透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

消えゆく火の見櫓・・・

2023-09-15 | A 火の見櫓っておもしろい

(再)安曇野市穂高 4柱〇〇型 トラス脚 2023.09.13

 市民タイムス(長野県の中信地区の地域紙)で昨日(14日)報じられましたが、穂高神社の近くに立っているこの火の見櫓が解体撤去されることになりました。

黒部ダム建設工事(昭和31年着工、昭和38年完成)のための砕石場の監視塔から、旧穂高町の火の見櫓に身を転じ(過去ログ)、以来60年近く地域を見守り続けてきたのです。火の見櫓は後継の防災無線柱に役目を引き継ぎ、既に用済みとなっているとはいえ、なんとも寂しい思いです。

火の見櫓は地元の人たちの地域を愛する気持ちの象徴なんですよね。その火の見櫓が次々消えていく・・・。
 

「松本清張「隠蔽と暴露」の作家」

2023-09-12 | A 読書日記

日射しは夏、風は秋。

360
スタバで朝カフェ読書 2023.09.11

 塩尻のえんぱーくで月に1,2回のペースで開催される「本の寺子屋」の講演会。今年で12年目、とのこと。昨日(10日)の午後、文芸評論家・高橋敏夫さんの「歴史時代小説ブームの現在 ―新世代作家たちの冒険―」と題した講演を聴いた。

本題に入り込む前の余談でだいぶ時間が経って、副題の新世代作家たちの冒険について詳しい話を聴くことができなかったのは残念だった(と正直に感想を書いておきたい)。

講演で紹介された高橋さんの著書の中に『松本清張「隠蔽と暴露」の作家』(集英社新書2018年)が入っていた。で、また読み始めたが、はじめにの書き出しは次の通り。

**松本清張がかえってきた。
秘密と戦争の時代に、「黒の作家」松本清張がよみがえる。
人と社会と国家の秘密にとどくさまざまな試みを果敢に実現させた松本清張が、長い「戦後」から「新たな戦前」へと変わる今――ふたたび姿をあらわしはじめた秘密と戦争の薄暗い時代に、呼び戻される。**(12頁)

「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」 
昨年(2022年)の暮れにTV番組「徹子の部屋」に出演したタモリは徹子さんの「2023年はどんな年になるでしょう」という問いに、このように答えた。「新しい戦前」か・・・、私もこの番組を見ていて、なるほど戦後が終って、再び戦争へと向かうような状況になってしまったな、と思った。「防衛財源確保法」「防衛産業強化支援法」がいつの間にか成立したということは記憶しておいた方がよいだろう。

上掲本で高橋さんも引用文のように「新たな戦前」という表現をしていたことに気が付いた。

って、ただそれだけ。今週はこの新書を読む。


 


朝焼けの詩

2023-09-10 | E 朝焼けの詩


2023.09.10 05:19AM

 二度と来ない今日という一日を無為に過ごしてはならない。でもまあ、何か好いことあればいいな、くらいの気持ちで過ごそう。

この朝焼けが今日は好いことがあると語っている・・・。


 


「本所おけら長屋 外伝」

2023-09-09 | A あれこれ


 『本所おけら長屋』畠山健二(PHP文芸文庫)にどこまでもついていく。

2013年に始まったこのシリーズは既に第20巻まで刊行されている。第20巻で万造とお満さんの長かった恋がようやく成就した。ここまでが第一幕で、どうやら第二幕が来春(2024年春)スタートするようだ。第二幕も完結までに10年くらいかかるのかもしれない。

480
昨日(8日)書店で『本所おけら長屋 外伝』が平積みされているのを目にして、即買い求めた。で、一気読み。帯にもある通り、描かれているのは名コンビ万松、万造と松吉の出会いのものがたり。それから浪人・島田鉄斎がおけら長屋の住人になる前の出来事。鉄斎が信州生まれだということを忘れていた。鉄斎は信州人。金太がおけら長屋に引っ越してきた時のエピソード。そして、黒石藩藩主、津軽甲斐守高宗の幼名三十郎時代のものがたり。以上の4話。

印象に残ったのは鉄斎が津軽黒石藩の剣術指南役を辞し、江戸に上る途中で泊まった宿での出来事、いや事件。宿泊客が7両という大金を盗まれる。鉄斎が名乗り出た犯人を諭す。**「お天道様を見てみろ。人は、お天道様に恥ずかしくない生き方をしなければならない。お天道様はすべてお見通しなんだぞ。(後略)**(228、9頁)お天道様が見ていることを忘れてはいけない、ということは今も変わらないはず。子どものころ耳にすることがあったこのことば、小説で読んだのはおそらく初めて。


 


跳ね出し梁

2023-09-08 | A あれこれ

480
辰野町にて 2023.09.05

 学生の頃から民家が好きで全国各地の民家を訪ね歩いていた。今はすっかり火の見櫓に心奪われているけれど、民家への興味が失せてしまったわけではない。

辰野町にあるこの民家の小屋組みが前から気になっていた。小屋梁を外壁から外側に4,5尺(位だと思う)跳ね出し、先端に束を立てて母屋を架け渡している。こうすることでの軒の出を大きくし、軒下の空間を広く確保している。このようなゆったりとした造りを見ると、いいなぁと思う。

梁の高さ(レベル)を少し高くして、跳ね出し梁の先端に母屋を直接載せる、ということも出来たと思う。そんなことは大工さんは百も承知、その上で敢えてこのように組んだのであろう。では、その意図は? ダイナミックな架構を見せたかったから? 同じような架構はこの民家の近くに他にもあったと思う。再びここを訪れたら確認したい。他の民家も束を立てているだろうか・・・。


 


「利他」の生物学

2023-09-07 | A 読書日記

420

『「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ』鈴木正彦・末光隆志(中公新書2023年)を読んだ。8月は小説ばかり5冊読んだが、9月になって初めに読んだのは新書だった。

生物たちはお互いに弱点を補い合う「共生」という戦略で淘汰されることなく生き残ってきた。細胞からヒトまで、いくつかのレベルで共生の事例が語られている。

例えば次に箇条書きしたような内容。
・ミトコンドリアと葉緑体は外界の細菌が細胞内に入り込んで共生したという共生説(第二章)
・深海動物・チューブワームの細胞内に共生している硫黄酸化細菌(第四章)
・昆虫と植物の騙し合い(第五章):植物は昆虫に蜜だけ与えて逃げられることなく、できるだけ花粉をつけて欲しい。昆虫は花粉はどうでもいいから、楽に蜜だけ盗りたい・・・。そうか、そんな駆け引きをしているのか。
・植物と菌の共生(第六章)
・ヒトと腸内細菌の共生(第七章):腸内細菌は健康面だけでなく感情面にも影響しているという。腸内細菌を駆除した無菌マウスでは落ち着きがなくなり、学習能力が低下することが見られたとのこと。「脳腸相関」。そうなのか、やはり食事って大事なんだなぁ。

なかなか興味深い内容だった。生物ってしたたか。


 


火の見櫓のある風景 辰野町横川

2023-09-06 | A 火の見櫓のある風景を描く


辰野町横川にて 2023.09.05

 好きな風景でこれまでに何回も描いている。今までと違うのは蔵に近づいたこと。一番手前に郵便ポストを配置して、鈍い朱色をアクセントにした。

道路の両側で敷地のレベルが違うので、風景の構成が単純ではなく、捉えにくい。いつもなら30分くらいで終わる線描に45分かかった。蔵の屋根を支えている道路沿いの軸組を初めてきちんと描いた。いや、貫を一部描かなかった。

火の見櫓の存在感を際立たせようと、少し背を高くしたが、その効果は・・・。右側の電柱も高くした方がバランスが良かったかもしれない。

蔵の前にプレハブ倉庫が建てられ、蔵のなまこ壁が隠れてしまっているのは残念。倉庫を描かないでおくこともできるが、今の状態に合わせた。

火の見櫓が立っている集落には蔵があることが思いの外多い。両者の相性はよい。この組合せは好きだ。


 


「星」北野恒富

2023-09-04 | D 切手



今日(4日)届いたカードに貼られていた63円切手。これは? ネットで調べて今年8月に発行された「美術の世界シリーズ」第5集の1枚で北野恒富という画家の『星』という作品(一部)であることが分かった。切手とは違い、絵はかなり縦長で女性の脚元まで描かれている。

画題の「星」から、夜空の星を見ている女性の姿を描いたものと理解した。帯にも星が描かれているようだが、それを画題とするには弱い、と思う。


知人の作品展の案内カードにこの切手が貼られていた。おふたりの作品のコラージュによるブーケ、Bouquet。

yumiさんとkakuさんはユニットで作品を発表している。会場は愛知県春日井市鳥居松町の茶楽家 われもこう。昨年も同会場で作品展が開催され、遠路出かけた。だが、今年は私もスケッチ展を予定していることや、火の見櫓講座があることから行くことが叶わない。

すばらしい作品を制作し続けているおふたりの作品展が成功すること、いつか再会してあれこれ語る機会があることを願う。そう、星に願う。


 


ブックレビュー 2023.08

2023-09-01 | A ブックレビュー

420

 時の経つのは早い。今日から9月。8月は小説ばかり5冊読んだ。一番印象に残ったのは昨日読み終えた『あかね空』山本一力(文春文庫2004年第1刷、2019年第30刷)。この時代小説で山本一力さんは直木賞を受賞している。

涙無くして読めない小説をぼくは「涙小説」(過去ログ)と呼んでいるけれど、『あかね空』はまさに涙小説で、読みながら何回も涙した。

読み始めて、これは家族の絆、家族愛がテーマの小説だと思った。家族がお互いに理解し、信頼しあうことの難しさ、尊さが描かれている。

永吉という豆腐職人の若者が京から江戸に下ってきて、深川蛤町の長屋を訪ねてくる。そこで桶屋の娘、おふみと出会う。長屋で豆腐屋を始めた永吉をおふみが手伝い、やがてふたりは所帯を持つ。それからふたりの波乱万丈の人生が始まる。

ものがたりのラスト、クライマックスで傳蔵という人物が言う。**「堅気衆がおれたちに勝てるたったひとつの道は、身内が固まることよ。壊れるときは、かならず内側から崩れるもんだ。身内のなかが脆けりゃあ、ひとたまりもねえぜ」**(397頁)
読み始めて思った通りだった。この傳蔵の言葉こそ作者が読者に伝えたいことだ。

そうか、傳蔵はあの人か・・・。やはり最後は傳蔵がこの家族を大ピンチから救うんだ。

なぜこの小説を読んだのか、まだその理由は明かせないけれど、なかなかの涙小説だった。一点だけ、書いておきたい。三人の我が子に対するおふみさんのこころの動き、変わり様は今一つ理解できなかった。

他4作については省略。

鄙里はもう秋の気配。9月は何を読もう・・・。





すごい!

2023-09-01 | E 朝焼けの詩


2023.09.01 05:06AM

今朝の朝焼けはいつにも増してきれいだった。写真では分からないけれど、空はもっと青く、赤く焼けた雲とのコントラストが見事だった。少し北方向にはおもしろい形の雲が浮かんでいた(下)。

今日は好いことがある、きっとある。