青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

静寂の宮ノ下

2020年07月21日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(静けさの駅前通り@宮ノ下駅)

国道1号線から150m程度坂道を上がった場所にある宮ノ下の駅。「あじさい坂通り」と名付けられた駅前通りには、小洒落た喫茶店や雑貨屋が並んでいます。いつもなら温泉客がそぞろ歩く坂道ですが、登山電車が走っていないとひっそりとしたもの。宮ノ下の温泉街は、ランドマークとして箱根随一の知名度を誇る富士屋ホテルが長期リニューアル工事に入っていたのですが、登山電車の全線復旧と時を合わせるような形で、この7月15日にグランドオープンしています。電車の運行再開とともに、賑わいが戻る事を願ってやまない宮ノ下の駅です。

駅の入口は立ち入り禁止のテープが張られていましたが、それでも構内踏切は電車の接近とともに律儀に警報音を鳴らして遮断器を降ろします。山を登るB2編成と交換する108-9のコンビ。きれいに塗装され磨かれた車体に、これまた塗装したてのピカピカの108の車体が映り込みます。

思えば、5月から始まった試運転は、日によって使用される車種に違いはあったようなのだけど、108-9が動かない日には当たりませんでした。本来なら2連のサンナナやヨンロクに増結用の単車としてくっつくのが108と109の役目ですが、あの台風の日に入生田にいた事で強羅封じ込めの難を逃れ、今回の試運転では主力として活躍しています。台風で流された線路の地固めに貢献したこの編成は、復旧に向けての陰の功労者かもしれません。いつの間にか新調された「試」の丸看を掲げて、今日も試運転に勤しみます。

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ワクワクが、帰ってきた。

2020年07月19日 10時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(巡る緑の中を@強羅~彫刻の森間)

強羅と普段は流し撮りなどめったにやらない(そこまで技量がないしね)私ではありますが、珍しく流し撮り・・・それも、回転流し撮りなんぞをやってみました。回転流し撮りって何ぞや?って感じなんですけど、カメラを左右に流す従来の流し撮りではなく、文字通りカメラを回転させてレンズの円周部分に動く被写体を乗っけるという変化球。青紅葉回る世界の中で、登山電車をそっと映し止めてみましたと、そんな感じかな。もっと周辺部を流したかったんですけど、ヘタレなのでそこまでSSを落とせませんでした(笑)。

彫刻の森と強羅の間にある地獄沢の鉄橋付近を行く108-9。「地獄沢」と言われると名前が恐ろしいのですが、早雲山の爆裂噴火口である早雲地獄から流れて来る沢筋である事に因んでいるのだと思われます。ここが二ノ平と強羅の境界に当たり、湯本から登って来た登山電車は大きく右カーブをして、強羅の温泉街を右に見ながら強羅の駅へラストスパートをかけます。「又のおいでをおまちします 強羅温泉郷」の看板、強羅花壇や強羅環翠楼、雪月花などの高級旅館を擁する強羅温泉郷ですが、強羅付近で湧くナトリウム系の透明な源泉を使った宿と、大涌谷の噴気地帯で火山ガスに水を通した蒸気造成泉(薄濁りの硫黄泉)を引き湯している宿と、二種類の源泉の宿があります。ケーブルカーを挟んで北側が大涌谷の引き湯、南側に本来の強羅温泉の源泉を使った宿が多いように思います。

箱根登山電車 全線運転再開「ワクワクが、帰ってきた。」【フルバージョン】

そうそう、23日に迫った登山電車の全線運行再開に合わせて、小田急グループがこんなYoutubeムービーを作っています。被災から復旧に向けて、箱根旅行を楽しみにしていた男の子の目線からのストーリー仕立ての映像ですが、こういったプロモーションにも、箱根ゴールデンコースの再開に合わせた箱根振興への思いが伝わって来ますね。本来なら登山電車の復旧と「Go Toキャンペーン」とやらで箱根も賑わうはずだったのでしょうが、感染の再拡大に伴って東京からの大っぴらな客入れは望めなさそう・・・ひとまず、神奈川県内の観光客を中心に、ささやかに盛り上がりたいところです。

そして、このYoutubeムービーに使われたのが108-9号のコンビ。ベルニナでも、サンモリッツでも、最新型のアレグラでもなくこの車両が使われたという事が、いかにモハ1・2の2形式が登山電車を端的に表すイメージリーダーであったか、という事が分かります。既に廃車が発表されていますが、1ユニットくらいは動態保存を・・・なんて思うのだけど、それをするには入生田の車庫は狭すぎますかね。

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アングルチャレンジャー

2020年07月17日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(伐採地を行く@宮ノ下~仙人台信号場間)

今までは箱根の山の鬱蒼とした森に隠れ、駅間の撮影場所は限られていた箱根登山鉄道ですが、災害復旧工事のために、大きく伐採された場所から登山電車が見えるようになりました。場所で言うと仙人台信号場の宮ノ下側になりますでしょうか。もともとここには仙人台信号場へ行く作業用の道路があったのですが、大型の重機や資材を入れるため道路の拡幅が必要だったのでしょう。樹木の伐採、法面補強と新しい擁壁の作成が行われて、非常に見通しが良くなっています。試運転で湯本に下る108-9号。国道1号線を登るトラックとともに。

ズームリングを回して、寄りでもうワンショット。ユンボの置かれている奥がおそらく仙人台の信号場です。この撮影地は北側に開けた場所なので、光線で言えば午後向きでしょうか。ただ、登山電車の場合は「昼なお暗き」箱根の山道を登って行く電車なので、あんまり晴れてても木や山の陰で撮影しにくくなってしまう。登山電車を撮るのは曇りの日が一番いいと思いますね。

今回は撮影地のアングルとして消化できるかは置いといて、新しいポイントを開拓してみました。お次は大平台隧道の強羅側出口にある大沢橋梁付近。ここも台風の大雨によって土石流が発生し、大量の土砂が流れ込んだ場所です。崩れてしまった奥の斜面を補強するための鉄骨の足場が確認出来ます。だいぶ土砂は取り除かれて整地は進んでいるように見えますが、まだ復旧工事の途中と見えて、重機は置かれたままです。

崩落地の沢を下って行くベルニナB2編成。以前だったら木々の間にちらりと電車が見えるだけだった場所ですが、土石流で沢筋の木々がなぎ倒された結果、やはり見通しが良くなっています。理由が理由だけに手放しで褒められたもんじゃありませんが、未だ災害からの復旧工事中の現場と、復旧に向けての試運転のコラボレーションを一枚。大平台から仙人台の間は、大平台隧道を含め断続的な80パーミルの急勾配で、息を付く暇もない坂道が続いています。一応水平は固めて撮影しているんですが、真横から80パーミルを見るとこうなるのかって感じですねえ。一説によると、3両編成の登山電車が80パーミルの急勾配を走ると最前部と最後部に3mくらいの高低差が付くらしいが・・・

1000形電車の1両の長さ=14,660mm×3両=43,980mm(43.98m)
1000分の80の急勾配=80/1000=距離1mあたり高度は0.08m上昇
→0.08m×43.980m=3.5184m

ということで、80パーミルの急勾配を走ると、ベルニナでは計算上、最前部と最後部で約3.5mの高低差が付くことになる。3.5mの高さってーと普通の家の1階半くらいか。つくづく貫通路で全両繋がってなくて良かったなあと思うね。なんか物でも落したら大変なことになりそうだ(笑)。

 

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120年前の因果

2020年07月15日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(蛇骨川はいま@宮ノ下~小涌谷間)

昨年の台風19号における登山線の被災状況は、倒木や線路内への土砂流入、道床の流出など約20カ所に及びました。その中でも最大の被害が、この蛇骨川にかかる橋の崩落でした。蛇骨川の鉄橋は、鉄橋とは言っていますけども山腹に沿って走る桟道のようなものだったのですが、現場でその被災状況を見ると、桟道が走っているその斜面がもろとも崩れてしまったのが分かります。台風19号では2日間で約1000ミリの記録的大雨が箱根に降りましたが、120年の歴史を押し流した大雨は、まさに現在の気象の激烈化を示しています。

日中はガードマンの方が大勢現場に詰めているので、なかなか被災現場をじっくりと見る事も出来なかったのですが、朝早い時間はさすがに現場も閑散としていました。崩れてしまった山肌はグラウンドアンカーで補強され、ロックボルトが打ち込まれています。大型クレーンの設置のために巨大な足場が組まれ、大きく姿を変えた蛇骨川の渓谷。前々回のエントリーで紹介しましたが、国道1号線の蛇骨橋からは、沢筋に沿って豊かな森と水を愛でることのできる山道がありました。この道を通ると小涌谷の駅へショートカット出来たのですが、今は見る影もありません。

被災現場を通過する108-9編成。当初の計画では、宮ノ下から小涌谷にかけては国道1号線の蛇骨橋の少し下流あたりに橋を架け、トンネルを通して二ノ平(彫刻の森)付近へ出る計画でした。しかしながら、沿線の温泉旅館から「トンネルの掘削は湯脈に影響を及ぼす」と難色が示された結果、トンネルの掘削を諦め、この山肌にへばりついて羊腸の道を登り、小涌谷に出るルートが選択されたそうです。ひょっとして当時のルートであれば、この被害はなかったのではないかと思うのですが、それは今更言っても詮無きことでありましょう。

 

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紫陽花も 待ってた森の ストレート

2020年07月13日 23時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(古豪疾走@彫刻の森ストレート)

7月9日から全線での試運転が開始されたという事で、この週末も引き続き箱根詣でをして参りました。遠征しての撮影行・・・と言うものがやりにくい中で、近場の被写体としてお手軽でここんとこ毎週のように撮り込んでいます。こないだまでは大平台のトンネルを抜けたところまでだったので、撮れるのは塔ノ沢の駅か大平台界隈に限られていましたが、全線試運転になってだいぶ撮影場所の範囲も広がりました。となると真っ先に訪れたくなるのは登山電車の撮影ではおなじみの彫刻の森ストレート。開け放たれた窓から、ヤマの風を受けて108-9が疾走します。標高500mを超える場所なので、紫陽花の色がまだ残っていました。

5月からの試運転にはあまり顔を見せなかったベルニナのB2編成。車体も床下機器もきれいで良い状態を保っています。白・グレー・オレンジと小田急ロマンスカーのカラーリングに準拠したベルニナの初代塗装は、やはり良いものです。試運転とはいえ全線での運行開始は、このコロナ禍の中にあっても業界的には久々の明るい話題。結構朝早い時間に彫刻の森に顔を出したんですが、既に3~4人の撮影者がカメラを構えておりまして、注目度の高い案件ですね。試運転が開始されたばかりでレールも赤錆びたままですが、車輪で削られ油で濡れて、輝きを取り戻す日はもうすぐです。

紫陽花の色も残っていたし、編成写真っぽくかっつりとやりたかったので、まずは全編成を彫刻の森ストレートで撮る事に。最後はお馴染みベルニナB2編成。この日に試運転に入ったのは、108-9・B1・B2の3編成でしたが、5月からの試運転は108-9とB1編成がレギュラー格だったので、一番見る機会の多い車両でしたね。既にデビュー40年を数えようとするクルマなんですが。どうも未だに新車という印象が拭えない不思議なクルマ。正面三枚窓の作りは80〜90年代にありがちなスタイルですが、いつまでも飽きの来ないスマートなデザインで古さを感じさせません。

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