■機種交換にあたって■
今持っている携帯電話は、4年以上使っているモデルだ。最近、一度は交換したはずの電池の消費サイクルが短くなり、「そろそろ機種交換を…」と考えていたのだが、諸事情があって今のところ交換には至っていない。そのやり取りの中で色々と考えさせられることがあった。
■ボクの携帯電話歴■
ボクが携帯電話を始めて持ったのは今から13年くらい前のことだから、とりわけそんなに早く持ち始めたわけではない。それに新機種を追い求めて頻繁に買い求めてきたわけでもないので、経験値はフツーのオジサンレベルか、それ以下かも知れない。だから大したことが言えるわけでもないのだが、そんな履歴であっても、その間の価格変動は物凄いモノがあった。
初期の段階での購入は普及の真っ最中であったからか、本体価格が1円というモデルも結構あって、当時はすんなりと購入できていた。勿論1円という価格は通話料で補うから可能だったワケで、実際にどこからどこまでが本体の価格であってどこからどこまでが通話料だったのかがハッキリせず、1円が本当の意味で「お得」だったのかは未だにハッキリしない。
それから料金システムが何度も変わり、前回、前々回あたりの機種変更時には本体価格が2万円前後になっていた。それでも直前の機種を長く使っていれば割安な価格を提示されていたし、ポイントの還元もあったので、すんなりと購入が可能だった。
そして、今回。
年に10回はポケットから落としてしまうし、趣味の関係から考えても「防水・耐衝撃」性能を高めた機種があればと探し求めていたが、そんな機種がボクの契約しているドコモでようやく復活(以前に販売されていた機種は大き過ぎた)したということを聞いて、喜び勇んでショップに出掛けて行ったのだが、そこには未だ体験していない価格が待ち受けていたのだ。
因みに「何故ドコモで、防水なの?」と問われれば、我々のように磯釣りをする者にとって僻地の海上にも通信エリアが広がっていることは大切なことであり、万一落水した場合に送信できる、できないという問題は命に関わる問題でもあるのだ。実際に鹿児島県の黒島で遭難があった際に当時販売されていたドコモ系列の防水(しかも水に浮く!)機種を持ち込んでいた釣り客が居たために救出が早まり、死者が最少で済んだ例があるのだ。
しかし、今回の購入にあたって接客してくれた係の人に価格を聞いてびっくり。ただの機種変更なのにボクの選んだ機種は5万円前後もするというのだ。しかも、その機種だけがその価格ということではなく、他の新機種もほとんど同じ価格展開の中にあり、「だったら旧機種は?」と見回してみるが、そこには防水仕様のみしか存在しないのに価格は4万円前後もするのだ。更には最新のスマートフォンの方が割安になっていて、自分が判断するところの物の価値と実際の価格に大きなズレが生まれて、もう何が何だか解らなくなってしまったのだ。
そうなると「コレは頭を冷やして考え直す必要があるな」との思いが駆け巡り、一旦引き返すハメになったのである。
■高機能は要らない■
自宅に帰った後、以前から大手広告代理店で携帯電話の仕事に携わっている友人の「携帯電話本体って本当はナンボすると思う?」という言葉を思い出していた。恐らくその当時で10万円だったか、8万円だったかの話だったと思うが、以前に比べて通話料が下がっている中で、これだけ高機能化した携帯電話が5万円で手に入るのなら、それでも本来はお買い得なのかも知れない。しかしチョット待って欲しい。現状の何でもありの高機能に対して「誰が『おサイフ』にしたいとか、『カメラ』にしたいとか、『音楽プレイヤー』にしたいとか、『テレビが見たい』」と言ったのか?、「少なくともオレは言ってないぞ」と、つい言ってしまいたくなるのだ。
例えば、内蔵されているカメラ。いくら多機能で高画質になったところで、正規のデジカメに勝てはしない。試しに格子状のモノや、横一直線のモノを撮影してみると解るが、携帯電話のカメラでは直線が直線に写らないのだ。コレは少しでもカメラの世界を覗いてみればすぐに理解できることだ。デジタル器機内でいうのなら補正性能の高いレンズ構成が組める、1番大きくて高価な一眼レフ用大口径レンズ(しかも大きな35mmサイズのCCDやCMOS等を使ったモデル)の歪みが一番少なく、そこから小型化してレンズやCCDやCOMSが小さくなればなるほど歪みが増大するのだ。
当然、いくら頑張ってもスペースに余裕のない携帯電話では、ちゃんとした絵が撮れないのは当たり前の話なのだ。だから少しでもイイ絵が撮れるようにとデジカメを別に持ち歩いている、ボクのようなタイプにはカメラは全く必要がない機能になる。まぁ少し譲ってメモ程度に使うとしても本体価格に大きく反映されるようなカメラ機能は全く必要ないのだ。
また、着メロの普及に合わせて音楽プレイヤー機能もスピーカーから出る音を加工して、いわゆるイイ音に近付けようと努力しているようだが、これも物理的に不可能なのはオーディオの世界を覗けば解ることだ。
だから、携帯電話製造メーカーに対しては「中途半端な機能は要らないから、タフで長持ちであり、通信という本来の機能に絞り込んだ、割安な機種」の発売をお願いしたい。
■携帯電話スパイラル■
ここまで書くと若い人達に「アンタはデジカメからオーディオまで全部買い揃えられるかも知れないけど、オレたちにゃ~無理だよ。」と言われてしまうのかも知れない。
もちろん、「青少年期に、まず最初に手に入れたいツール」としての携帯電話があって、その入り口で何万円も消費し、その後は通話料を払い続けなくてはならないのであれば、収入の少ない時期に他のモノを購入する余力が少なくなるのは当然の話だということはボクにも理解できる。しかしソレは本末転倒のようにも思えるのだ。
余力がないのは若者に限った話ではなく社会全体を見渡せば、何もかもがしぼんでゆくかのように見えるのが日本の現況だ。その中にあって、携帯電話業界は好況な方なのかも知れない。だからこそ「誰もが絶対に必要な携帯電話を更に魅力あるモノに!」とばかりに各メーカーは何でもかんでもその中に詰め込むのだろう。その様子は、デジタル器機の渦、もしくはアリ地獄の中心に携帯電話があって、そこへ向かって様々な機能や器機が吸い込まれてゆくがの如くである。しかし、逆にそれが携帯電話の高額化を招き、他のモノに金が回らなくなるという悪循環を招いて「携帯電話スパイラル」を生み出しているような気がしてならないのだ。
産業の盛衰は当たり前のことであるし、「コレも時代の流れだから仕方がない」というのなら、ソレはソレで受け止めなくてはならない。そして、もし高度に複合化された携帯電話がデフレ経済に悩む日本にとって改善の起爆剤になってゆくのなら、逆に歓迎しなくてはならないとも思えるのだが、現実はそうでもないようだ。
実際に調べてみると携帯電話の売れ筋は更に複合化、多機能化したスマートフォンに移行しているというが、その上位3位まで(1位=GALAXY S、2位=iPhone 4・32Gバイト、3位=iPhone 4・16Gバイト)は日本メーカーが開発した機種ではないのだ。これは日本のメーカー勢が出遅れた結果なのかも知れないが、いずれにせよ現段階では海外メーカーにお金が流れて行き、「モノ作り」が基本の日本経済に好結果を与える部分が少ないようにボクの目には写ってしまう。
「ホンモノには到底及ばない、言わば中途半端な高機能化に走った結果、自分で自分の首を絞めることにならなければよいのだが…。」と、「5万円!」という価格に尻込みをしたついでに、オジサンは日本の将来について思いを巡らせてしまうのであった。
今持っている携帯電話は、4年以上使っているモデルだ。最近、一度は交換したはずの電池の消費サイクルが短くなり、「そろそろ機種交換を…」と考えていたのだが、諸事情があって今のところ交換には至っていない。そのやり取りの中で色々と考えさせられることがあった。
■ボクの携帯電話歴■
ボクが携帯電話を始めて持ったのは今から13年くらい前のことだから、とりわけそんなに早く持ち始めたわけではない。それに新機種を追い求めて頻繁に買い求めてきたわけでもないので、経験値はフツーのオジサンレベルか、それ以下かも知れない。だから大したことが言えるわけでもないのだが、そんな履歴であっても、その間の価格変動は物凄いモノがあった。
初期の段階での購入は普及の真っ最中であったからか、本体価格が1円というモデルも結構あって、当時はすんなりと購入できていた。勿論1円という価格は通話料で補うから可能だったワケで、実際にどこからどこまでが本体の価格であってどこからどこまでが通話料だったのかがハッキリせず、1円が本当の意味で「お得」だったのかは未だにハッキリしない。
それから料金システムが何度も変わり、前回、前々回あたりの機種変更時には本体価格が2万円前後になっていた。それでも直前の機種を長く使っていれば割安な価格を提示されていたし、ポイントの還元もあったので、すんなりと購入が可能だった。
そして、今回。
年に10回はポケットから落としてしまうし、趣味の関係から考えても「防水・耐衝撃」性能を高めた機種があればと探し求めていたが、そんな機種がボクの契約しているドコモでようやく復活(以前に販売されていた機種は大き過ぎた)したということを聞いて、喜び勇んでショップに出掛けて行ったのだが、そこには未だ体験していない価格が待ち受けていたのだ。
因みに「何故ドコモで、防水なの?」と問われれば、我々のように磯釣りをする者にとって僻地の海上にも通信エリアが広がっていることは大切なことであり、万一落水した場合に送信できる、できないという問題は命に関わる問題でもあるのだ。実際に鹿児島県の黒島で遭難があった際に当時販売されていたドコモ系列の防水(しかも水に浮く!)機種を持ち込んでいた釣り客が居たために救出が早まり、死者が最少で済んだ例があるのだ。
しかし、今回の購入にあたって接客してくれた係の人に価格を聞いてびっくり。ただの機種変更なのにボクの選んだ機種は5万円前後もするというのだ。しかも、その機種だけがその価格ということではなく、他の新機種もほとんど同じ価格展開の中にあり、「だったら旧機種は?」と見回してみるが、そこには防水仕様のみしか存在しないのに価格は4万円前後もするのだ。更には最新のスマートフォンの方が割安になっていて、自分が判断するところの物の価値と実際の価格に大きなズレが生まれて、もう何が何だか解らなくなってしまったのだ。
そうなると「コレは頭を冷やして考え直す必要があるな」との思いが駆け巡り、一旦引き返すハメになったのである。
■高機能は要らない■
自宅に帰った後、以前から大手広告代理店で携帯電話の仕事に携わっている友人の「携帯電話本体って本当はナンボすると思う?」という言葉を思い出していた。恐らくその当時で10万円だったか、8万円だったかの話だったと思うが、以前に比べて通話料が下がっている中で、これだけ高機能化した携帯電話が5万円で手に入るのなら、それでも本来はお買い得なのかも知れない。しかしチョット待って欲しい。現状の何でもありの高機能に対して「誰が『おサイフ』にしたいとか、『カメラ』にしたいとか、『音楽プレイヤー』にしたいとか、『テレビが見たい』」と言ったのか?、「少なくともオレは言ってないぞ」と、つい言ってしまいたくなるのだ。
例えば、内蔵されているカメラ。いくら多機能で高画質になったところで、正規のデジカメに勝てはしない。試しに格子状のモノや、横一直線のモノを撮影してみると解るが、携帯電話のカメラでは直線が直線に写らないのだ。コレは少しでもカメラの世界を覗いてみればすぐに理解できることだ。デジタル器機内でいうのなら補正性能の高いレンズ構成が組める、1番大きくて高価な一眼レフ用大口径レンズ(しかも大きな35mmサイズのCCDやCMOS等を使ったモデル)の歪みが一番少なく、そこから小型化してレンズやCCDやCOMSが小さくなればなるほど歪みが増大するのだ。
当然、いくら頑張ってもスペースに余裕のない携帯電話では、ちゃんとした絵が撮れないのは当たり前の話なのだ。だから少しでもイイ絵が撮れるようにとデジカメを別に持ち歩いている、ボクのようなタイプにはカメラは全く必要がない機能になる。まぁ少し譲ってメモ程度に使うとしても本体価格に大きく反映されるようなカメラ機能は全く必要ないのだ。
また、着メロの普及に合わせて音楽プレイヤー機能もスピーカーから出る音を加工して、いわゆるイイ音に近付けようと努力しているようだが、これも物理的に不可能なのはオーディオの世界を覗けば解ることだ。
だから、携帯電話製造メーカーに対しては「中途半端な機能は要らないから、タフで長持ちであり、通信という本来の機能に絞り込んだ、割安な機種」の発売をお願いしたい。
■携帯電話スパイラル■
ここまで書くと若い人達に「アンタはデジカメからオーディオまで全部買い揃えられるかも知れないけど、オレたちにゃ~無理だよ。」と言われてしまうのかも知れない。
もちろん、「青少年期に、まず最初に手に入れたいツール」としての携帯電話があって、その入り口で何万円も消費し、その後は通話料を払い続けなくてはならないのであれば、収入の少ない時期に他のモノを購入する余力が少なくなるのは当然の話だということはボクにも理解できる。しかしソレは本末転倒のようにも思えるのだ。
余力がないのは若者に限った話ではなく社会全体を見渡せば、何もかもがしぼんでゆくかのように見えるのが日本の現況だ。その中にあって、携帯電話業界は好況な方なのかも知れない。だからこそ「誰もが絶対に必要な携帯電話を更に魅力あるモノに!」とばかりに各メーカーは何でもかんでもその中に詰め込むのだろう。その様子は、デジタル器機の渦、もしくはアリ地獄の中心に携帯電話があって、そこへ向かって様々な機能や器機が吸い込まれてゆくがの如くである。しかし、逆にそれが携帯電話の高額化を招き、他のモノに金が回らなくなるという悪循環を招いて「携帯電話スパイラル」を生み出しているような気がしてならないのだ。
産業の盛衰は当たり前のことであるし、「コレも時代の流れだから仕方がない」というのなら、ソレはソレで受け止めなくてはならない。そして、もし高度に複合化された携帯電話がデフレ経済に悩む日本にとって改善の起爆剤になってゆくのなら、逆に歓迎しなくてはならないとも思えるのだが、現実はそうでもないようだ。
実際に調べてみると携帯電話の売れ筋は更に複合化、多機能化したスマートフォンに移行しているというが、その上位3位まで(1位=GALAXY S、2位=iPhone 4・32Gバイト、3位=iPhone 4・16Gバイト)は日本メーカーが開発した機種ではないのだ。これは日本のメーカー勢が出遅れた結果なのかも知れないが、いずれにせよ現段階では海外メーカーにお金が流れて行き、「モノ作り」が基本の日本経済に好結果を与える部分が少ないようにボクの目には写ってしまう。
「ホンモノには到底及ばない、言わば中途半端な高機能化に走った結果、自分で自分の首を絞めることにならなければよいのだが…。」と、「5万円!」という価格に尻込みをしたついでに、オジサンは日本の将来について思いを巡らせてしまうのであった。