■ 数年前のこと、東京で開催されたあるセミナーで興味深い調査結果が報告されました。
宮城県内のある都市(確か仙台だったと思います)の小学校の子供達にあるミッションが課せられたのです。それは、学校の近くの老人福祉施設のおじいちゃん、おばあちゃんと知り合いになっていろいろ話しをするというものでした。
内気でなかなか話し掛けることができない子供には、施設の職員がサポートして、何回か通ううちにみんなおじいちゃん、おばあちゃんと知り合いになって学校での出来事などを話すようになります。
親しくなったおばあちゃんがある日突然いなくなってしまう・・・。おばあちゃんが亡くなってしまったことを知らされると、子供達はポロポロ涙をこぼして泣き出してしまいます。寂しさ、喪失感を初めて感じる子供達。
さて、冒頭の興味深い報告というのは施設に通ってお年寄りといろんなことを話すようになって、子供達の成績が向上したということなんです。この調査をしたのは主に学習参考書などを出版している会社でした。
自分の気持ちを相手に伝え、相手の話を聞く。内容を共有して一緒に喜んだり悲しんだりという、コミュニケーション力が次第についてくるということなんでしょう。そのことが成績の向上に繋がっているということでしょうか。成績向上の理由をこのように、コミュニケーション力に拠るなどと単純に捉えることはできないのかもしれませんが、非常に重要な能力だと私は思います。
核家族化の進行、地域の人たちの交流の希薄化などに伴って、普段子供達がお年寄りと話す機会が減ってしまっているんですね。お年寄りに限りません、友達とも、家族とも会話する時間が減ってきているのではないか、と思います。客観的なデータに拠っているわけではなく、私の印象ではありますが。
私が子供のころには学校から帰ってくると暗くなるまで外で友達と毎日遊んだものだ、と書きましたが、今の子供達は塾に通っていたり、自室でテレビを見たりゲームをしたりして過ごすことが多くなっている、と思いますから。
このような生活環境が子供達のコミュニケーションの機会を減らし、その能力の発達を阻害してしまっているのではないか、と危惧します。
ところで、過日全国の小中学校で一斉に行われたテストの結果を公表するとか、しないとか、今話題になっています。大阪は全国平均より得点が低いとか、それが教師のせいだとか、知事と教師のやりとりをテレビで放送していましたが、そんなことだけを論じていたのでは、プレッシャーを感じながらテストを受けた全国の子供達がかわいそうです。
もっと今後の教育環境の改善に繋がるような内容を把握しないと意味がないのではないか。結果をいろんな観点から分析すれば、中には有意差が出てくるものもあるのではないかと思います。
富山県は持ち家率が高くて、床面積も大きいことから、お年寄りとの同居率も高いと思います。成績が全国でトップクラス*産経新聞のウェブサイトよりなのはこのお年寄りとの同居率の高さに拠るのではないか、と思うのです(国語の成績:小学生4位、中学生3位)。
*http://sankei.jp.msn.com/photos/life/education/080829/edc0808291713002-l1.jpg
先に紹介した調査報告から、おじいちゃん、おばあちゃんと同居している小中学生はもしかして、成績がいいのではないか、という仮設からの推測ですが。
まあ、どんな問題か出題されたのかわかりませんが、塾に通って解答の「テクニック」を練習している子供たちのほうが成績がいいのかもしれませんね。
結論も曖昧なまま、冗長な文章を書いてきてしまいました。このまま書くとまだ長くなってしまいそうです。結論のみ書きましょう。
結論:社会生活で重要なのはコミュニケーション。その能力は子供のころの生活環境で決まる。子供達にいろんな人達と交流する機会を意識的に増やしてあげよう。