日本男道記

ある日本男子の生き様

方丈記(十四):たゞわが身一つにとりて

2024年05月28日 | 方丈記を読む


【原文】 
夫、人の友とあるものは、富めるをたふとみ、懇ろなるを先とす。必ずしも情あるとすなほなるとをば不愛。只絲竹、花月を友とせむにはしかじ。人の奴たるものは、賞罰のはなはだしく、恩顧厚きを先とす。更にはぐくみあはれむと、やすくしずかなるをば願はず、只わが身を奴婢とするにはしかず。いかが奴婢とするならば、若しなすべきことあれば、すなはちおのづから身をつかふ。たゆからずしもあらねど、人を従へ、人をかへりみるよりはやすし。若し歩くべき事あれば、みづから歩む。苦しといへども、馬鞍、牛車と心を悩ますにはしかず。
今一身をわかちて。二つの用をなす。手の奴、足の乗物、よくわが心にかなへり。心身のくるしみを知れゝば、苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ。使ふとてもたびたび過ぐさず。物うしとても、心を動かす事なし。いかにいはむや、常に歩き、常に働くは、養生なるべし。なんぞいたづらに休み居らむ。人を惱ます、罪業なり。いかゞ他の力をかるべき。
衣食のたぐひ、又同じ。藤の衣、麻の衾、得るに隨ひて肌を隠し、野邊のおはぎ、嶺の木の實、わづかに命をつぐばかりなり。人にまじらはざれば、姿を耻づる悔もなし。糧乏しければ、おろそかなる報をあまくす。総てかやうの樂しみ、富める人に對していふにはあらず、たゞわが身一つにとりて、昔今とをなぞらふるばかりなり。

【現代語訳
それ、人が友人を選ぶときは、富者を尊重し、身近に行き来している者を大事にする。かならずしも情ある人や率直な人を愛するわけではない。だがそれなら、絲竹や花月を友としたほうがましである。人に召し使われている者は、賞与が多く、物をくれる人を大事にする。可愛がってくれるとか、平穏無事であることを願ったりはしないものだ。だがそれなら、自分自身を自分の召使にしたほうがましである。どのように自分を召し使うかというと、もしなすべきことがあれば自分で自分の身を使う。面倒でないこともないが、人を従え、人を指示するよりは簡単だ。もし歩くべきことがあれば、自分自身で歩く。苦しいといっても、馬鞍や牛車に心を悩ますよりましである。
それ故自分は、一身を分かって、(主人と召使の)二つの用をしている。手を召使とし、足を乗り物とすれば、自分の思いどおりになる。心が身の苦しみを知っていれば、身が苦しむときは休ませ、元気なときには使う。使うといっても、そうたびたびは度を過ごさない。仕事が大儀であっても気にしない。ましてや、常に歩き、常に動くのは、体にとって養生になる。どうしていたずらに怠けようか。人を悩ますのは罪業である。どうして他人の力を借りるべきだろうか。
衣食のたぐいもまた同じである。藤の衣、麻の布団を手に入るにしたがって身にまとい、野辺の嫁菜、峰の木の実をとってわずかに命をつなぐ。人と交わらないので、姿を恥じることもない。食料が乏しいので、粗末なさずかりものもおいしく感じる。そうじてこのような楽しみは、富者に向かって言うのではない、ただ自分自身に関して、昔と今とを比較して言うだけのことである。

◆(現代語表記:ほうじょうき、歴史的仮名遣:はうぢやうき)は、賀茂県主氏出身の鴨長明による鎌倉時代の随筆[1]。日本中世文学の代表的な随筆とされ、『徒然草』兼好法師、『枕草子』清少納言とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられる。

Daily Vocabulary(2024/05/28)

2024年05月28日 | Daily Vocabulary
32361.What's the damage?  (お会計はいくら?  )a measure of how hot or cold a place or thing is 
What's the damage? Let's see...It's not that bad. It's only 50 bucks. 
32362.excuse (言い訳、弁解、免除 )to forgive someone for doing something that is not seriously wrong, such as being rude or careless 
Stop making excuse. Just do your homework on time. 
32363.You might want to (~した方がいいかも )
You might want to dress up. It's a formal event. 
32364.iffy (微妙、怪しい )not very good/  not certain to happen 類義語 doubtful 
 The weather is looking iffy. We might have to cancel the BBQ party.  
32365.roll over (寝返りを打つ  )to turn your body over once so that you are lying in a different position, or to turn someone’s body over 
He rolled over from his belly to back