日本男道記

ある日本男子の生き様

三方一両損

2007年09月20日 | 私の好きな落語
【まくら】
落語には政談と呼ばれる「お裁きもの」が多いが、大岡政談の中でも有名な話の一つ。
この噺は、当時の職人気質や、大屋と店子の関係、ことに民事訴訟の様子を非常によく描写しているので、貴重な文献的落語といえる。

小泉首相が使って記憶に新しい「三方一両損」だが、この話では結局、不要な出費をしたのは大岡越前だけなので、民は得して、お上は一両損したのである。
小泉さん、わかっているのかな?また、ほとんどの大岡政談が作り話であるように、この話も史実ではない。
その上オリジナルの『板倉政要』では、板倉所司代が、落とした金と同額を自分の懐から出して、双方が同額ずつ受け取る話になっている。
小泉さん、じつはそういう話です。
しかも『板倉政要』の次のバリエイションである『本朝桜陰比事』では、この二人がじつは詐欺師であった、ということになって、家老の賢さは完全にバカにされている。
民はしたたかだ。
いずれにしても二つのオリジナルは京都の話で、大岡政談以降、江戸になった。
この江戸っ子の善意と意地は作られたもののようだ。

出典:TBS落語研究会

【あらすじ】
財布を拾うと印形と書き付けと3両が入っていた。
書き付けから神田竪大工町、大工の”吉五郎”と分かり届けてあげると、鰯の塩焼きで一杯呑んでいた。
「勝負!」と言いながら中に入り、白壁町の左官の”金太郎”だと名乗りを上げる。
「落とした財布を届けてやった」と言うと、「書き付けと印形は俺の物だから貰うが、3両はもう俺のものではないので、やるから持って帰ぇれ」と言う。
「金を届けてけんかを売られりゃ~世話がねぇ」
「よけいなことをしやがる」
「なんだと~!」
で、けんかになって大家が仲裁に入る。
吉五郎は受け取るどころか大家にも毒ズキ啖呵を切る。
大家も我慢が出来ず、
「大岡越前守に訴えて、白州の上で謝らせるのでお引き取りください」とのことで、帰ってくる。
こちら、金太郎の大家はその話を聞いて
「おまえの顔は立ったが、俺の顔が立たない。こちらからも訴え出てやる」
双方から訴えが出て、御白州の場へ。
大岡越前が裁いても吉五郎も金太郎も3両はどうしても受け取らないと言う。
「ならば、この3両を越前が預かり、両名に褒美として金2両ずつ下げつかわす」との裁定。
大家が成り代わってお礼を言うと、その訳を「金太郎そのまま拾っておけば3両、吉五郎そのまま受け取れば3両、越前守そのまま預かれば3両有るが、越前が1両を出して双方に2両ずつ渡したから、三方1両損である」
時間を取らし空腹であろうからと双方に膳部(料理)が出る。
「鰯と違って、鯛の塩焼きは旨いな」と言いながらほおばると、越前守が
「両人、あまり空腹だからといえ、たんと食すなよ」
「お~かぁ~(大岡)食わねぇ、たった一膳(越前)」

出典: 落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
地口落ち(いわゆる駄洒落が落ちになっているもの)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『江戸っ子の生まれぞこない金を貯め』

【語句豆辞典】
【朱房の十手】
町奉行所・加役(火付強盗改め役)の与力・同心と岡っ引きが、犯人の切込みを防ぎ、捕らえるのに使う40センチ前後の鉄棒。階級によって形と房に違いがある。

【この噺を得意とした落語家】
・八代目 三遊亭可楽
・四代目 春風亭柳朝

【落語豆知識】
【楽屋すずめ】芸人・関係者でもないのに楽屋に浸っている人。
 




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白い話を楽しんで.. (地理佐渡..)
2007-09-21 06:19:03
おはようございます。

楽しめましたぁ..(笑)。「三方一両損」
小泉さんはずいぶん身勝手な引用をされていたようで.。
でもツケは国民と後任の安倍さんへと。でしょうかねぇ。
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Re:面白い話を楽しんで.. (日本男道記  )
2007-09-22 11:26:58
こんにちは!

有名な落語ですが、とり方は色々あるようですね。

今日から三連休ですが、奥様が東京の次男宅へお出かけで留守番です。

ゆっくり出来るような、落ち着かないような?
食事の心配もありますし・・・。
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