■良いところばかりではない■
前回の記事では進化した結果の良い面ばかりを書いてきたが、当然ながら悪い面も結構ある。それは、この10年間、あるいはそれ以上の間を苦しんできた自動車メーカーの、苦悩の裏返しでもあるように思う。
■共用部品の多さ■
実は、この車以前に乗っていたエルグランドが壊れたのが、今年のお盆の直前で、その後にエクストレイルの商談が成立した後は、ディーラーの好意で約3週間にわたる間、旧型のセレナに代車として乗っていた。そしてそのセレナと付き合っている間に様々なことが見えてきた。
まず目に入ったのがステアリングだ。そう、エクストレイルと全く同じモノが装着されているのだ。
●セレナ他、ラフェスタ、ティーダ等々みーんな一緒とは…●
次にフォグランプ。これまたセレナの他、ラフェスタ、ティーダ等々何台もの車種で統一されたモノが装着されるのだが、コレが結構高くて3万数千円もする。
都市部で走る分には必要度も低く、逆に嬉しがって点灯させては対向車に迷惑を掛けるだけが、ボクのように道中で山越えをし、途中で霧、降雪に遭遇することの多い趣味をする者にとっては必需品である。さりとて財布の負担は軽い方がイイに決まっている。そこで一考したのがオークションでの中古品の購入だ。共有する車が多いことを逆手にとって不人気車用で検索すると、レンズに濁りや大きなキズが無いモノが僅か6000円で手に入れることが出来たのだ。幸い日本車にはフォグランプが装着されていてもいなくても配線自体はあらかじめされており、フォグランプ本体をネジ1本で止めた後はカップラーを繋ぐだけで配線が終了する。後は、ディ-ラーで購入したステアリングコラムにあるスイッチ(約7000円)を差し替えるだけで全ての作業が終わる。その結果、何と合計13000円で装着完了と相成ったのである。
●バルブはイエローに交換している●
共用部品が多いということを逆手にとってみると、有利になるところが他にもある。日産車の場合、多くの車種でホイールのオフセット(インセット)値、PCD値、センターハブ径までもが共通化されているので、オークションの中古ホイール市場は選び放題の状態になっているのだ。
特に近年はアルミ・ホイールが標準装備化されているから、自分の気に入ったホイールに買い換えるためにオークション市場に出品する純正アルミ・ホイールの数が増えていおり、相場も低い。ボクにはスタッドレスタイヤは必需品なので、それ用を購入したが、ディーラーでは新品だと1本3~4万円、4本合計12~16万円もする中、中古とは言え、キズが少ない3年使用のセレナ用純正アルミホイールが何と4本12000円で手に入ったのだ。
■部品どころか…■
共用しているのは部品だけではない。言わば後付けになる部品であれば、致し方ない部分もあるのだが、この車はエンジンやシャシーといった中枢部までもを多くの車種と共用しているのだ。
ボクの所有している20Xというグレードのエンジンは型式がMRで始まるシリーズ中の、MR20DEというモデルが搭載されている。(2.5Lは設計の古いQRシリーズ)
同じMRシリーズにはショートストローク版で1800ccのMR18DEや1600ccターボエンジン、最新型セレナ用の直噴タイプなども存在するが、同じエンジンブロックを使用したモノなので、現在の日産ガソリン4気筒中排気量クラス・エンジンは、ほとんどがこのシリーズを採用している状態なのだ。
MR20DEエンジンは、重量が1.7近い旧セレナの4WDと、何故かそんなに重くないハズのラフェスタの4WDでは最高出力を落としてトルクカーブを更に低速寄りに変更しているが、それ以外の車種では同スペックであり、特別なチューンはされていないようだ。だから、セダンであってもミニバンであっても、クロカンに近い4駆であっても、同じ味付けのエンジン・フィールを味わうことになる。
エンジンのフィーリング自体は、自然吸気のガソリンエンジンとしては低速トルクが太く、踏み込んだ際のレスポンスはそう悪くはないので、及第点を与えられるモノだとは思うが、早く言ってしまえば「実用エンジン」といった感じは拭えず、何も感動は起こらない。とは言っても実用が売りの車に乗っているのだから、そう文句は付けられないのだが…。
続いてシャーシ。よく似たタイプで、やや小型に見える「デュアリス」とも共通の「Cプラットフォーム」というシャーシを使っている。共有化自体は納得出来るが、驚くことにセダンタイプの「セントラ(輸出仕様サニーの発展型)」、ミニバンの「セレナ」や、ルノー製ハッチバックタイプの「メガーヌ」など、ザッと調べただけでも日産&ルノーの13もの車種と共有しているのだ。
エクストレイルは純然たるクロスカントリー車ではないが、それでもある程度のオフロードユースは想定しているハズだ。だから、セダンやハッチバック、そしてミニバンともシャシーを共用していることを知れば少々不安がないでもないが、フツーに乗った状態では「剛性感が低い」といった印象はない。だからボクの取り越し苦労なのかも知れないが、「本当にダイジョーブなのか?」と、つい思ってしまう。
車高やボディタイプの違う車とシャーシを共用している実感はエンジンフードを上げた際に、嵩上げされたフェンダーとマイナーチェンジ後は更に大型化したバンパーに囲まれた隙間だらけのエンジンルームを目にすると感じてしまう。そして、それを見る度に賛否両論の別れる「前がかりで押しの強いデザイン」ではなくて「もう少しスッキリしたフロント・デザインが可能だったのでは…。」とボクは思ってしまう。(しかし、それもこの車の個性なのかな?)
●マイナーチェンジ後、更に大型化したバンパー●
●バンパー裏はスカスカで、25cmほどの空きが…●
●フレームの基本ラインから、嵩上げしているフェンダー●
■合理化がもたらしたもの■
結局、販売不振にあえいでいた日産が、ルノーの傘下に入ったあたりから進めてきた合理化がもたらした結果であろう、「あらゆる面での共有化」は、単体では目立たなくても、調べるにつれドンドン明らかになってくるので、ただただ唖然とするばかりだ。そして、それが明らかになればなるほど、その昔に感じていた車に対する「夢や希望」が薄らいで行くことに気付く。
ボクたち世代が若かりし頃にもある程度の共有化や兄弟車はあるにはあったが、ここまで広範囲にわたり徹底したものではなかった。また、同じ車種内であっても、同一のエンジンブロックを使用しながら、スポーティなグレードであれば高回転型に、実用タイプであれば低回転時のトルクが上がった仕様が存在していた。だから車種やグレードごとの味わいはそれぞれに、もう少し差があったように思う。
今、若者の自動車離れが言われているが、こういったかなり広範囲な共有化の流れはそれを加速させることはあっても止める方向には作用しないだろう。
とは言え、このエクストレイルは世界戦略車であり、ヨーロッパでは450万円程度という高価で販売されているにもかかわらず、大変な人気のある車であるそうだ。そしてその地では若年層の憧れの車でもあるという。その他、日産のデュアリス、スバルのフォレスター、ホンダのCR-V、トヨタのRAV4といった日本製の中~小型SUV勢は世界各国で大好評だというが、そんな車達に200万円台前半で乗れるということは共有化の賜物であり、更には日本に住む者の特権だ。そしてそれは大変な幸せなことだと思う。
個人的な感想を言えば、押しの強いデザインは好きになれない部分もあるが、こと「釣り場に行く」、「スキーに行く」、「キャンプに行く」といったボクが遊びで使う際に大変役立つ機能機能を有り余るほど備えていながら、燃費が良くてフトコロにも優しい。だから、道具としての車と考えればハイレベルな選択であった思う。そして、次の車に乗り換えまでの間、頼りになる相棒で居てくれることは確かだ。
この先、共有化が更に進んだ先の車はどのような変化を遂げているのだろうか?。「それを見届けていこう」と思ってはみたが、それ以前に70歳過ぎまで運転するとして、5年に一度乗り換えるとすれば、この後の人生で出逢う車が4~5台程度になっている現実を知って少々ヘコんでしまうボクであった…。
前回の記事では進化した結果の良い面ばかりを書いてきたが、当然ながら悪い面も結構ある。それは、この10年間、あるいはそれ以上の間を苦しんできた自動車メーカーの、苦悩の裏返しでもあるように思う。
■共用部品の多さ■
実は、この車以前に乗っていたエルグランドが壊れたのが、今年のお盆の直前で、その後にエクストレイルの商談が成立した後は、ディーラーの好意で約3週間にわたる間、旧型のセレナに代車として乗っていた。そしてそのセレナと付き合っている間に様々なことが見えてきた。
まず目に入ったのがステアリングだ。そう、エクストレイルと全く同じモノが装着されているのだ。
●セレナ他、ラフェスタ、ティーダ等々みーんな一緒とは…●
次にフォグランプ。これまたセレナの他、ラフェスタ、ティーダ等々何台もの車種で統一されたモノが装着されるのだが、コレが結構高くて3万数千円もする。
都市部で走る分には必要度も低く、逆に嬉しがって点灯させては対向車に迷惑を掛けるだけが、ボクのように道中で山越えをし、途中で霧、降雪に遭遇することの多い趣味をする者にとっては必需品である。さりとて財布の負担は軽い方がイイに決まっている。そこで一考したのがオークションでの中古品の購入だ。共有する車が多いことを逆手にとって不人気車用で検索すると、レンズに濁りや大きなキズが無いモノが僅か6000円で手に入れることが出来たのだ。幸い日本車にはフォグランプが装着されていてもいなくても配線自体はあらかじめされており、フォグランプ本体をネジ1本で止めた後はカップラーを繋ぐだけで配線が終了する。後は、ディ-ラーで購入したステアリングコラムにあるスイッチ(約7000円)を差し替えるだけで全ての作業が終わる。その結果、何と合計13000円で装着完了と相成ったのである。
●バルブはイエローに交換している●
共用部品が多いということを逆手にとってみると、有利になるところが他にもある。日産車の場合、多くの車種でホイールのオフセット(インセット)値、PCD値、センターハブ径までもが共通化されているので、オークションの中古ホイール市場は選び放題の状態になっているのだ。
特に近年はアルミ・ホイールが標準装備化されているから、自分の気に入ったホイールに買い換えるためにオークション市場に出品する純正アルミ・ホイールの数が増えていおり、相場も低い。ボクにはスタッドレスタイヤは必需品なので、それ用を購入したが、ディーラーでは新品だと1本3~4万円、4本合計12~16万円もする中、中古とは言え、キズが少ない3年使用のセレナ用純正アルミホイールが何と4本12000円で手に入ったのだ。
■部品どころか…■
共用しているのは部品だけではない。言わば後付けになる部品であれば、致し方ない部分もあるのだが、この車はエンジンやシャシーといった中枢部までもを多くの車種と共用しているのだ。
ボクの所有している20Xというグレードのエンジンは型式がMRで始まるシリーズ中の、MR20DEというモデルが搭載されている。(2.5Lは設計の古いQRシリーズ)
同じMRシリーズにはショートストローク版で1800ccのMR18DEや1600ccターボエンジン、最新型セレナ用の直噴タイプなども存在するが、同じエンジンブロックを使用したモノなので、現在の日産ガソリン4気筒中排気量クラス・エンジンは、ほとんどがこのシリーズを採用している状態なのだ。
MR20DEエンジンは、重量が1.7近い旧セレナの4WDと、何故かそんなに重くないハズのラフェスタの4WDでは最高出力を落としてトルクカーブを更に低速寄りに変更しているが、それ以外の車種では同スペックであり、特別なチューンはされていないようだ。だから、セダンであってもミニバンであっても、クロカンに近い4駆であっても、同じ味付けのエンジン・フィールを味わうことになる。
エンジンのフィーリング自体は、自然吸気のガソリンエンジンとしては低速トルクが太く、踏み込んだ際のレスポンスはそう悪くはないので、及第点を与えられるモノだとは思うが、早く言ってしまえば「実用エンジン」といった感じは拭えず、何も感動は起こらない。とは言っても実用が売りの車に乗っているのだから、そう文句は付けられないのだが…。
続いてシャーシ。よく似たタイプで、やや小型に見える「デュアリス」とも共通の「Cプラットフォーム」というシャーシを使っている。共有化自体は納得出来るが、驚くことにセダンタイプの「セントラ(輸出仕様サニーの発展型)」、ミニバンの「セレナ」や、ルノー製ハッチバックタイプの「メガーヌ」など、ザッと調べただけでも日産&ルノーの13もの車種と共有しているのだ。
エクストレイルは純然たるクロスカントリー車ではないが、それでもある程度のオフロードユースは想定しているハズだ。だから、セダンやハッチバック、そしてミニバンともシャシーを共用していることを知れば少々不安がないでもないが、フツーに乗った状態では「剛性感が低い」といった印象はない。だからボクの取り越し苦労なのかも知れないが、「本当にダイジョーブなのか?」と、つい思ってしまう。
車高やボディタイプの違う車とシャーシを共用している実感はエンジンフードを上げた際に、嵩上げされたフェンダーとマイナーチェンジ後は更に大型化したバンパーに囲まれた隙間だらけのエンジンルームを目にすると感じてしまう。そして、それを見る度に賛否両論の別れる「前がかりで押しの強いデザイン」ではなくて「もう少しスッキリしたフロント・デザインが可能だったのでは…。」とボクは思ってしまう。(しかし、それもこの車の個性なのかな?)
●マイナーチェンジ後、更に大型化したバンパー●
●バンパー裏はスカスカで、25cmほどの空きが…●
●フレームの基本ラインから、嵩上げしているフェンダー●
■合理化がもたらしたもの■
結局、販売不振にあえいでいた日産が、ルノーの傘下に入ったあたりから進めてきた合理化がもたらした結果であろう、「あらゆる面での共有化」は、単体では目立たなくても、調べるにつれドンドン明らかになってくるので、ただただ唖然とするばかりだ。そして、それが明らかになればなるほど、その昔に感じていた車に対する「夢や希望」が薄らいで行くことに気付く。
ボクたち世代が若かりし頃にもある程度の共有化や兄弟車はあるにはあったが、ここまで広範囲にわたり徹底したものではなかった。また、同じ車種内であっても、同一のエンジンブロックを使用しながら、スポーティなグレードであれば高回転型に、実用タイプであれば低回転時のトルクが上がった仕様が存在していた。だから車種やグレードごとの味わいはそれぞれに、もう少し差があったように思う。
今、若者の自動車離れが言われているが、こういったかなり広範囲な共有化の流れはそれを加速させることはあっても止める方向には作用しないだろう。
とは言え、このエクストレイルは世界戦略車であり、ヨーロッパでは450万円程度という高価で販売されているにもかかわらず、大変な人気のある車であるそうだ。そしてその地では若年層の憧れの車でもあるという。その他、日産のデュアリス、スバルのフォレスター、ホンダのCR-V、トヨタのRAV4といった日本製の中~小型SUV勢は世界各国で大好評だというが、そんな車達に200万円台前半で乗れるということは共有化の賜物であり、更には日本に住む者の特権だ。そしてそれは大変な幸せなことだと思う。
個人的な感想を言えば、押しの強いデザインは好きになれない部分もあるが、こと「釣り場に行く」、「スキーに行く」、「キャンプに行く」といったボクが遊びで使う際に大変役立つ機能機能を有り余るほど備えていながら、燃費が良くてフトコロにも優しい。だから、道具としての車と考えればハイレベルな選択であった思う。そして、次の車に乗り換えまでの間、頼りになる相棒で居てくれることは確かだ。
この先、共有化が更に進んだ先の車はどのような変化を遂げているのだろうか?。「それを見届けていこう」と思ってはみたが、それ以前に70歳過ぎまで運転するとして、5年に一度乗り換えるとすれば、この後の人生で出逢う車が4~5台程度になっている現実を知って少々ヘコんでしまうボクであった…。