透明タペストリー

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「高梁川流域の火の見櫓」

2023-01-04 | A 火の見櫓っておもしろい

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 岡山県在住の火の見ヤグラー・Oさんから高梁川流域連盟機関誌「高梁川」第八十号に掲載された「高梁川流域の火の見櫓」という研究レポートの抜刷を送付していただいた。拙著『あ、火の見櫓!』(プラルト2019年)を購入していただいたご縁で、Oさんとは火の見櫓情報を交換させていただいでいる。

Oさんは2019年12月に岡山県内の火の見櫓の調査を開始され、2022年5月中旬までに702基の写真撮影と位置情報を記録されたとのこと。2年半でおよそ700基とは凄い。岡山県にも火の見櫓が多数あることが推察される。

Oさんは**流域各地で火の見櫓に対する関心を喚起し、欲を言えば新たな調査研究や保存への流れを生み出すことである。**と寄稿の意図を書いておられる。私も同じ思いでこれまで「広報活動」を続けてきた。

レポートには何基もの火の見櫓の写真が掲載されているが、所変われば火の見変わるで、珍しいものがある。電柱を支柱に転用した火の見梯子や、円形の見張り台に比して極端に小さい円形、陣笠のような屋根を載せた火の見櫓(私の分類名だと3柱〇〇型トラス脚)は観たいなぁ、と思う。後者は見張り台の手すりのところから細い鋼管(?)柱を垂直に建て、途中から陣笠様の屋根の縁に向かって内側に曲げ伸ばしている。そう、「笑っていいとも」の友だちの輪のポーズの腕のように。

レポートには半鐘も取り上げられていて、刻銘により鋳造年が延宝5年(1677年)だと確認できるものもあるとのこと。火の見櫓の建設年よりかなり古い半鐘が吊り下げられている事例は私も確認したことがある。寺院の鐘として鋳造されたものと思われるが、それがどのような経緯で火の見櫓の半鐘として使われるようになったのか、興味深い。史料が見つかれば明らかになるのかもしれない。

Oさんは火の見櫓について、地域史への位置づけへと発展させていくという展望を示しておられる。

火の見櫓は地域のトータルな防災システム(ハードとソフトの両面)の中で、更に地域史の中でどう位置づけられるのか、遠大な研究課題の提示だ。

広くて深い火の見櫓の世界に出口なし。


*1 高梁(たかはし)川は岡山県の西部を流れる一級河川。


火の見櫓の形の分類(修正)

2023-01-04 | A 火の見櫓っておもしろい

 火の見櫓の分類について考える。

火の見梯子か火の見櫓か、判断に迷うものがある。「櫓」に必要な条件は柱が3本以上あること。櫓は立体構造であって、柱2本では立体構造を構成し得ないから。だが、柱が3本でも櫓ではないなぁと考えざるを得ないものもある。そう、柱3本は火の見櫓の必要条件ではあるが、十分条件ではない。梯子か櫓か、それが問題。


   
火の見柱梯子掛け(左:松本市梓川)と火の見梯子(右:長野県富士見町境)

火の見櫓の形を網羅的、体系的に分類する。大分類の観点は柱の本数。柱が1本なら火の見柱だが、柱が2本でもすべて火の見梯子とはならないことに注意を要す。2本の柱と横架材(柱を繋ぐ部材)で梯子としての用をなさないフレームを構成し、そこに梯子を掛ける2本柱梯子掛けという形もある。また火の見柱にも梯子を掛けた、火の見柱梯子掛けもある(①左)。

以下柱の本数を観点にした火の見櫓の分類


柱1本

 
火の見柱(長野県高山村)           火の見柱梯子掛け(長野県中野市)


柱2本
    
両基とも全く迷うことなく、火の見梯子として分類することができる

   
2本柱梯子掛け  (左:山梨県甲州市大和町   右:山梨県早川町)

2本の柱と横架材によってフレームを構成して、そこに梯子を掛けている。


柱3本
 
左:山梨県北杜市 右:山梨県北杜市

柱3本だから火の見櫓、だと単純に分類しても論理的整合性は取れると思う。だが、それではどうもしっくりしない。梯子の支柱と後ろの柱が構造上等価な役割を果たしていない。梯子の後ろの柱が無くても構造的には成立する。後ろの柱は梯子が傾かないように支えるための補助、控え柱だ。この形を火の見梯子控え柱付きとして、③の火の見梯子とは区別する。


柱3本
 
左:長野県茅野市 右:長野県塩尻市

分類上、悩ましい形だ。⑤とは違って、梯子と後ろの柱が横架材で繋げられ、更にブレースまで設置されている。櫓の構成上、3本の柱が等価、同じ役目を負っている。だから論理的にも構造的にも火の見櫓だと判断して問題はなく、⑦の火の見櫓と分類上同じだと見做しても良いと思う。だが、区別したい。論理的な整合性が取れないことは承知の上で⑥を3柱火の見梯子としたい。


柱3本
 
左:長野県塩尻市 右:長野県朝日村

これは、火の見櫓。ただし3つの構面の内、1構面が梯子になっていて、3つの構面にブレースが設置されている⑧とは櫓の構造が違う。この形を示す名称・・・。1構面が梯子の火の見櫓ということで1構面梯子火の見櫓

追記:細かく分類する場合、柱3本の櫓で1構面が梯子の場合は1構面梯子3柱櫓としたい。柱4本で2構面が梯子の場合があるなら、2構面梯子4柱櫓。ただし名称は再考の余地あり。


 
左:長野県上田市 右:長野県茅野市

各垂直構面が同じ基本的に構成。これは火の見櫓、全く迷うことはない。名称はコードナンバー的に左が4柱4〇型(長野県の場合、東信地域ではこの型が最も多く、7割近くを占める)、右は4柱44型(南信地域ではこの型が最も多く、全体の7割近くを占める。)