■ 松本清張短編全集 全11巻を読んでいる。既に9巻読み終え、残すところあと2巻となった。第8巻『遠くからの声』を読み終えたが、収録されている8作品では「いびき」と「一年半待て」がおもしろかった。
「いびき」
**「仙太、おめえのいびきは娑婆にいる間は泰平だがの、いったん牢にへえったら、無事にはすまねえぜ。」**(129、130頁)
**「いびきの高え奴も同じこと。おれの知った奴ぁ、ただの一晩でうるさがれて、あくる朝は仏さまに早変わりよ。(後略)」**(131頁) 仙太はつまらぬことから博打うちを一人殺し、牢屋入りに。一晩でも無事に牢屋の中で過ごせるかと思うと気が気ではない。
奉行所の判決で三宅島遠島となり、仙太は喜ぶ。いびきがうるさいからといって殺されることはない。三宅島では平穏な日々が続く。だが半年後・・・。
「一年半待て」
裁判の一時不再理、判決の確定したものに対しては、あとで被告に不利な事実が出てきても裁判のやり直しはしない。このことを逆手に取った女。夫に嫌気がさし、別の男に好意を抱いた女がしたこととは・・・。
松本清張は発想力・構想力に秀でた作家だった、と思う。