青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

未来へ続く 星降るヤード

2020年09月14日 23時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(宇宙基地への誘い@東藤原駅)

「知ってた? あれ、夜になると、 宇宙船の発射台になるんだぜ・・・」
三角形の異形の山の麓。居並ぶ白い貨車は、さながら宇宙カプセルのよう。セメントキルンからスペースシャトルが飛び立ちそうな、夜の東藤原。星の瞬く夏空の下で、煌々と輝く水銀灯が構内を照らします。

 

昼は機関車のホイッスルや貨車の軋む音、操車の係員の無線の声が賑やかに響いていた東藤原の駅。上下本線と5本の側線が並ぶヤードには、今日の貨物輸送を終えて星空の下に静かにたたずむ貨車たちがいます。日本全国で駅からの貨物取り扱いがなくなって、草ぼうぼうの側線が残されたり、売却されてマンションが建ったりと姿を変える中、現役で活躍するヤードは貴重です。また明日は朝早くからセメント出荷の貨物列車が仕立てられ、茶色の電気機関車に牽かれて山を降りて行くのでしょう・・・

おそらく最終のセメント返空便をホッパーに押し込んだデキが、暗闇の中を引き上げて来ました。これにて今日の営業は終了でしょうか。それこそ鉱山であれば、かつての北海道の夕張炭田や空知炭田、九州の筑豊炭田などでは24時間操業にて夜も昼もない出荷が行われていましたし、全盛時の奥多摩(奥多摩工業)なんかも石灰石は24時間出荷をやっていたように思いますけれども、現状四日市までの出荷しかない東藤原からのセメント輸送は4往復~5往復程度で足りてしまうのでしょう。

熱波の中で撮影した三岐鉄道は、日本最後のセメント貨物の牙城。文字通り身を削り日本の高度成長を支えた藤原岳の麓で営まれる、プリミティブな貨物輸送の姿。平成の中期ごろまでは日本中で見られた当たり前が、セメント貨物の衰退によって「ここにしかない」というオンリーワンのものになってしまいました。三岐のセメント輸送も孤高の車扱貨物として未だ健在ぶりを見せ付けてはいるものの、その前途は・・・?ですよねえ。何分にもお早めに、という感じがいたしましたですね。


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