透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ふみの日の切手

2024-08-28 | D 切手


 知人から送られてきた絵画展の案内カードに貼られていた切手。

調べると2024年7月23日(毎月23日はふみの日)に発行されている。郵便に関係する10種類のイラストの切手で1シートになっている。この切手はその内の1枚で郵便用指示ばかりが描かれている。他には制帽や郵便物集配用かばん、通信日付印など、昭和期以前のものが描かれたイラストがある。

10月1日から郵便料金が変わる。定形郵便物は50gまで110円(現在は25gまで84円、50gまで94円)、通常はがきは85円(現在は63円)になる。

手元にある切手を複数使って変更後の金額にぴったりなればいいけれど、ならなければうまく組み合わせて超過金額を出来るだけ少なくして出すことにするしかない、かな。


 


「嫉妬と階級の『源氏物語』」を読む

2024-08-28 | A 読書日記


『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫2002年)
『源氏物語の教え もし紫式部があなたの家庭教師だったら』(ちくまプリマ―新書2018年)
『やばい源氏物語』(ポプラ新書2023年)

 源氏物語について書かれた本はできるだけ読もうと思っている。大塚ひかりさんにも源氏本が何冊かあるが、これまでに3冊読んでいる。先日書店で目にした『嫉妬と階級の『源氏物語』』(新潮選書2023年)を買い求めて読んだ。


『嫉妬と階級の『源氏物語』』 なるほど、確かに『源氏物語』の長大な物語は「嫉妬」で始まる。光源氏の生母・桐壺更衣は身分が低いけれど帝の寵愛を受ける。そのために上位の女性たちから嫉妬され、陰湿ないじめもされて、病に臥して亡くなってしまう・・・。

『源氏物語』には多くのヒロインが登場するけれど、「嫉妬」という言葉からまず浮かぶのは六条御息所。身分も高く、美人で教養もあるのに、光源氏の正式な妻にはなれず、嫉妬から生き霊となって夕顔を変死させてしまうし、正妻の葵の上も取り殺してしまう。大塚さんは他の嫉妬例をいくつも挙げている。因みに六条御息所は女性に人気があるようだ。また、夕顔は男性に人気のあるヒロインとのこと(確か瀬戸内寂聴さんの本に出ていたと思う)。

本書を読むと「嫉妬」は『源氏物語』を読み解くのに実に有効な切り口だということがよく分かる。

以前書いた記事から引く。**『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫)の解説文に小谷野 敦(比較文学者)さんは**その解釈には専門家のなかにも一目置いている人たちがいる。**(292頁)と書き、さらに**『源氏物語』などおそらく全文を諳んじているはずだし(後略)**(292頁)とまで書いている。**

大塚さんは『源氏物語』を中学生の時に読んでいたということだし、個人全訳もしている(ちくま文庫全6巻)から、長大な物語を細部まできちんと把握しているだろう。だからこそ、縦横無尽な論考ができるのだ。

大塚さんは本書の「おわりに」で、浮舟を取り上げて、次のように書いている。

**時に作家は、登場人物に自己を仮託しながらも、その登場人物が作家の思想を超えて、思いも寄らぬ境地に達することがあるものだ。その境地に達したのが、最後のヒロイン浮舟ではないか。**(242頁)

**誰の身代わりでもない自身の人生を、心もとない足取りながらも歩もうとする様は、今に生きる私にとっては、不思議なすがすがしさと開放感を覚える。**(243頁)

自分だけは自分を見捨てるべきではない。大塚さんが紫式部メッセージだとするこの言葉、覚えておきたい。

国文学者で平安文学、中でも「源氏物語」と「枕草子」が専門だという三田村雅子さんは、NHKの100分de名著「源氏物語」の解説で物語最後のヒロイン浮舟が好きだと言っていた。浮舟には紫式部の願いが投影されているとも。そう、浮舟は紫式部が望んだもう一つの人生を歩んだ女性だった。