透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

室生寺の奥性

2010-02-21 | A あれこれ



■ 先日、塩田平の古刹、前山寺の三重塔について書きました。長い参道を歩き、石段を何段も上って三門へ。その先に更に続く石段越しに三重塔を見たとき、室生寺の五重塔を思い浮かべました。

室生寺を訪ねたことはありませんが、土門拳の写真集などで石段の先の五重塔を見上げるアングルは馴染みです。

今日は久しぶりの休日。日本名建築写真選集に収録されている「室生寺」の写真を観ながら工藤圭章氏の解説文を読んでみました。

**室生寺の伽藍の特徴は、堂塔が山腹に散在することである。そして、それらの建物が段状になり、左右に見え隠れする。**

室生寺は慎み深く里山の深い緑に隠れていて全貌を一望することは出来ません。都市の中心にあってランドマーク的な存在のヨーロッパの寺院とは対照的です。自然の中にひっそりと佇む堂塔の姿は日本人の建築観に合っているような気がします。

日本名建築写真選集 全20巻は92年1月に刊行が始まりました。手元に本が届く度に写真には一通り目を通しましたが、解説や資料はほとんど読んでいませんでした。

昨年末になぜか古今東西について考え、日本人の東志向に気が付き、更に辺境というか「奥」に惹かれる心性、メンタリティーに注目するようになりました。それから山里の寺院の伽藍配置が気になりだしたのです。で、山岳寺院としてつとに知られている「室生寺」の解説文を読んでみたという次第です。 

伽藍配置図によると、室生川に架かる太鼓橋を渡ってすぐの正門から、鎧坂、雪の金堂、弥勒堂、本堂、そして有名な五重塔、奥の院への石段、そして奥の院御影堂へ、その距離約500m! やはり「奥」なんですね~。

室生寺はシャクナゲが有名ですね。石段の両側に咲く濃いピンクのシャクナゲを前景とする五重塔の写真が載っています。

室生寺、いつか訪れてみたいです。


 


「からだのままに」を読んだ

2010-02-21 | A 読書日記


 南木佳士の小説やエッセイは単行本ではあまり読んでいないが、文庫化されるたびに買い求めて読んできた。一昨日(19日)久しぶりに書店へ出かけて、文春文庫の棚を探して『からだのままに』というエッセイ集を見つけて購入した。昨日の夕方カフェマトカにて読了。

カバーの折り返しのリストをみると前作は『こぶしの上のダルマ』だ。その前は『冬の水練』(過去ログ)。

**群馬県嬬恋村で生まれ、十三歳まで育った。東京や東北での学生生活を終えた直後より信州佐久平に住んでいる。気がつけば五十代半ばの身の、四十年あまりを浅間山麓の北と南に置いたことになる。** 収録されている「浅間山麓で書く」というエッセイの書き出し。

幼いとき母親を亡くして祖母に育てられ、東京の郊外の進学校を卒業、東北地方の大学の医学部に進んで・・・。医者になってから著者はパニック障害からやがてうつ病に・・・。 健康の回復を得て登山を始めて・・・。

エッセイでは著者の半生が繰り返し綴られる。著者自身あとがきに**読み返してみるとおなじ題材の繰り返しが目立つ。** と書き、**しかし、書くときの状況によって扱いは微妙に異なっている。** と続けている。それで、文庫化されるたびに読んできた。

秋の日の深夜から明け方にかけて、机上の明かりだけで読むエッセイ。読むといつも心が落ち着く・・・(と以前も書いたかな)。