絶対安静となると、変なモノを見るようになりました。
無数の黒い虫が壁を上へ上へと這い上っていきます。
次第にゆっくりとなり、3日後にはまったく動かくなりました。
死んだように壁にへばりついている姿は、お経の文句のように見えました。
看護婦さんに聞いて、幻覚と知りました。
現実ではなく、イメージだと分かっているので楽しんでいます、
と話したら、変った方ですね、と笑ってみえました。
こんな幻覚もありました。
湯気の立つ春の野菜に埋もれたる黒き山羊あり白き山羊あり
虫が動かなくなったのは、脳漿の海に浮かんでいた脳が少し安定を取り戻し
回復してきた兆しなのかもしれません。
一番怖いのは、頭骨の割れ目から脳漿が漏れて来ることで、先生から
鼻の奥から透明な液が漏れてきませんか?と何回も聞かれました。
幸い、大丈夫のようでした。
頭骨のなかに愉快な海がある ひょっこりひょうたん島を浮かべて