昭和15年12月28日朝日新聞
正月料理の伊達巻の調味料として禁制のサッカリンを用いたのが発覚し、保存していたサッカリン1万gはその筋は押収され廃棄処分に付されたという。甘味欠乏の今日、さりとて惜しいものである。1gのサッカリンは砂糖の800gに匹敵する甘味量を有するから1万gのサッカリンは1万8千斤の砂糖、これを現今の配給量一人一日あたり0.6斤の割りにすると3万人分に相当する。
私は化学技術者で10年ほど前研究用として入手した10gのサッカリンの残余を探し、これを家庭調理用として使っている。新体制下甘味不足の嘆声あるところに紅茶に、煮物に、お汁粉に充分に味覚を満足させ、しかもその所要量は一ヶ月に2gも出ない。元来砂糖は含水炭素の一種として栄養を有しているがサッカリンにはそれがない。しかし砂糖を用いるのが栄養を取るのが主たる目的でなく、味覚を満足させるための調味料として用いられていると言って差し支えない。
しからば栄養価無く、無害にして調味効果は絶大なサッカリンを商品として食料品に使用禁止されたのはなぜか?
それは平時の砂糖の生産量が豊富な時代に砂糖の販路を保護し,税源を保持せんがためであったことは周知の事実である。今や甘味不足に悩む時政府は速やかにサッカリン使用を解禁して砂糖を節約と甘味満足の一石二鳥の妙策を取られたい。これほど代用の価値の大きいサッカリンが古い法規の犠牲となって廃棄処分になされること悲しむ。
時局が切迫し、日常の必要欠くべからざる砂糖の不足はサッカリンを使用するように暗に誘導しているようである。法を守らせようとする警視庁衛生課と庶民の間に報道は板ばさみとなる。
正月料理の伊達巻の調味料として禁制のサッカリンを用いたのが発覚し、保存していたサッカリン1万gはその筋は押収され廃棄処分に付されたという。甘味欠乏の今日、さりとて惜しいものである。1gのサッカリンは砂糖の800gに匹敵する甘味量を有するから1万gのサッカリンは1万8千斤の砂糖、これを現今の配給量一人一日あたり0.6斤の割りにすると3万人分に相当する。
私は化学技術者で10年ほど前研究用として入手した10gのサッカリンの残余を探し、これを家庭調理用として使っている。新体制下甘味不足の嘆声あるところに紅茶に、煮物に、お汁粉に充分に味覚を満足させ、しかもその所要量は一ヶ月に2gも出ない。元来砂糖は含水炭素の一種として栄養を有しているがサッカリンにはそれがない。しかし砂糖を用いるのが栄養を取るのが主たる目的でなく、味覚を満足させるための調味料として用いられていると言って差し支えない。
しからば栄養価無く、無害にして調味効果は絶大なサッカリンを商品として食料品に使用禁止されたのはなぜか?
それは平時の砂糖の生産量が豊富な時代に砂糖の販路を保護し,税源を保持せんがためであったことは周知の事実である。今や甘味不足に悩む時政府は速やかにサッカリン使用を解禁して砂糖を節約と甘味満足の一石二鳥の妙策を取られたい。これほど代用の価値の大きいサッカリンが古い法規の犠牲となって廃棄処分になされること悲しむ。
時局が切迫し、日常の必要欠くべからざる砂糖の不足はサッカリンを使用するように暗に誘導しているようである。法を守らせようとする警視庁衛生課と庶民の間に報道は板ばさみとなる。