■ 歴史には疎いと何回も書いた。高校時代の同級生IT君はここ何年も日本史に関する本を読んでいて、古代史から近現代史まで実に詳しい。彼のように日本の通史を詳しく学ぶのは無理だとしても、せめて昭和史、その中でも第二次世界大戦の関連本を読もうとしばらく前から思っている。そのように思い始めると新聞の書評欄でも、新刊本の広告でも第二次世界大戦の関連本が目に入るようになるから不思議だ。
『奪還 日本人難民6万人を救った男』城内康伸(新潮社2024年)を読んだ。本書のことを知ったのは朝日新聞の読書面だった。
本書の「はじめに」によると、終戦時、北朝鮮地域に約25万人の日本人が住んでおり、終戦前後に満州から約7万人の避難民がなだれ込んだという。
終戦直後、進駐したソ連軍によって北緯38度線が封鎖され、北朝鮮に閉じ込められた「避難民」たちの生活が次のように描かれている。
**栄養失調と劣悪な環境下での集団生活。冬が近づくにつれて発疹チフスなどの感染症が猖獗(しょうけつ)を極めた。咸興(かんこう)では同年(*1)八月から翌年春にかけ約六千三百人が死亡した。**(4頁) *1 1945年(私が付けた注)
このような状況下、北朝鮮から集団帰国を実現させた人物がいた。松村義士男という一民間人だ。松村はソ連軍、北朝鮮当局などを相手に、個人(協力者はいたが)で交渉し、38度線以南に避難民を送りこむ工作を続けた。その周到にして大胆な行動に驚かされた。
終戦直後に北朝鮮に取り残された日本人を身を賭して帰還させた人物がいたことを本書で知った。どの時代にも凄い人はいるものだな、と改めて思う。本書の著者・城内康伸さんは多くの資料を基にその一部始終を描いている。
難局を打開し、自らも帰国した松村義士男。その後の人生の詳細は全く不明・・・。