透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

細密な描写に宿る独特の美

2008-10-05 | A あれこれ

 
ミュージアムショップで買い求めた絵はがき

「ミレイ展」@Bunkamura ザ・ミュージアム

http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/08_jemillais/list.html

「落穂拾い」「晩鐘」「種まく人」のミレーではなくてミレイ、イギリスビクトリア朝絵画の巨匠。夏目漱石もイギリス留学中にミレイの作品を観たそうですが、この画家のことは何も知りませんでした。しばらく前にNHKの「新日曜美術館」で紹介されていましたから、展覧会のことは知ってはいましたが。

東京の友人に誘われて昨日(4日)渋谷の文化村へ観に行きました。展覧会は7つのセクションで構成されていて80点近くの作品が展示されています。目玉はなんといっても「オフィーリア」。シェイクスピアの「ハムレット」の悲劇のヒロインを描いたというこの作品は漱石の「草枕」にも出てくるとパンフレットに紹介されています。「ハムレット」も知りませんし、「草枕」も記憶の彼方・・・。 

**ミレーのかいたオフェリアの面影が忽然と出て来て、高島田の下へすぽりとはまった。(中略)オフェリアの合掌して水の上を流れて行く姿だけは、朦朧と胸の底に残って、棕梠帚で烟を払う様に、さっぱりとしなかった。**

手元の新潮文庫で調べてみました(パンフレットに紹介されていないところを引用しました。漱石はこの画家をミレーと表記していました)。



展覧会場で最初に観た「ギリシャ騎士の胸像」はミレイが9歳位の時のデッサンですが、ずば抜けて優れた技量の持ち主だったことがこのデッサン1枚で分かりました。

二十歳過ぎに描いた「マリアナ」(左)のなんとも艶っぽいポーズ。細密な描写がフェルメールとは違う「リアル」を伝えています。

ミレイ晩年の作品「露にぬれたハリエニシダ」(右) 若い頃とは異なる筆遣いで幻想的に風景を描いています。

この画家は人生の後半には意識的に筆遣いを変えたそうですが、その違いが展示作品からはっきり分かりました。器用な画家だったんですね。肖像画も何枚も描いていて収入も安定していたそうです。

ミレイは若い人妻と恋仲になって結婚したそうですが、その奥さんの後年の肖像画を観ると、ミレイを尻に敷いて、キッチリとコントロールしていたんだろうなと思わせる風貌でした。

「あなた、早く仕上げて、次の作品に取り掛かって!」友人は奥さんの肖像画からこんな声を聞いたそうです。緻密な描写に加えて大胆なタッチも使ったのは案外奥さんのこんな声のせいだったのかもしれません!?。


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