朝日新聞(7/20)のオピニオンページに元読売ジャイアンツの桑田真澄が、(球児たちへ)〈野球を好きになる七つの道〉という文を載せていた。1、練習時間を減らそう 2、ダッシュは全力10本 3、どんどんミスしよう 4、勝利ばかり追わない 5、勉強や遊びを大切に 6、米国を手本にしない 7、その大声、無駄では? というものだった。ほとんど9割以上納得できる良い内容だった。私が野球に対して持っていた違和感や嫌な部分を、きちんと取り上げ批判し、最新の合理的な考え方を表わしていた。
私の違和感の経験を少し・・・。小学生時分は、校庭や神社の境内や稲刈り後の田んぼなどで楽しい遊びとしての野球をしていた。仲間内では上手な方だと自負していた。それで中学に入って野球部に入ったのだが、一日でやめた。あの軍隊式のしごき練習や、大声を強要されることなどなど。『嫌だ!』と強く思った。辞めさせまいとする脅しもあったが、しゃにむに辞めた。今住んでいる場所でも、町内のおじさんたちがソフトボールクラブを立ち上げるのに付き合わされた。消極的に参加しつつ、親睦会のようなものならばと練習にも付き合っていたのだが、やはり野球をする人達に同調できずに、これも辞めた。どうしても違和感があって馴染めないのだ。そのような逃げ足というか、自己保身に関しては自信がある。自分の直感を信じて、自分自身が保てなくなるかも知れないというような事や組織からはなんとしても逃げ出そうというのが、私の生き方の基本だ。
私はアメリカのベースボールの成り立ちなどを知らない。小学生の頃に何であんなにも野球が楽しかったのだろう。守るときのうまくボールを捕れた《ヤッター》感もあるが、何といっても打ったボールが転々と外野に転がっていったり、外野手の上を越えたときにいちばん興奮する。攻める側は一人一人が巡りあわせでヒーローになれる立場を保障されるのだ。失敗や失策が大部分のなかに、うまくいくことがたまにあるというスポーツだから楽しかったのかも知れない。それに肉体的な接触がないから怪我もないしいざこざも少なかった。緩急のメリハリも面白い理由だったのだろうか。ボールが動いている間は緊張するが、それ以外は攻守とも観客気分ののどかさがある。瞬発力のゲームだが、弛緩した間(ま)がけっこうあるから観る方もお祭り気分でいられるのか・・・というのは大リーグのベースボールを思ってのこと。
プロ野球関係では落合が好きだ。【オレ流】というのが何ともいえない。彼のバッティング練習は独特のものがあったらしい。力一杯ボールを弾き飛ばすのではなく、打球は野手の間を抜ければいい・・からと打つ場所を考える。それにホームランはフェンスぎりぎりに入ったらいいのだという考え方の、バットでボールを運ぶという感じの打法。そんな賢さが好きだった。
桑田は早稲田の大学院スポーツ科学研究科で論文を書き、朝日のオピニオンはそれを抜粋した提言だそうだ。これを発表した意味は大きいと思う。少年野球や高校野球の指導者に大きな影響を与えることになるのかも知れない。それを大いに期待するのである。まとまりのない文になったので、彼がが書いている印象的な部分を紹介して終わらせよう。
『・・・手を抜いたりサボったりするのはいいことではありません。でも決して大きくない自分の身体を守るためには必要なことでした。なぜなら、ぼくの周りのまじめで才能のある選手ほど、指導者から指示されるままに頑張りすぎて、ケガをして、表舞台から消えていったから。』
『体罰は連鎖します。体罰を受けた選手は、体罰を与える指導者になる。理不尽な体罰を繰り返す指導者や先輩がいるチームだったら、他のチームに移ることも考えて下さい。我慢することよりも、自分の身体と精神を守ることの方が大切です。』