スティックの餌を5つ浮かべておいたのが、どうみても4つしかなくて、これは確実に喰ってくれたな、と思った。でもしばらく様子を観ていたら、少し亀が動いた拍子にぷくっとスティックが浮き上がってきた。
喰って欲しくて鼻づらに浮かせておいた餌が、亀のもぐった拍子に甲羅の内側にはまり込んでいただけのこと。その二日後にも一個見つからなかったから、もしかしたらと思った。でも今度は沈んでいた。溶けないのではなく溶けにくいだけで、やはり時間が経つとふやけて沈み溶けだすようだ。しかたがないので水の汚れを防ぐために取り出した。
そろそろこの亀に名前を付けようかと思いながら日が経っている。動物を飼うにあたっては、名をつけるかどうかで、その動物の運命が左右される。と誰か高名な人が言ったか書いたかは知らない。でもたぶん、きっとそうだろう・・・。名を付けられることによって、彼ないし彼女は家族の構成員としての地位を確保するのだ。
ここで、以前に読んだ嫌な本のことを思い出した。『It”(それ)と呼ばれた子』という本。DVの極限的ドキュメンタリーだった。名を呼ばれず人扱いされずIt”(それ)と呼ばれた子のことが書かれていた。
名を付けたらウチのクサガメも歩み寄ってくるかも知れないなどと自己満足的一方通行遊びをするわけである。以前、ヤマトヌマエビに寄生していた虫の『エビノコバン』にジェームス・コバーンから「ジェームス」という名を付けた。ヒメダカは他人に分けてやったりするほど増えたので個体識別は不可能な数の全員を「ヒメ」と呼んでいる。人怖じしないで愛嬌のあった、ハゼ科ではあるが何であるか特定できなかったヤツは「ハゼクン」と呼んでいた。
いつものように寄り道ばかり。さてウチのクサガメの名だ。イシガメは石亀だからクサガメは草亀だと思っていたら、臭い亀でクサガメだそうだ。そんな蔑んだ呼び方をされてきたわけだから、典雅な名にしたい。
キャバレロ・・・ピアノの詩人と言われたカーメン・キャバレロ。
ツタン・・・豪華な遺品が揃っていたファラオ。ツタン・カーメン王。
メハメハ・・・ハワイの先住民族の大王カメハメハから。
鬼六・・・亀甲縛りでも有名な作家、団鬼六氏から。典雅ではないか・・。
きっこ・・・亀甲から。松岡きっこというタレントがいた。眼が好きだった。
お多福・・・オカメ・ヒョットコのおかめの別名だ。めでたい。
マンネン・・・亀は万年でおまんねん。安易過ぎか・・。
カメリア・・・椿のこと。カメリア・コンプレックスというのもあるらしい
Wikipediaで調べながら連想ゲームをしてきたが、このあたりで決定したい。
命名『カメリア』これでよい。
さて、カメリアはと観れば、手足も首も中途半端ななりで斜めに浮いていることがある。背甲の横片側を僅かに水面から出して何だかしどけない。これはもう正気ではないのか死んでしまったのかとつついてみる。すると手足に生気が戻ったふうになって、泡も出さずに沈んでごそごそ動き出す。いつもと変わらない。どういう浮沈のしくみなんだろう。比重1を正確に保っているのだろうか。そして僅かな空気と水の出し入れでの浮沈か。
画像は視えていないのではないかと心配なカメリアの目。絶食中。(25日目)