青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

120年前の因果

2020年07月15日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(蛇骨川はいま@宮ノ下~小涌谷間)

昨年の台風19号における登山線の被災状況は、倒木や線路内への土砂流入、道床の流出など約20カ所に及びました。その中でも最大の被害が、この蛇骨川にかかる橋の崩落でした。蛇骨川の鉄橋は、鉄橋とは言っていますけども山腹に沿って走る桟道のようなものだったのですが、現場でその被災状況を見ると、桟道が走っているその斜面がもろとも崩れてしまったのが分かります。台風19号では2日間で約1000ミリの記録的大雨が箱根に降りましたが、120年の歴史を押し流した大雨は、まさに現在の気象の激烈化を示しています。

日中はガードマンの方が大勢現場に詰めているので、なかなか被災現場をじっくりと見る事も出来なかったのですが、朝早い時間はさすがに現場も閑散としていました。崩れてしまった山肌はグラウンドアンカーで補強され、ロックボルトが打ち込まれています。大型クレーンの設置のために巨大な足場が組まれ、大きく姿を変えた蛇骨川の渓谷。前々回のエントリーで紹介しましたが、国道1号線の蛇骨橋からは、沢筋に沿って豊かな森と水を愛でることのできる山道がありました。この道を通ると小涌谷の駅へショートカット出来たのですが、今は見る影もありません。

被災現場を通過する108-9編成。当初の計画では、宮ノ下から小涌谷にかけては国道1号線の蛇骨橋の少し下流あたりに橋を架け、トンネルを通して二ノ平(彫刻の森)付近へ出る計画でした。しかしながら、沿線の温泉旅館から「トンネルの掘削は湯脈に影響を及ぼす」と難色が示された結果、トンネルの掘削を諦め、この山肌にへばりついて羊腸の道を登り、小涌谷に出るルートが選択されたそうです。ひょっとして当時のルートであれば、この被害はなかったのではないかと思うのですが、それは今更言っても詮無きことでありましょう。

 


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