透明タペストリー

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C5「平安人の心で「源氏物語」を読む」

2023-01-18 | G 源氏物語

 「読んでから見るか、見てから読むか」 これは今から45,6年も前、1977年(昭和52年)の角川映画「人間の証明」(森村誠一原作)のキャッチコピー。この作品は映画も見たし原作も読んだが、どっちが先だったか覚えていない。私の場合、原作を先に読んでいて、後に映画化された作品を見ることが多いように思う。昨年末に見た二宮和也さん主演の映画『ラーゲリより愛を込めて』も原作の『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』辺見じゅん(文春文庫1992年第1刷、2021年第23刷)を先に読んでいる(過去ログ)。

前置が長くなった。


『平安人の心で「源氏物語」を読む』山本淳子(2014年第1刷、2021年第8刷)C5(図書カードで買い求めた5冊目の本)を数日前から読んでいる。昨日(17日)も朝カフェ読書でこの本を読んだ。これは平安文学研究者である山本淳子さんの源氏物語解説書。

「源氏物語を読んでからこの本を読むか、この本を読んでから源氏物語を読むか」

私は先にこの本を読んで、その後で源氏物語を読むのが良いと思う。それも全て読み終えてからではなく、源氏物語のある帖を読む前にその帖について書かれた該当ページを読むのが良いだろう。源氏物語を読み始める前にこの本のことを知っていたら、そうしていたと思う。

**『源氏物語』をひもといた平安人(へいあんびと)たちは、誰もが平安時代の社会の意識と記憶とでもって、この物語を読んだはずです。千年の時が経った今、平安人ではない現代人の私たちがそれをそのまま彼らと共有することは、残念ながらできません。が、少しでも平安社会の意識と記憶を知り、その空気に身を浸しながら読めば、物語をもっとリアルに感じることができ、物語が示している意味をもっと深く読み取ることもできるのではないでしょうか。本書はその助けとなるために、平安人の世界を様々な角度からとらえ、そこに読者をいざなうことを目指して作りました。**(はじめにⅳ) 山本さんはこのようにこの本の意図、目的を書いている。

この本で山本さんは源氏物語全54帖についてそれぞれの帖ごとを基本に4ページにまとめている。ただし長い帖では前半と後半に分けている。きっちり1ページにあらすじ、続けて3ページに平安貴族の暮らしぶりや、社会の状況、恋愛事情、源氏物語に書かれている和歌のこと等々をくだけた表現、言葉を交えつつ、全体としては折り目正しく、そして読みやすく、分かりやすく綴っている。

二十四 平安人の心で「胡蝶」巻を読む「歌のあんちょこ」。ここには平安貴族社会では和歌が必需品で、歌づくりの手引書(あんちょこ)として『古今和歌集六帖』が紹介されている。

**(前略)相手が『古今和歌集六帖』で来るならこちらもと応じたのだ。片や若柴がほしい光源氏、片や孫を守りたい尼君。『古今和歌集六帖』を間にしての、知性と情を総動員した丁々発止だった。**(99頁) この文章の前に書かれている光源氏と尼君の和歌のやりとりを省略したので、上の引用箇所だけでは、何のこと? となってしまうだろうが、ふたりは『古今和歌集六帖』に収められいる歌を下敷きにした和歌の応酬をしたのだ。へえ、そうなのか、と、納得というか、驚いたというか・・・。

山本さんのように平安文学に通じた人が源氏物語を読むのと、私のような全く何も知らない者が読むのとでは立ち上がってくる景色が全く違うだろう。私は五里霧中、景色が見えぬまま54帖を通過しただけだから、源氏物語を読んだとはいえないよなぁ・・・。関連本をこれからも読んで、霧の向こうに少しでも景色が浮かび上がるようにしていこう・・・。


 



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