都内唯一の都電、未だ下町の足として、孤軍奮闘し、何とか頑張っている。
その起点となる三ノ輪橋界隈は泥臭くさく、飾り気の無い普段着のままの下町の独特な文化を残している。
三ノ輪橋の駅はその象徴でもある、商店街が軒先並べて隣接し、惣菜やら、お祭りの屋台で見る様なお店に、ショッピングカーや自転車を曳くお客が無秩序に往来し、賑わいを見せている。
「えい!!こちとら江戸っ子でえ~い」なんて台詞で道脇から寅さんが出てくるような稲荷神社が街の雰囲気作りを演出してくれる。
向こう三件両隣、人と人の繋がりは分け隔てなく、昔ながらの人情味豊かな文化が息づいている。
この下町の臭いをたっぷり嗅ぎ、同じ日に山の手線経由で東急世田谷線(玉電)に乗ってみた。
三軒茶屋の駅舎が、スマートな新装ビルのなかに埋まり、赤い石畳の先には色も鮮やかな車両がホームに待ち受けていた。
まるでおもちゃ箱のような小さな車両であるが、あか抜けしたスタイルの制服で固めた女性の車掌さんが、にこやかな笑顔で車内へ誘導していた。
駅に電車待ちで並ぶ、乗客も、其処は三ノ輪橋とは全く違う、山の手の何となく気取った雰囲気の街であり、文化であった。
「えっつ、何で下町から、一気に山の手へ」
全く思いつきではなく吉田松陰が処刑され埋葬された回向院、それから数年後幕府の力が落ちた頃、高杉晋作らが毛利別邸である、松陰神社へ遺体を運びさってしまった。そのドラマを見たかったが、一方ではこの二つの路面電車にたまたま結びついたのである。
路面電車に誘われて