透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「八朔の雪」高田 郁

2017-03-08 | A 読書日記

みをつくし料理帖シリーズ全10巻 高田 郁/ハルキ文庫
「八朔の雪」
「花散らしの雨」
「想い雲」
「今朝の春」
「小夜しぐれ」
「心星ひとつ」
「夏天の虹」
「残月」
「美雪晴れ」
「天の梯」



■ 大坂生まれの澪(本のカバーに描かれている女性)は八つの時に水害で両親を亡くしていた。奉公に出た大坂の料理屋は火事に遭い、江戸店(たな)の主の佐兵衛は行方知れずに。江戸店は潰れ、料理屋の主人の嘉兵衛は落命・・・。不運が重なって、十八の澪は奉公先の女将だった芳と江戸は神田金沢町の割長屋で暮らし、神田明神下御台所町の蕎麦屋「つる家」で働いている。

つる家の店主の種市(娘のつるを十七で亡くしている)、常連客の小松原、医師の永田源斎、澪と同じ長屋に暮らすおりょうと亭主の伊佐三。皆に助けられながら澪は日々料理の研鑽を重ねる。

**「ついちゃあお澪坊、お前さんがこの店をやっていっちゃあくれまいか」(中略)「ただ店の名前の『つる屋』ってのだけは、そにままにしちゃあくれまいか」**(142頁)あるとき種市に頭を下げられた澪はつる屋の暖簾を守り、繁昌されることを心に誓う。

やがて澪の「とろとろ茶碗蒸し」が江戸の料理番付で関脇になる。江戸一番と言われ、番付の東の大関に選ばれている日本橋の登龍楼がつる屋の近くに店を出す。

**いきなり初星を取っちまったんだ。妬み嫉みは買って当然。寄って集って引き摺り下ろそうとするのが人情ってもんさ」**(214頁) 

ある夜、つる屋は付け火で焼けてしまう・・・。

次々襲う試練に立ち向かう澪を応援しながら読む。

店主の種市は優しい人だし、源斎や小松原もなにかと澪の力になる。芳は凛と振る舞う。長屋のおりょうも好い人だ。澪の周りの人たちの情に読んでいて涙が出てしまう。

澪は幼なじみの野江ちゃんとは別れたきりだった。その野江が思いがけないかたちで澪を助ける・・・。

これは先が楽しみ。第2巻「花散らしの雨」に進む。