒歩5分の「いなり鉱泉」。ホントは地鉄ホテルに泊まりたかったけど、緊縮予算なのでやむを得ず・・・みたいなノリでチョイスした宿だったんだがこれが大正解。銭湯が経営するビジホで、シングルにしては広くて綺麗なお部屋に併設の銭湯使い放題で一泊2,980円。夏に大阪に行った時に貰ったじゃらんのポイント使ったら1,880円で泊まれてしまった。電車好きじゃなくても普通にお勧めしたい宿だ。唯一難なのはコンビニが近くにないことくらいか。あくまで本業が銭湯のようなので部屋数はあまりなさそうでしたが、強くお勧めしたいですねえ。線路脇なので、地鉄電車の音を子守唄に眠れます(笑)。


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