釣行機会を荒天で逃したので、今回は戦略ネタ。
■高切れ連発■
2大メーカーの上位機種では、電動リールのモーターがハイパワー化されると同時にドラグも強化され、DAIWAで言うなら500番台、SHIMANOで言うなら3000番台の中型であっても巻き糸量の問題はあるものの、対キハダマグロを謳うまでに至っている。
ボクらが完全フカセで狙うヒラマサにもパワーアップは有効なのだが、フロロカーボン・ラインが最細で6号、最太で10号を巻く、この釣りにとっては、いささかハイパワー過ぎて、今までには起こらなかった問題が起きているように思える。
シーボーグ600MJを導入するまでボクは、白石グリではダイワ・シーボーグ500ATかZ500MMをメインに、玄達瀬ではダイワ・シーボーグ750MTをメインに使用していた。
以前の500番台は、ややモーターやドラグが非力なため、そこそこの大型ヒラマサが掛かるとモーターはウンウンと唸って、巻き上げがギリギリ、もしくは停止した状態になり、ある程度ドラグを締め込んでも滑る事が多かった。
それを理解した上でラインの手繰りやポンピングを行ってカバーしたり、ドラグの強弱も魚の大きさやラインの出ている距離に合わせてその都度調整していて、その感覚はボクの体中に染みついていたが、トラブルの多いリールだけに常に「長くは使えないだろう。」と常に意識していた。
一方の750番には、今はもう無いがCCMというカスタムショップで「ドライカーボン・ワッシャー」を装着してもらい、「滑らせながら巻き取る」電動リールに最適なフィーリングが気に入っていたので、これまたやり取りの感覚はそれ用で染みついていた。新品はもう入手できないので、ワッシャーがヘタリ気味になると、他のリールに着いていた物を移植して延命してきたが、それも尽きて最後の組も最終段階になってスムーズさを失っていた。
こんな状態だったから、シーボーグ600MJの登場は大歓迎だった。実際、昨年の導入後すぐに119cmをゲットし、DAIWA製品の中では引っ掛かりの少ないドラグ・フィーリングに納得した次第だ。
但し、これはラインを出す(緩める)側の話。使い込む内に、これまでに染みついた感覚やクセで操作しているとトラブルに見舞われるようになった。実は、今まで経験した事の無いペースで「ラインの巻き切れ」が起こっているのだ。
「巻き切れ」とはリール側の強力な巻き上げ力でラインを引きちぎってしまう現象の事だが、下記の2つに起因するモノが殆どだ。
1.実釣時にラインの出し入れを繰り返し、何度か魚を掛けるとラインが食い込んで、そこに糸潰れが発生し、それが酷くなるとキズに近い状態となって、やり取りの最中にそこで切れるというパターンで、これは海中に入った部分で高切れが起こる。
2.大型魚の締め込みに遭った際、その力とリールの巻き上げ力でスプール上でラインが強烈に食い込み、同時にラインそのものが縮もうとする力が加わって、食い込んだ部分そのもので起こる高切れで、空中故に「バチンッ!」と大音響を伴って切れる。
これまでも、上記に起因する高切れが起こる確率は0ではなかったが、主に根掛かりを切るためにドラグをフルロックにしてリールを強制的に巻き上げた際に発生した事が殆どだった。だが、強力なモーターと強力なドラグを搭載した600MJを使うようになってからはヒラマサを掛け、「いつもの感覚」で操作してたのにも関わらず、今シーズンだけでも、スプール上での高切れを白石グリで二度、玄達瀬では一度の計三度も経験している。
その際、どのように操作したかは記憶しているが、全て「ドラグをもう少し効かそう。」と、いつもの感覚で数ノッチ分を増し締めした後の高切れだった。
以前に比べると改善されているように思うが、ダイワのドラグは放出時に引っ掛かる傾向がある機種が多い。それに加え、恐らくドラグ設定がPEラインの6~8号でキハダマグロ等を釣る事を前提としているようなので、より強度の低いフロロカーボンライン使用時では、「美味しい部分」の帯域が狭くなるのだと思う。だから少し締めるだけで思った以上に強まり、フルロックに近い状態になるのだと思っている。従って、やり取りの最中で締めたくなった際は1ノッチずつ慎重に操作する事を心掛けねばならない。
■ドラグチェッカー■
巻き切れを防ぐには正確なドラグ設定が必要になる。そこで不可欠なのがドラグチェッカーと言う器具になる。
●ドラグチェッカー(5kgタイプ)●
以前の記事では「白石グリでは4~6kgに設定している。」としたが、今やそれはシーボーグZ500MMや500AT基準での話であり、この設定を600MJに適用すると、効き過ぎになる事が解って来た。Z500MMや500ATのドラグは、玄達瀬の大型ヒラマサが掛かると、全く止まらない事もあるので、チェッカー上ではその数値であっても「最初のとっつき」であり、滑り出して以降はだらしなく滑っていたように今では思える。
ドラグ設定の基本はライン強度の1/3が基本とされている。フロロカーボンの強度は一般に、6号で9.9kg、7号で11.3kg、8号で13.6kg、10号で15.9kgと言われているから、1/3理論に基づく設定は、6号ライン=3.3kg、7号ライン=3.76kg、8号ライン=4.53kg、10号ライン=5.3kg程度となる。
因みに実釣時にボクはラインより太いハリスを結んでいるが、それは耐衝撃と根ズレ対策なので、実際のヒラマサへの対応はラインが負担していると考えているから、ドラグ設定上はハリスの強度を考慮していない。
また、自転車の後輪に付いている変速機付きのフリーホイルと同じ理由で、スプール上のラインの残量でドラグ値は変化する。スプール一杯のところに対して、アタリが出たところでは割増しになっている事を覚えておかなくてはならないから、ラインが出ていない状態での締め過ぎは注意が必要になる。
ドラグチェッカーでの計測は本来、ガイドにラインを通した状態で計測した方が正確になる。だが、その場合二人がかりで計測せねばならず、船下の攻防で一旦緩めた後のやり直し作業は大変だ。従って作業のし易いリール前に引き出しての計測が現実的だが、基本的にラインを出すのは良くないヒラマサが相手であるし、フロロカーボンラインのショック吸収力はPEラインより上なので、やや締め気味としたい事もあって、ボクは今のところ、1/3値そのままを基準に「根が荒い」等、海底の地形に合わせて調整の試行錯誤を重ねている。
但し、長いロッドは、より放出抵抗が大きくなるので、数%程緩めておいた方が良い。余談だが、近年、ボクが3m以上のロッドを使わなくなった理由は、ここにある。
尚、ドラグ構成枚数が5枚の500MJ-AT(同じドラグの500MJを含む)が、600MJと同じ傾向になっているのかを各船長に聞くと、やはり不用意に締めた結果の高切れが多発しているそうだ。だが、ボク自身はまだ一度しか使用しておらず、また、大型を掛けていないので、これについての見解は追ってお伝えしたいと思う。
まぁ、一人の完全フカセ釣り愛好者の声は届かないと思うが、「こんな神経を使わなくても良い完全フカセ専用リールの開発を!」というのがホンネだ。