■釣り場の条件■
釣行計画をたてる時、磯釣りの場合だと渡船店のホームページなどを見れば釣果が一目瞭然で現況が判断できるが、渓流釣りの場合は地元に詳しい釣具店のホームページを見たり、実際に電話で問い合わせても、店に立ち寄った釣り人から得た極一部の情報か、概要程度しか解らない。さりとて「行き当たりばったり」で釣り場に向かったところでそれはバクチになってしまうだろう。
そんな時キャリアが豊富な釣り人であれば「いつ何時」といった釣り場に向かうタイミングが経験上ある程度判断できるし、釣り人同士のネットワークからリアルタイム、もしくはそれに近い情報を得ることができるので失敗は減ると思うが、経験の浅い釣り人の場合はそうはいかない。だから釣果を伸ばすには自分でデータを探して確度を上げることが大事になってくる。
この釣りを初めて僅か3年目のボクの場合は、川の水況を知ることで、「ある程度確度が上がるのでは?」と考え、釣行前に調べている。そのために利用しているのが、国土交通省が発信している「川の防災情報」(http://www.river.go.jp/)だ。
このサイトでは、「全ての河川を網羅」とは言えないものの、釣り場になりうるであろう多くの河川の水位とその周辺の雨量が、3日前からの推移で目にすることが出来るのだ。
渓流釣りの場合、基本的に「増水後、平水に向かって落ち着き始める頃」に釣果が伸びると言われている。それに適合する川はないものかと、今回の釣行前に色々と調べたところ、岐阜県の最北部一帯の川では雨後の増水からの回復が早く、前日の土曜なら狙い目だったかも知れないが、日曜日は期待薄に思えた。更には鮎釣りが解禁されて渓流釣りを気楽に楽しめる川自体の数が減っていた。
そこで浮上したのがいつもの久婦須川だ。鮎釣り客に占拠されることが無いこの川は、釣行2日前に1m台に近付いた水位がゆっくりと下がり初め、前日には80cmに入っていた。この水位は今年最初に訪れた際と同じ状況下なので、こと水位面だけに限っては期待が持てるようであったが…。
■増水の川■
家を出る時間が遅かったせいか、現地に着くと想定していた箇所にまたもや車が止まっており、結局三回連続でいつもの入渓点からのスタートになってしまった。
川に降りる準備をしていると、ボクが車で向かう際に雷雨でもあったのか、山から道路に小川のように流れている部分が何カ所もあり、最初から嫌な予感がつきまとっていた。更には季節が進んだせいか河原へと通じる踏み跡には草が生い茂り、ジャングル状態になっており、「完全藪こぎ状態」で進まなくてはならない状況だった。
草いきれと雨後と朝露による湿度とクモの巣にウンザリとしながらもようやく河原に到達する。そこでこの日の釣果が予想される光景が目に入ってきた。
「思ったよりも濁りがキツイ…」
そして、ボクの場合、悪い方の予想はいつも当たるから、困ったものだ。
■最初の一匹■
水位的には釣りに支障が出るギリギリの線だった。更には直感だが、川が流れる流筋がどことなく悪く見え、前回、前々回に比べてポイントになる部分が潰れて確実に減っている。スタート地点から全く無反応のまま釣り上がって行くが、どうやら魚は流れの筋には出てこず、物陰に隠れている様子だ。
そこで、いつもならメインになるポイントよりもアシ際にある、流れの落ち着いているところへ向けて重点的に打ち込んでいく。しばらく無反応の区間が続いたが、諦めずに投入を繰り返す内に、モゾッともたれるような感覚で目印の動きがとまった。すかさずアワセると、アタリの弱さとは反対に結構締め込む。貴重な魚の引きを味わいながら、落ち着いて玉網に誘導し、無事にゲット。この日初のヤマメとご対面だ。
このヤマメから導き出した答えは、予想通りではあるが、「流れの中には出てこない。」だった。
ここからはヤマメの気持ちになって「ハードな状況から逃れられるポイント」を見付けると、時間を掛けて丹念に探るように努めた。
そして淵部の流れの影でまたもやモゾッとしたアタリを捉えてもう一匹追加する。
一匹目はクロカワムシのエサでの釣果だったが、この淵部で色々と試行錯誤を繰り返す内、小さなサイズを含めてミミズのアタリの方が極端に反応が良いことに気が付いた。上記のヤマメもミミズに反応した一匹だったので以後は、ミミズのエサをメインに切り替えた。
■思い切って堰堤へ■
更に釣り上がる内に、少ないアタリを捉えつつもソコソコのサイズを数匹追加できたが、いつもの安定感は無く、しんどい展開が続く。そして、そうこうしている内にあっという間に堰堤部に到達した。
これまでの釣行で好印象だった堰堤手前のポイントは潰れ、何も出ないままだった。こうなりゃ何としても堰堤下に入りたいが、増水のために普通のルートでは到達できそうにない。そこで一端下流に戻って右岸に渡り直し、途中でまたもやの藪こぎをしながら苦労の末に何とか堰堤直下に到達する。
ようやく到達したものの、水量が多くて釣り辛いうえに濁りもキツイ。諦めずに投入を繰り返したが、苦労の甲斐無く反応するのは中~小型のみで期待はずれに終わった。
■激戦区へ■
堰堤から退渓した後は一端車に乗り、少し下流へと向かった。するとこの川では数少ない、河原に車が直付け出来る区間=いつも誰かが入っているところに車が駐車されていないことに気付いた。
「多分、誰かが入った後だろうな…。」と思いつつも、正午過ぎの暑さに負け、「藪こぎはもうイヤだ。」とばかりにこの区間から「誰かの残り物」を狙って釣り上がることにした。
最初の内は明るい日差しが差し込んでいて、望み薄なので適当に飛ばして進んで行く。川の様子を見ると午前中に攻めた区間よりも濁りが薄いようだ。
やがて周りに木々が迫り、日陰になるポイント群に到達する。
しかし、「誰かの残り物」はほとんど無かった。反応するのは小型がメインで苦労の連続だったが、物陰の中の物陰のような箇所へ仕掛のロストを覚悟しつつ、一か八かでキャストした仕掛にようやく小マシなサイズが反応する。
しかし、上向いたかに見えた兆しもすぐ下降線を辿っていった。そして更には最悪の事態が発生した。
ここまで底石がヌルヌルとしているのに注意しつつ釣り上がってきたのだが、遂に足を滑らせて転倒し、全身ズブ濡れになってしまったのだ。オマケに掴んでいたメインロッドを真っ二つにする「体たらくさ」を伴って…。
■不幸中の幸い■
大トラブルにも負けず、ロッドを予備のモノに交換するが、その竿はいわゆるゼロ・ロッドという、極細糸対応の竿であった。
「ヤマメの喰いは悪いし、細目の仕掛でちょうど良いか?」と自分を納得させつつ、糸をこの竿では限界に近い太仕掛の0.2号に交換する。しかし、努力の甲斐無く何も反応がないままこの区間の最終局面へと到達した。
■この日一番■
区間最終部とは言うものの、実はその先に「奥の院」とも言うべき一帯がある。しかし、そこへ到達するには入り口に立ちふさがる放水口からの水の量が運命を左右するのだ。残念ながらこの日は吹き出す水の量が多く、「奥の院」へのアプローチは無理である。そこで吹き出し口周囲にある淵を丹念に探ってみることにした。
この淵には大石が一箇所デンッ!と座っていて、「誰が見ても」それこそ見るからにそこがポイントだと判断できる。その周囲を下流側から丹念に探って行くが無反応。やはり誰もが狙うからだろうか魚影は薄いようだ。
連日のように攻められて魚が減っているのか、石裏では反応が全くないので、石に水流が当たる面=いわゆる「ウケ」の部分で仕掛が馴染むように投入し、流してみる。
3投目、石の直前で目印の動きが止まったと同時に、それまでピンッと張っていた糸がフケた。
「アタリか?それとも根掛かりか?」と半信半疑のままでアワセを入れると、それと同時に軟竿がグニャリと曲がり込んでゆく。
相手に対して糸が細目だから慎重にならざるを得ないが、柔らかい竿でバランスをとっているので、ウマく衝撃を吸収してくれているようだ。それを上回る引きが時折ロッドを襲った場合は竿を上流側に倒したままで自分が下流へと下ることで仕掛全体に架かるテンションを逃がしてやることで対処してゆく。
徐々に相手の引きが弱まり、玉網へと誘導したいと思うが、柔らかい竿はここ一番で魚を浮かせるパワーが出てこない。そこで上流に竿を倒したままで、こちらから魚に近付くイメージで誘導してみると、何とか取り込みに成功した。見れば、背中の張りが強いオス、それも本日最長寸のヤマメだった。
その後は粘ってみたが、この淵では続く魚はとうとう出ずじまいだった。
その後、見えているのに行けないジレンマに耐えきれずに「放水口を超える方法はないものか?」と、アプローチを試みたが、間近で見る放水の勢いは強烈そのものだった。無理をすれば吹き飛ばされて危険にさらされそうだし、これ以上ズブ濡れになるのはもうゴメンだ。イイ魚もゲットしたことであるし、キリのいいところでもある。ここで退渓を決意するに至り、この日の釣りが終了した。
■ケガの功名■
夏本番に入り、どの渓でも厳しい状況下に入っている。しかし、そんな中でも20cm以上のヤマメが何とか一日楽しめるほど釣れ続いてくれたのは、ベストとは言えないまでも、
「『増水から平水へと向かい、落ち着き始める』際の、恩恵の一部と捉えるべきなのだろうか?。」とも思えてくる。
今回の釣果は、決定的な判断材料になるほどの釣れっ振りではなく、そうだと言い切れないのが苦しいところだが、少なくとも「川の防災情報」がある程度の目安になることだけは言えると思う。
今回は車で移動している時間帯での雷雨の影響が出て濁りがキツくなったようだが、それに対処するには、携帯電話版の「川の防災情報」を利用し、現地に向かう途中で再確認することが必要になってくるだろう。今後はそれを利用することで更なる確度アップを図ってゆきたいと思う。
それにしても、この日の最大魚のことである。これは細仕掛に喰ってきた魚だ。直前に転倒していなければ、竿を交換していなかっただろうから、もしかするといつもの0.3号では喰ってくれなかった魚かも知れない。そうだとすると、正しく「ケガの功名」と言ったところだろう。しかし、ケガの代償は大きい。家に帰って調べると、折れた部分の他に、割れも発見し、交換が必要なパーツは2ヶ所に渡っていた。これから修理費の捻出に苦労しなければならないのだ。
釣行計画をたてる時、磯釣りの場合だと渡船店のホームページなどを見れば釣果が一目瞭然で現況が判断できるが、渓流釣りの場合は地元に詳しい釣具店のホームページを見たり、実際に電話で問い合わせても、店に立ち寄った釣り人から得た極一部の情報か、概要程度しか解らない。さりとて「行き当たりばったり」で釣り場に向かったところでそれはバクチになってしまうだろう。
そんな時キャリアが豊富な釣り人であれば「いつ何時」といった釣り場に向かうタイミングが経験上ある程度判断できるし、釣り人同士のネットワークからリアルタイム、もしくはそれに近い情報を得ることができるので失敗は減ると思うが、経験の浅い釣り人の場合はそうはいかない。だから釣果を伸ばすには自分でデータを探して確度を上げることが大事になってくる。
この釣りを初めて僅か3年目のボクの場合は、川の水況を知ることで、「ある程度確度が上がるのでは?」と考え、釣行前に調べている。そのために利用しているのが、国土交通省が発信している「川の防災情報」(http://www.river.go.jp/)だ。
このサイトでは、「全ての河川を網羅」とは言えないものの、釣り場になりうるであろう多くの河川の水位とその周辺の雨量が、3日前からの推移で目にすることが出来るのだ。
渓流釣りの場合、基本的に「増水後、平水に向かって落ち着き始める頃」に釣果が伸びると言われている。それに適合する川はないものかと、今回の釣行前に色々と調べたところ、岐阜県の最北部一帯の川では雨後の増水からの回復が早く、前日の土曜なら狙い目だったかも知れないが、日曜日は期待薄に思えた。更には鮎釣りが解禁されて渓流釣りを気楽に楽しめる川自体の数が減っていた。
そこで浮上したのがいつもの久婦須川だ。鮎釣り客に占拠されることが無いこの川は、釣行2日前に1m台に近付いた水位がゆっくりと下がり初め、前日には80cmに入っていた。この水位は今年最初に訪れた際と同じ状況下なので、こと水位面だけに限っては期待が持てるようであったが…。
■増水の川■
家を出る時間が遅かったせいか、現地に着くと想定していた箇所にまたもや車が止まっており、結局三回連続でいつもの入渓点からのスタートになってしまった。
川に降りる準備をしていると、ボクが車で向かう際に雷雨でもあったのか、山から道路に小川のように流れている部分が何カ所もあり、最初から嫌な予感がつきまとっていた。更には季節が進んだせいか河原へと通じる踏み跡には草が生い茂り、ジャングル状態になっており、「完全藪こぎ状態」で進まなくてはならない状況だった。
●河原へは藪こぎが強いられる●
草いきれと雨後と朝露による湿度とクモの巣にウンザリとしながらもようやく河原に到達する。そこでこの日の釣果が予想される光景が目に入ってきた。
「思ったよりも濁りがキツイ…」
●水位は何とかなるレベルだが、濁りがキツイ●
そして、ボクの場合、悪い方の予想はいつも当たるから、困ったものだ。
■最初の一匹■
水位的には釣りに支障が出るギリギリの線だった。更には直感だが、川が流れる流筋がどことなく悪く見え、前回、前々回に比べてポイントになる部分が潰れて確実に減っている。スタート地点から全く無反応のまま釣り上がって行くが、どうやら魚は流れの筋には出てこず、物陰に隠れている様子だ。
●ポイントを潰すようなグチャグチャな流れ●
そこで、いつもならメインになるポイントよりもアシ際にある、流れの落ち着いているところへ向けて重点的に打ち込んでいく。しばらく無反応の区間が続いたが、諦めずに投入を繰り返す内に、モゾッともたれるような感覚で目印の動きがとまった。すかさずアワセると、アタリの弱さとは反対に結構締め込む。貴重な魚の引きを味わいながら、落ち着いて玉網に誘導し、無事にゲット。この日初のヤマメとご対面だ。
●26cmのヤマメ●
このヤマメから導き出した答えは、予想通りではあるが、「流れの中には出てこない。」だった。
ここからはヤマメの気持ちになって「ハードな状況から逃れられるポイント」を見付けると、時間を掛けて丹念に探るように努めた。
そして淵部の流れの影でまたもやモゾッとしたアタリを捉えてもう一匹追加する。
●23cm級●
一匹目はクロカワムシのエサでの釣果だったが、この淵部で色々と試行錯誤を繰り返す内、小さなサイズを含めてミミズのアタリの方が極端に反応が良いことに気が付いた。上記のヤマメもミミズに反応した一匹だったので以後は、ミミズのエサをメインに切り替えた。
●「濁った時のミミズ」の定説は本当かも?●
■思い切って堰堤へ■
更に釣り上がる内に、少ないアタリを捉えつつもソコソコのサイズを数匹追加できたが、いつもの安定感は無く、しんどい展開が続く。そして、そうこうしている内にあっという間に堰堤部に到達した。
●かなり増水している堰堤手前の区間●
これまでの釣行で好印象だった堰堤手前のポイントは潰れ、何も出ないままだった。こうなりゃ何としても堰堤下に入りたいが、増水のために普通のルートでは到達できそうにない。そこで一端下流に戻って右岸に渡り直し、途中でまたもやの藪こぎをしながら苦労の末に何とか堰堤直下に到達する。
●堰堤直下の流れ●
ようやく到達したものの、水量が多くて釣り辛いうえに濁りもキツイ。諦めずに投入を繰り返したが、苦労の甲斐無く反応するのは中~小型のみで期待はずれに終わった。
●23cm級●
■激戦区へ■
堰堤から退渓した後は一端車に乗り、少し下流へと向かった。するとこの川では数少ない、河原に車が直付け出来る区間=いつも誰かが入っているところに車が駐車されていないことに気付いた。
「多分、誰かが入った後だろうな…。」と思いつつも、正午過ぎの暑さに負け、「藪こぎはもうイヤだ。」とばかりにこの区間から「誰かの残り物」を狙って釣り上がることにした。
●誰もが入る激戦区●
最初の内は明るい日差しが差し込んでいて、望み薄なので適当に飛ばして進んで行く。川の様子を見ると午前中に攻めた区間よりも濁りが薄いようだ。
やがて周りに木々が迫り、日陰になるポイント群に到達する。
●途中から日陰が多くなる●
しかし、「誰かの残り物」はほとんど無かった。反応するのは小型がメインで苦労の連続だったが、物陰の中の物陰のような箇所へ仕掛のロストを覚悟しつつ、一か八かでキャストした仕掛にようやく小マシなサイズが反応する。
●ようやくの20cm級●
しかし、上向いたかに見えた兆しもすぐ下降線を辿っていった。そして更には最悪の事態が発生した。
ここまで底石がヌルヌルとしているのに注意しつつ釣り上がってきたのだが、遂に足を滑らせて転倒し、全身ズブ濡れになってしまったのだ。オマケに掴んでいたメインロッドを真っ二つにする「体たらくさ」を伴って…。
■不幸中の幸い■
大トラブルにも負けず、ロッドを予備のモノに交換するが、その竿はいわゆるゼロ・ロッドという、極細糸対応の竿であった。
「ヤマメの喰いは悪いし、細目の仕掛でちょうど良いか?」と自分を納得させつつ、糸をこの竿では限界に近い太仕掛の0.2号に交換する。しかし、努力の甲斐無く何も反応がないままこの区間の最終局面へと到達した。
●一応の区間最終部●
■この日一番■
区間最終部とは言うものの、実はその先に「奥の院」とも言うべき一帯がある。しかし、そこへ到達するには入り口に立ちふさがる放水口からの水の量が運命を左右するのだ。残念ながらこの日は吹き出す水の量が多く、「奥の院」へのアプローチは無理である。そこで吹き出し口周囲にある淵を丹念に探ってみることにした。
この淵には大石が一箇所デンッ!と座っていて、「誰が見ても」それこそ見るからにそこがポイントだと判断できる。その周囲を下流側から丹念に探って行くが無反応。やはり誰もが狙うからだろうか魚影は薄いようだ。
連日のように攻められて魚が減っているのか、石裏では反応が全くないので、石に水流が当たる面=いわゆる「ウケ」の部分で仕掛が馴染むように投入し、流してみる。
3投目、石の直前で目印の動きが止まったと同時に、それまでピンッと張っていた糸がフケた。
「アタリか?それとも根掛かりか?」と半信半疑のままでアワセを入れると、それと同時に軟竿がグニャリと曲がり込んでゆく。
相手に対して糸が細目だから慎重にならざるを得ないが、柔らかい竿でバランスをとっているので、ウマく衝撃を吸収してくれているようだ。それを上回る引きが時折ロッドを襲った場合は竿を上流側に倒したままで自分が下流へと下ることで仕掛全体に架かるテンションを逃がしてやることで対処してゆく。
徐々に相手の引きが弱まり、玉網へと誘導したいと思うが、柔らかい竿はここ一番で魚を浮かせるパワーが出てこない。そこで上流に竿を倒したままで、こちらから魚に近付くイメージで誘導してみると、何とか取り込みに成功した。見れば、背中の張りが強いオス、それも本日最長寸のヤマメだった。
●尺には足らないが、♂ヤマメの29cm●
その後は粘ってみたが、この淵では続く魚はとうとう出ずじまいだった。
その後、見えているのに行けないジレンマに耐えきれずに「放水口を超える方法はないものか?」と、アプローチを試みたが、間近で見る放水の勢いは強烈そのものだった。無理をすれば吹き飛ばされて危険にさらされそうだし、これ以上ズブ濡れになるのはもうゴメンだ。イイ魚もゲットしたことであるし、キリのいいところでもある。ここで退渓を決意するに至り、この日の釣りが終了した。
●越すに越されぬ放水口●
■ケガの功名■
夏本番に入り、どの渓でも厳しい状況下に入っている。しかし、そんな中でも20cm以上のヤマメが何とか一日楽しめるほど釣れ続いてくれたのは、ベストとは言えないまでも、
「『増水から平水へと向かい、落ち着き始める』際の、恩恵の一部と捉えるべきなのだろうか?。」とも思えてくる。
今回の釣果は、決定的な判断材料になるほどの釣れっ振りではなく、そうだと言い切れないのが苦しいところだが、少なくとも「川の防災情報」がある程度の目安になることだけは言えると思う。
今回は車で移動している時間帯での雷雨の影響が出て濁りがキツくなったようだが、それに対処するには、携帯電話版の「川の防災情報」を利用し、現地に向かう途中で再確認することが必要になってくるだろう。今後はそれを利用することで更なる確度アップを図ってゆきたいと思う。
それにしても、この日の最大魚のことである。これは細仕掛に喰ってきた魚だ。直前に転倒していなければ、竿を交換していなかっただろうから、もしかするといつもの0.3号では喰ってくれなかった魚かも知れない。そうだとすると、正しく「ケガの功名」と言ったところだろう。しかし、ケガの代償は大きい。家に帰って調べると、折れた部分の他に、割れも発見し、交換が必要なパーツは2ヶ所に渡っていた。これから修理費の捻出に苦労しなければならないのだ。