兼題で、トップ賞となったこの句。「帰り花」の捉え方を考えさせられる鑑賞となりました。
・狂い咲きを突き詰めると“冥き世の灯”となる訳で、そこからの灯とは大変なものが、出て来たものですね(等)
・「冥き世」は初めは「くらき」と読めませんでしたが黄泉の国かなと想像しました。「淡彩の灯」がそこに有りそうで、「帰り花」にぴったりだと思いました(竹葉)
・帰り花は淡い灯のようです(紅)
・コロナ禍で皆の気持ちは明るくない世の中。ほんのりと灯がともったような帰り花が、一筋の希望を示しているような気がしました。敢えて「暗い」とせず「冥い」としたのではないでしょうか?(亜子)
私も最初、帰り花とはこの世の花でなく、冥土にほの光る淡々とした灯とみたて、魅かれつつもちょっと怖くてとれずにいました。
しかしそこに希望を見るといわれると 時季外れに咲く花が何かのメッセージを帯びてくるように思い始めます。
志この世に残し帰り花 亜子
作者の伴侶は生前、戦争の語り部として平和のありがたさ 素晴らしさを次世代に伝え続けました。
二つの句が響き合い、思いは途絶えず、次々と開く希望と見えなくもありません。
少し前まで、彼岸と此岸にどうしようもない隔たりを感じていましたが
大切な人との別れを経験するたび、境目がだんだん薄れていきます。
お花畑があるとも聞きます。「思い」が花になるなら、そこからのこぼれ花こそ「帰り花」といったところでしょうか。
私事ながら、本日父の23回忌でそんなことを感じました。郁子