日本男道記

ある日本男子の生き様

黒崎~箱の浦 3

2025年02月11日 | 土佐日記


【原文】 
聞く人の思へるやう、「なぞ、ただ言なる」と、ひそかにいふべし。
「船君の、からくひねり出だして、よしと思へる言を。怨じもこそし給べ」とて、つつめきてやみぬ。
にはかに、風波高ければ、とどまりぬ。
二日。雨風やまず。
日一日、夜もすがら、神仏を祈る。
三日。海の上、昨日のやうなれば、船出ださず。

【現代語訳】
これを聞いた人が思うには、「なんだ、つまらない歌だこと」とこっそりと言っているようだ。
「船君が懸命にひねり出して、自分でいいと思った歌じゃないか。そんなこと言っては、お恨みになるだろう」ということで、遠慮して何も言わなことにした。
急に風波が強くなってきたのでそのまま留まった。
二月二日。雨風が止まない。
一日中、一晩中、神仏に祈る。
二月三日。海の上がまだ昨日のように荒れているので船を出さない


◆『土佐日記』(とさにっき)は、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ。紀貫之が土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を諧謔を交えて綴った内容を持つ。成立時期は未詳だが、承平5年(934年)後半といわれる。古くは『土左日記』と表記され、「とさの日記」と読んだ。 

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