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出口治明氏「人生100年の時代、還暦はまだ折り返し地点」「年齢に縛られず好きなことをやれ」/毎日新聞「特集ワイド」

2020年08月19日 | 日々是雑感
私はこれまで「出口治明著『還暦からの底力』」などのブログ記事で、出口治明氏のことを紹介してきた。先週の火曜日(2020.8.11)の毎日新聞の夕刊「特集ワイド」が、《60歳でネット生保会社開業 「還暦」まだ折り返し 立命館アジア太平洋大学長 出口治明さん》として出口氏へのインタビュー記事を紹介していた。私が注目したところは、

5月に出版した「還暦からの底力」(講談社現代新書)は、既に20万部を突破したという。「還暦はマラソンでいえば折り返し地点に過ぎません。まだ半分も楽しい人生が残っている、ということを皆さんに伝えたくて書きました」。

出口さんは人生100年時代をこう捉える。日本の大学進学率は5割超、平均すれば20歳ごろに社会人として働き始める。そこをスタート地点と考えると、残りの80年の人生のうち、40年を経過した60歳はちょうど半分ということだ。

「なぜ還暦より先を『老後』や『余生』などと表現してきたかといえば、定年制という余計なものがあるからです」。日本の企業や官公庁で働いてきた人の大半は60~65歳で定年を迎える。この制度そのものがおかしいと指摘する。

昨年は年間322日働いたという。仕事人間かと思いきや、働くのは嫌いだそうだ。「僕は寝て食べて、本を読んでいたら幸せなんです。だけど『大学のためになる仕事だったら、僕の許可なくスケジュールを入れていいよ』と広報や秘書に伝えていて、結果的に322日になりました」。

「コロナ禍で広がったIT(情報技術)の活用が長時間労働を是正し、労働生産性を高める絶好のチャンスになる」と出口さん。仕事の生産性を上げることが、人生で大切な「自分が好きなことをする時間」を確保することにつながり、定年制のない「年齢フリー」の生き方ができるようになるのだろう。


「還暦はまだ折り返し地点」という話は、まさに目からウロコだった。また自分が「定年制」にとらわれていたことにも、改めて気づかされた。『還暦からの底力』は、若い読者からも支持されているそうだ。ご一読をお薦めしたい。では最後に、毎日新聞の記事全文を貼っておく。

立命館アジア太平洋大学長 出口治明さん

「還暦」といえば、かつては「赤いちゃんちゃんこ」に象徴されるように「現役引退」のイメージが強かったが、今や人生100年時代。そこから第二、第三の人生を切り開いてきた人がいる。60歳にしてネット販売を中心とする生命保険会社を起こし、古希にして大学の学長に就いた出口治明さん(72)だ。年齢にとらわれない自由な生き方の極意を聞いた。


年齢に縛られず好きなことをする
これまでに1万冊以上の本を読破し、「人生を面白くする本物の教養」「全世界史(上・下)」など40冊以上の本を書いてきた。「僕の著書の中でも、よく売れている本です」。5月に出版した「還暦からの底力」(講談社現代新書)は、既に20万部を突破したという。「還暦はマラソンでいえば折り返し地点に過ぎません。まだ半分も楽しい人生が残っている、ということを皆さんに伝えたくて書きました」

日本人の平均寿命(2019年)は男性81・41歳、女性87・45歳で世界トップレベルだ。出口さんは人生100年時代をこう捉える。日本の大学進学率は5割超、平均すれば20歳ごろに社会人として働き始める。そこをスタート地点と考えると、残りの80年の人生のうち、40年を経過した60歳はちょうど半分ということだ。

「なぜ還暦より先を『老後』や『余生』などと表現してきたかといえば、定年制という余計なものがあるからです」。日本の企業や官公庁で働いてきた人の大半は60~65歳で定年を迎える。この制度そのものがおかしいと指摘する出口さんは、大手生命保険会社を退職後、60歳の時、ライフネット生命を開業した。その会社には定年制を設けなかった。「働く、働かないは本人の自由です。でも、働きたいのに『60歳の誕生日、おめでとう。明日から来なくていいですよ』と言われてしまうのはおかしくないですか」

同社の社長、会長を約10年務めた後、当時33歳だった現在の社長に取締役を譲った。「僕よりはるかによく働く人に選手交代した方が会社のためだと思って」。自らも年齢にとらわれない生き方を実践してきた。

厚生労働省の社会保障審議会年金部会の委員も務める出口さん。昨年は金融庁金融審議会の報告書の「老後2000万円問題」が波紋を呼んだ。夫婦の老後資金として公的年金だけでは約2000万円不足するという試算に、世間の関心が集中した。だが、出口さんはこう説く。「あれは定年で仕事を辞めてしまったら老後資金が足りませんよという仮定の話。その後も働き続けるなら、貯蓄はそんなに要りません」

現在は、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める。昨年は年間322日働いたという。仕事人間かと思いきや、働くのは嫌いだそうだ。「僕は寝て食べて、本を読んでいたら幸せなんです。だけど『大学のためになる仕事だったら、僕の許可なくスケジュールを入れていいよ』と広報や秘書に伝えていて、結果的に322日になりました」

取材した日は休日だったが、その日のスケジュール表を見せてもらうと、メディア対応3件、講演1件。一切メモを見ずに、すらすらと数字を挙げる様子を拝見すると、活動することこそが元気の秘訣(ひけつ)と見た。

コロナ禍は、キャンパスライフを直撃した。APUは学生約6000人のうち半数が海外からの留学生。世界各国が出入国を制限する中、最も大きな影響を受けた大学の一つだ。1000人以上の外国人学生が春休みで一時帰国したものの、再入国できない状況という。講義も今年度上期は全てオンラインで行った。実は、団塊世代の出口さんも京都大に入った頃は、学生運動が盛んな時代で、大学は封鎖され、下宿で本を読みふける日々を送った経験を持つ。

「学びとは何かといえば、講義だけではありません。人間は太古の時代から集団の中で生き、学んできました。仲間同士の雑談や意見交換こそが重要で、キャンパスの意味はそこにあります」。10月からの下期はオンラインと共に、通常の対面式も交えた講義の再開を予定する。

学長の立場から見て、政府の一連のコロナ対応策の中で一番の失敗は「秋入学」の見送りだと指摘する。高校生の署名活動をきっかけに、賛同者が全国に広がった。「来年から大学の秋入学を始めれば2回受験できる。小学校から高校までは5年ぐらいかけて調整する。そう言えばよかったのに、小学校からすべて画一的に秋入学に合わせようとするから、慎重論が相次ぎ、議論は立ち消えになった。せっかく機運が高まったのに、リーダーの決断やメディアによる問題提起が欠けていました」

20年以上前から秋入学論者という。「日本は大学入試が一生を左右する社会。トラウマになっている人はたくさんいます。体調を崩しやすい厳寒期の1~2月に、入試を18歳に強いるのは制度的拷問です」

当面続きそうなウィズコロナの時代。マスクを着け、人との距離を保ち、不要不急の外出を控えるなどの日常が「ニューノーマル(新常態)」として定着するのだろうか。「還暦からの底力」では、かつてのモーレツ社員の「飯・風呂・寝る」から「人・本・旅」へのライフスタイルの転換を提唱する。さまざまな人に会い、たくさんの本を読み、いろいろなところに出かけて刺激を受ける生き方だ。

「本」はともかく、コロナ禍では「人」と「旅」は難しそうな気もするが、出口さんはこう言い切る。「ニューノーマルが続くなんて有り得ない。人間は触れ合いたい動物。ワクチンや薬ができれば、アフターコロナでは握手やハグは復活します」

内向き志向が強まり、グローバリゼーションが停滞するとの見方も一笑に付す。大手生保時代にロンドンの現地法人社長を務めた経験を持ち、これまでに世界1200以上の都市を訪れてきたという出口さん。「人間は移動が好きな動物です。海外に行けなくて耐えられないという友人がたくさんいます。『コロナで世の中が変わる』などというのは、人間の本質を理解していない考え方です」。アフリカ大陸で誕生し、世界中に移り住んだ我々の祖先は「ホモ・モビリタス(移動する人)」とも呼ばれる。人の往来はいずれ元通りになるという。

一方で、元に戻らないものもある。コロナを機に普及したオンライン会議などデジタル化は社会に浸透していくとみる。「一度使って便利だと思ったものは手放したくないでしょう。オンライン会議やテレワークは続きますよ」

「コロナ禍で広がったIT(情報技術)の活用が長時間労働を是正し、労働生産性を高める絶好のチャンスになる」と出口さん。仕事の生産性を上げることが、人生で大切な「自分が好きなことをする時間」を確保することにつながり、定年制のない「年齢フリー」の生き方ができるようになるのだろう。【葛西大博】

 ■人物略歴 出口治明(でぐち・はるあき)さん
1948年、三重県生まれ。京都大卒。72年から2006年まで日本生命に勤務。08年にライフネット生命保険を開業し、社長に就任。12年に上場、17年会長を退任。18年から立命館アジア太平洋大学(APU)学長。「人類5000年史Ⅰ~Ⅲ」など著書多数。


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