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■『「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ』鈴木正彦・末光隆志(中公新書2023年)を読んだ。8月は小説ばかり5冊読んだが、9月になって初めに読んだのは新書だった。
生物たちはお互いに弱点を補い合う「共生」という戦略で淘汰されることなく生き残ってきた。細胞からヒトまで、いくつかのレベルで共生の事例が語られている。
例えば次に箇条書きしたような内容。
・ミトコンドリアと葉緑体は外界の細菌が細胞内に入り込んで共生したという共生説(第二章)
・深海動物・チューブワームの細胞内に共生している硫黄酸化細菌(第四章)
・昆虫と植物の騙し合い(第五章):植物は昆虫に蜜だけ与えて逃げられることなく、できるだけ花粉をつけて欲しい。昆虫は花粉はどうでもいいから、楽に蜜だけ盗りたい・・・。そうか、そんな駆け引きをしているのか。
・植物と菌の共生(第六章)
・ヒトと腸内細菌の共生(第七章):腸内細菌は健康面だけでなく感情面にも影響しているという。腸内細菌を駆除した無菌マウスでは落ち着きがなくなり、学習能力が低下することが見られたとのこと。「脳腸相関」。そうなのか、やはり食事って大事なんだなぁ。
なかなか興味深い内容だった。生物ってしたたか。