日本男道記

ある日本男子の生き様

青菜

2008年10月12日 | 私の好きな落語
【まくら】
江戸城をはじめとして、武家地は江戸の六割を占め寺社も江戸の二割を占めていた。その敷地の大半は庭であった。これだけで、植木屋がどれほど繁盛したかわかる。染井、巣鴨に植木商が広がっていて、その植木を各地、各屋敷に植え替えながら植木屋は大活躍だった。鳶と同じように、江戸の職人のスターだと言っていいだろう。
だからこそ、庭をもつ旦那衆やご隠居は植木屋を大事にした。汗ばむ季節、植木屋が懸命に働いてくれるのを見て、夏の代表的な肴である鯉のあらいと柳影(やなぎかげ 味醂と焼酎を合わせた冷酒)のひとつもふるまいたくなるはずで、そんな季節感が「青菜」にはあふれている。職人が、自分を大切にしてくれる旦那のふるまい酒にいかにもうまそうに舌鼓を打つところや、その洒落た会話にあこがれる様には、職人というものの好奇心と活気がかいまみえる。

また、江戸時代は清酒が生まれて広まった時代である。多くの人が酒を飲む楽しみを覚え、大量の酒が流通した。江戸時代の酒はまず清酒と濁り酒である。今より濁り酒がよく飲まれた。清酒はとりわけ、杉の樽で運ばれてきてまだ木の香りのする新酒が好まれた。江戸っ子は酒も初物好きで、絞りたてのものを「新走(あらばしり)」と呼んで喜んだのである。様々な銘柄の酒が灘から運び混まれてきたが、黄表紙でよくみかけるのは剣菱である。普通の酒の他にも、泡盛、焼酎、練貫酒(白酒)、干飯や麹を浮かべた霞酒、そしてこの咄に登場する「直し」すなわち「柳蔭(やなぎかげ)」がある。柳蔭はみりんに焼酎を混ぜた甘い酒で、「江戸のカクテル」と言われている。江戸時代の酒は十八度ぐらいだが、柳陰は二十二度ぐらいの酒だったらしい。夏に冷やして飲んだ。元気が出たであろう。

出典:TBS落語研究会

【あらすじ】
初夏のさわやかなある日、隠居が出入りの植木屋と話をしている。植木屋はすっかり仕事を終えて片付けようとしているところ、
「ああ、御苦労さんじゃな。植木屋さん、こっち来て一杯やらんかいな。」「へえ。旦那さん。おおきにありがとさんでございます。」
と、柳蔭(上等の味醂酒)を御馳走になり、すっかりいい気分のところへ「鯉の洗い食べてか。」「へえっ!こらえらいもんを!鯉ちゅうたら、もうし、大名魚言うて、わたいらのようなもん、滅多に食べられまへんで。」とこれまた鯉も御馳走になる。
旨い酒に上等の料理をよばれると今度は「青菜食べてか。」「へえっ!こらまたえらいもんを!青菜ちゅうたら、もうし、大名菜言うて、…」「そんなアホなこといいなや。そんなら待ってや。」と隠居手を叩いて「奥や!奥や!」と声をかける。次の間から来た奥方に青菜を出すように言う。ほどなく出てきた奥方が「鞍馬から牛若丸が出でまして名も九郎判官」「ああ、義経。」
いぶかる植木屋に「これは、もう食べてもて青菜がないのやが、お前はんの前で言うのはみっともないよって、名(菜)も九郎(食ろう)判官としたのや。そこでわしもよしとけ(義経)と、洒落言葉で言うた訳じゃ。」
隠居の粋なやりとりに感心した植木屋は「そんなら、うちのカカにも言わせますわ。」と、飛んで家に帰り、嫁に隠居のいきさつを語って、「お前もこんなことできるか」「何やねん。それくらい屁エで言うたるわ。」「言うたな。もうすぐ大工の竹が来るから。用意しとけ。」と急ぎ酒肴を用意させ、隣の部屋がないので嫁を押し入れに入れてしまう。
おりしもやってきた友人に「ああ。植木屋はん。」「何いうとんねん。植木屋、おまえやないか。俺は大工や。」「あんた、柳蔭飲んでか。」「えっ!お前ええのン飲んでるやないか。ご馳走になるわ。…これ、濁酒やないかい。」と、植木屋、自分がされたとおりにいくが、なかなかうまくいかない。
ようよう、「あんた、青菜食べてか。」にこぎつくが、「わい、青菜嫌いや!」とむべもなく断られる。「おい、そんなこと言うてんと御馳走になるて、言うてな。」と泣きだすので「何や。何かのまじないか。そんならよばれるわ。」「さよか。奥や!奥や!」植木屋うれしそうに手を叩く。
嫁が押し入れから「はい旦那さん。」と飛び出すので「何や!ここの家は!」と友人腰を抜かす。「あれ!?嫁はん又、押入れ入って行きよったで。けったいな家やで。…あっ!また出てきた、うわア、でぼちんに汗かいとるがな。何か言うてるで。聞いたり、聞いたり。」と友人があきれる中、嫁が「鞍馬から牛若丸が出でまして、名も九郎判官義経。」
「ええっ!!…弁慶にしておけ。」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【オチ・サゲ】
間抜落ち(間の抜けたことがオチになるもの )

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『庭に水新し畳伊予簾、数寄屋縮みに色白のたぼ』(涼しい狂歌)
『西日さす九尺(くしゃく)二間にふとっちょう、背中(せな)で子が泣く飯が焦げ付く』(暑い狂歌)

【語句豆辞典】
【たぼ】元来髪の後方へ丸く張り出す部分のことだが、転じて女をこう呼んだ。
【柳影(やなぎかげ)】焼酎をみりんで割った酒。
【鯉のあらい】鯉を刺身にして、氷や冷水で縮ませたもの。

【この噺を得意とした落語家】
・六代目 春風亭柳橋
・五代目 柳家小さん
・四代目 春風亭柳好

【落語豆知識】
【素噺】お囃子や背景の助けを借りずに話術だけで演じる芸。

 
青菜 笑福亭仁鶴





Daily Vocabulary(2008/10/12)

2008年10月12日 | Daily Vocabulary
6446.specifics(詳細、細目)
I am afraid my marketing plan is alittle thin on specifics.
6447.bottoms up(乾杯!/さあグッと飲み干して!)
It is time to go now.Everyone, bottoms up!
6448.from the bottom of one's heart(心の底から、衷心から、心を込めて)
I want to thank you from the bottom of my heart.
6449.from the bottom up(最初から、完全に、徹底的に)
She understands marketing from the bottom up.
6450.concrete(具体的な、明確な、現実の)
I am afraid my presentation is a little thin on concrete example.
今日の英語ニュースを聞こう!NHK WORLD Daily News

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