中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

永遠の 0 (ゼロ)

2011-07-09 12:30:00 | その他
■暑い夏の最中に■

 西日本では梅雨も明け、暑い夏の真っ盛りに入っているが、毎年この時期になるとTVで大東亜戦争(太平洋戦争)についてのドラマ等が放送される。
 「戦争があったことを風化させず、今日、未来へ伝えよう」という努力は大切なことだ。しかし、ノンフィクション物以外の、特にドラマでは「現代人に解りやすく」を前面に押し出し、過度の演出をするあまりに曲解気味になっていたり、過去に放送したモノをリメイクする際にストーリーを書き換えすぎて、荒唐無稽になってしまっているモノすら存在する。
 
 このように戦時中を題材にしたドラマの中に不満が残る作品が多く存在するのは、携わる人間が多いTVでは伺う意見が多すぎて、どうしても方向性がボケてしまうからなのかも知れない。
 だから、ボクのように数多くノンフィクション物を読んでいたり、色々な手だてでこの時代を調べている身にとっては、小説の世界の方がシックリとくることが多いのだ。そんな中で出逢ったのが百田尚樹氏著「永遠の 0 (ゼロ)」という小説だった。

●永遠の 0 (ゼロ)●


 「何を今更…。」と言われるくらい、この本は以前から話題になっていたし、文庫本化や漫画化されるくらいにメジャーな作品であるうえ、これから読む人のためにストーリーに関しては多くは語らないが、あえて大筋を言うと…。

 すぐ目の前にある死と向き合いつつ、戦争が続く限り「死ぬまで跳び続けなくてはならない」戦闘機乗りの中にあって「娘に会うまでは死ねない」と言い続け、生き延びることをひたすら目指した男が居た。
 懸命に生き延び続ける彼であったが、思いとは逆方向に歯車は回り始め、遂に終戦の夏、特攻隊の一員となって散る運命に導かれてゆく。
 それから60年目の夏、その孫達が生き残りの戦闘機乗り達を通して死んだ祖父の生涯を調べていく。そこで得た生前の祖父像と、何故彼が死ななければならなかったのか?ということが浮き彫りになった瞬間に、明らかになる男の友情と家族愛を描いた作品。
 
 といった感じだが、付け加えるのなら、文庫版の帯に書かれている通りに不覚にも涙無しでは読めない作品だ。

 詳しく考証した上でのストーリー展開だから、生き残りとして登場する元パイロット達が語る戦闘や海戦の流れやその顛末も、概ね一般に言われている史実通りであるし、実際に撃墜王だった坂井三郎氏著「大空のサムライ」を始め、他の戦闘機乗り達のホンモノのエピソードをベースにした話も登場するので、「ノンフィクション上に描かれたフィクション」というのがこの小説に対する正確な表現なのかも知れない。
 予備知識が無い人にも非常に読み易いストーリーの中に、「あの時代に何があったのか」や、現代に生きる我々にとって重く受け止めてゆかなくてはならないハズの、「特攻隊員を含む多くの戦死者が何を思って死んでいったか」が解り易く表現されているから、終戦記念日である8月15日を前に、何かを考えるための良いキッカケを与えてくれる内容だと思う。

 著者の百田さんは、この作品がデビュー作だそうだが、関西発の人気TV番組である「探偵!ナイトスクープ」の放送作家をしていた人ということであるし、更に遡ればボクら世代なら知っている関西ローカル?の人気TV番組「ラブアタック」の「みじめアタッカー」の常連だった「あの百田さん」だということだから、人を楽しませ惹き付けるということに長けているのかも知れない。そのせいか、一度素直に読み始めるとすぐにのめり込んでゆく展開は見事だ。何もこれはボクだけの意見ではない。その証拠に、R40本屋さん大賞第1位になっているし、この作品以降も名著を発表し続け人気作家の一人に数えられているようだ。
 因みに、文庫本の巻末解説は先日亡くなられた児玉清さんだ。
コメント
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